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ヒーラーのお仕事

「珍しいですね。ルーミアさんが進んでこの依頼を受けるなんて……!」


「そうですか? まあ、たまにはそういう日もありますよ」


「まあ、治療ができる人はどこでも重宝されますからね。正直人手が足りていないのでかなり助かります」


 ルーミアが手に取った依頼はギルドにて負傷者の治療を行うというものだった。

 もちろんギルドには治療を行える者がいる。だが、それ以上に冒険者の数は多く、負傷者も日によっては対応できないほどに多い時もある。回復が行えるだけで重宝されるのはユーティリスに白魔導師含め回復魔法を扱える人材が足りていないことを意味する。


「最近の負傷者はどうなんですか? やっぱり増えてます?」


「そんなことはないですがやはりギルドの人手が足りてないですね。なるべくないようにしたいのですが、ギルドで回復魔法など治療関連の魔法を使える人材は限られているので、どうしても手が回らない時もあるにはあります……」


「……そうですか。困ったときはいつでも私を呼んでくださいね!」


「ありがとうございます。本当に助かります……!」


 ただでさえ回復魔法の使い手は少ない今、優秀な使い手程あちこち引っ張りだこで忙しく活動することになる。特にこういった依頼はいつやってくるか分からない負傷者に備えてギルドで待機する必要があるため、よほど手の空いている冒険者しか受けてくれない。そんな中珍しくもフリーで活動している白魔導師のルーミア。彼女の存在はギルドとしても無視できないもので、ルーミアの協力が得られるのは大助かりだった。


「ちなみにルーミアさんの回復の腕はどれほどなんですか?」


「何ですか? 疑っているんですか?」


「この前治療してもらったので実力は疑っていませんよ。ですが、人によって治り方に差があったりするじゃないですか? ルーミアさんは他の白魔法も一級品と聞くので回復魔法もすごい効果なのではないかと……」


「そうですね……そう言われてみると、最後に本気で回復ヒールを使ったのはかなり前になりますね……。その時は白魔導師の力を高める装備をしていたので今と比べると分かりませんが……それなりの怪我だったら治せると思いますよ?」


「それなりというと?」


「うーん、ちぎれかけの腕を繋げる……とかなら多分……」


 ルーミアの治療の腕について気になったリリス。以前に治療を受けたこともありルーミアの回復魔法の実力については疑っていないが、それが本気で行使された時どれほどの効力を発揮するのか。それについて尋ねるとルーミアは少し考えて困ったように笑った。


 実のところルーミアがソロで活動し出してから、全力で回復魔法を使用した試しがない。これもルーミア自身のヒットアンドアウェイの戦闘スタイルと一撃必殺で相手を仕留めるスタイル、すべてを躱すスピード特化スタイルなど攻撃を受けないようなスタイルなため、自身に回復魔法を使うという事がそもそも少ないのだ。


 軽い切り傷や少し肉が抉られたくらいの損傷ならば問題なく治せているが、それ以上となると試したことがないため未知の領域。とはいえ、回復魔法は白魔導師の本領。それなりの負傷ならば治せる自信があるルーミアだが、彼女のそれなりはやや常識を超える。


「そんなに酷い状態でも治せるんですか……! すごいです!」


「多分ですよ! 断言はしてないですからね」


「ふふ、分かってますよ。そういう奇跡的な場面に立ち会いたい気持ちもありますが、そういう重傷の方が来ない方が望ましいですからね」


「そうですね……。回復魔法は出番がない方がいいです」


「そうですけど……暇ですね」


「はい、暇なのはいいことです」


 ルーミアの出番がない事は怪我人がやってきていないということ。ギルドから見れば一番ありがたい状況。こうしてリリスとのんびりして時間だけが過ぎていく。


「ちなみにルーミアさんは依頼書をよく読まれてないと思うので一応説明しておきますが、常駐してもらうため基本報酬は出ますが、あとは出来高制なので……このまま平和に一日を終えると基本報酬だけになりますね」


「失礼な。ちゃんと読んだので分かってますよ。お金が欲しいからって怪我人を望んだりしないので安心してください。暇なのはいいことですから……!」


「それは失礼しました。そうですね、このまま平和が一番です」


 冒険者ギルドユーティリス支部。

 その日は珍しく、ギルドにて回復魔法が発揮されることはなかった。

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