再会
ルーミアは今日も今日とて冒険者ギルドに入り浸る。
リリスと何気ないおしゃべりに勤しむことも楽しみだが、Bランクに上がったことで一つ上の依頼や今まで人数制限などの関係で受けられなかった依頼が解禁されたことで、依頼を選ぶことも一つの楽しみとなっている。
「これなんかどうですか?」
「そうですね。一応ランク上は受けられますが……わざわざ群れで行動する魔物の討伐を受けようだなんて物好きですね……」
「今までこういうのって受けられなかったので……」
「ルーミアさん、一応ソロなんですよ? あんまり無茶はしない方がいいんじゃないんですか?」
「一応って何ですか? 私はいつでもソロですよ」
ルーミアが指さした依頼書にリリスはやや難色を示す。
以前は一人という理由で受けられない依頼でも今のルーミアは受けられる。
しかし、嬉々として難しい依頼を選び取ろうとするルーミアにリリスは呆れたようにため息を吐いた。
高ランク冒険者の仲間入りを果たしたのは確かだが、それでもソロであることに変わりはない。
それを分かっているのか窘めるも、能天気そうに笑うルーミアが本当に分かっているかは定かではない。
「では、こっちのはどうですか?」
「そうですね……。いいかげん群れから離れません? あなた遠距離から攻撃する魔法とか広範囲攻撃の魔法とか使えないんですから」
「弱・風神モードで何とかなります!」
「……もう好きにすればいいんじゃないですか……? そういえばそちらの方々はお知り合いですか? 先程からルーミアさんの方をチラチラ見ているみたいですが」
リリスはルーミアの奥でこちらを見ている数人の視線に気付いていた。
これが混雑時であるならルーミアの対応をサクッと切り上げて次の冒険者の対応に回らなければならないが、今は比較的空いている時間帯で他にも空いているカウンターはある。
それなのにその冒険者パーティと思わしき男女はルーミアとリリスを見ている。
ルーミアに用があるのか、それともリリスに用があるのか。
見慣れない顔に自分の知り合いではないと思ったリリスは目の前ではしゃぐルーミアに尋ねる。
不思議そうに顔を上げて振り返ったルーミアはあっと声を上げた。
「あー! お久しぶりです!」
「やっぱりルーミアさんの知り合いですか。どういった関係で?」
「はい! この前盗賊団に襲われたところを助けました。名前はまだ知りません!」
それはルーミアが特別昇格試験に臨んでいた際に助けることになった、商人の女性を護衛していた冒険者だった。
彼らに向けて嬉しそうに手を振るルーミア。
やはり彼らはルーミアに用のある客なのだとリリスは関係性を尋ねるも、知り合いだけど名前は知らないというよく分からない返答を受け数秒黙り込んだ。
「……よく分かりませんが、彼らはルーミアさんを待っているみたいなので行ってあげたらどうですか? 依頼はこちらの方でいつも通り適当に選んでおきますよ」
「ありがとうございます。楽しそうなのでお願いしますね!」
「……また無理難題を。ふふ、でもルーミアさんらしいです」
リリスがそう言うとルーミアはその冒険者たちへ駆け寄った。
いつも通り無難な依頼を選んでおこうと提案したリリスだったが、ルーミアの言い残した要望に困ったように笑った。