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喧嘩の顛末

「……戻りましたー」


 ルーミアが冒険者ギルドへと戻ってきた。

 普段なら討伐依頼の後はウキウキのテンション高めで帰ってくるのだが、ややバツの悪そうな表情をしているのは、討伐依頼に出かける前の出来事を気にしているのだろう。


「おかえりなさい。依頼はどうでしたか?」


「あ……それはちゃんと倒してきましたけど、そのー、あの後ってどうなりました?」


 レオンに売られた喧嘩をついカッとなって即購入してしまったルーミア。先に手を上げたのはレオンとはいえ、それ以上の暴力で容赦なく叩きのめした。その後治療を施しはしたが逃げるようにギルドを後にしてしまったルーミアは事の顛末を知らない。


「レオンさんは気絶したまま放置されてましたね。寝てる間にルーミアさんに喧嘩を売って返り討ちにされたことがあっという間に広まってしまって、目覚めてそれを知った時は顔を真っ赤にしてギルドから逃げていきました。ざまあみろです」


「あー、そうなんですね……」


「それと、ルーミアさんのことも噂されてますよ。ルーミアさんの実力は本物、喧嘩を売ったらやばいことになるって。これでしつこく絡んできてた連中もおとなしくなりそうですね」


 ルーミアの不正疑惑は、その実力が疑わしいからかけられたものだ。しかし、ルーミアは売られた喧嘩を買って、レオンを叩きのめすことで力を示した。ソロの白魔導師の少女が体格も違う屈強な男を蹴り一つで吹き飛ばしたのだ。見せしめのような意図はなかったがそれは多くの冒険者の目に焼き付けられた。それがまぐれなどと思われるはずもなく、ルーミアの実力が認められることとなった。


「あの、それはいいんですけど……レオンさんに危害を加えたことについてギルドから何かお咎めとかないんですか?」


「正当防衛……というにはやりすぎな気もしますが、ルーミアさんが治してしまってレオンさんは傷一つないみたいですし、気にすることないと思いますよ。そもそも先に手を出したのはあっちですし、喧嘩を売る相手を間違えて手痛いしっぺ返しを食らっただけですもんね」


「そうですか……よかったぁ」


 これが大きな問題となって、最悪の場合は冒険者ランクの降格や、冒険者証の没収などの罰が与えられることまで想定していて気が気でなかったルーミアはほっとしたように安堵の表情を浮かべた。


「でも、一時はどうなるかと思いましたが、ルーミアさんが怒った時の顔……すごくかっこよかったです。ルーミアさんが男性だったら惚れていたかもしれません。あと、言うのが遅くなってしまいましたが、私のために怒ってくれてありがとうございました」


「あー、あはは。なんか恥ずかしいですね」


「本当に嬉しかったですよ。レオンさんを蹴っ飛ばして壁に叩き付けたときは本当にスカッとしました。ぜひまたよろしくお願いします」


「ああ、もう! 恥ずかしいので忘れてくださいっ! あと、またって何ですか!?」


 元はと言えば、ルーミアの堪忍袋が切れたのは、リリスに矛先が向いたからだ。

 自分の事ならばいくら言われてもよかったが、リリスという友人が巻き込まれて謂れのない中傷を受けるのは我慢ならなかった。

 そう言った意味ではわざわざルーミアの地雷を力いっぱい踏み込みにきたレオンは運の尽きだったのかもしれない。


「照れてるルーミアさんかわいいです」


「……殴れば記憶って飛ばせるのかな……?」


「あっ、やばっ。ごめんなさいー」


「ふふ、冗談ですよ………………半分くらい」


「もう半分は本気じゃないですかっ!? ちょ、骨ボキボキ鳴らすのやめてっ」


 恥ずかしがって顔を赤くするルーミアをからかうリリス。

 そんなリリスの記憶を抹消できないかと思案しながら、指の関節を鳴らして威嚇するルーミアだった。

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