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ルーミア専属?

「ああ……まじで倒してきたんですね」


「何ですか? 私がトレント一匹倒せないような冒険者に見えるんですか?」


「白魔導師だったら本来そうなんですけどね……」


 ルーミアの割と早い帰還に驚いたリリス。

 白魔導師というのは本来後衛支援職。間違ってもソロでやれるような職業ではないはずなのだが、当たり前のようにソロで動き成果を叩きだしてくるルーミアには驚かされてばかりだ。


「しかも、何ですかこのトレントの残骸……。ガチで物理で壊してきたみたいな跡じゃないですか」


 ルーミアがトレント討伐証明のために持ってきた、今はただの木材と成り果ててしまったその亡骸。それは大きな樹木がまるで斬撃か何かで切り倒されたかのような状態で運び込まれていた。


「これ、持ってくるの結構大変だったんですよ! いや、力的に問題はないんですけど、大きくて太いの二本同時は中々……」


「上下セットで持ってきたのはマジで意味わかりません。力的に問題ないって……あんたバケモンか」


「あ、か弱い女の子にそれは酷くないですか?」


「か弱い女の子の定義知ってます? こんなん両手で引きずり回しながら普通に移動できるルーミアさんが軽々しく使っていい言葉ではないので全国の本当にか弱い女の子に謝ってください」


「リリスさん、何だか私への当たり強くないですか?」


「…………気のせいです。多分」


 初めは丁寧な対応を心がけてきたリリスだったが、あまりにも常識はずれな行動や結果を叩きだすルーミアへの対応はかなり雑なものになっている。といっても堅苦しさが取れて距離が縮まったようなものなのでルーミアは特に気にしていない。


「ルーミアさん。とりあえず次からギルドで何か依頼を受ける時は私のところに来てくださいね」


「どうしてですか?」


「他の人はあなたがバリバリ前線で戦える白魔導師ってことを理解していないでしょう。人によってはソロで動く白魔導師に討伐依頼は出せないなんて判断をする人もいるかもしれません。現に私もルーミアさんのことを知らなかったら今日の意味わからない要求は突っぱねていたと思います」


 ギルド職員は冒険者に合った依頼を出さなければいけない。リリスはルーミアがどういう白魔導師なのか知っているため、本日のトレント討伐の依頼もすんなり通したが、もし対応したのが別の職員だったのならそうはいかないかったかもしれない。


 本来一人で戦うことができないはずの白魔導師が。

 一人で。

 討伐依頼を受けたい。


 これだけ聞けば自殺願望でもあるのかなと考えてしまうのが普通だ。


「それって専属ってことですか?」


「まあ、そういうシステムはないですけど、そう捉えてもらって結構です」


「分かりました。これからはリリスさんにお世話になります。よろしくお願いしますね」


「…………大丈夫。私はこいつがどれだけ非常識でもちゃんと相手してあげられる」


「……そういうのは本人に聞こえないように言った方がいいと思いますよ?」


 リリスが申し出たのは単純。

 ルーミアの冒険者としての在り方に理解がある自分が対応する。いわゆる専属契約のようなものだ。


 もちろん、ギルド職員と冒険者の間にそういったシステムはないのだが、スムーズな対応ができ不要な混乱を未然に防ぐという意味では大きな意味があるだろう。


「こほん。じゃあ、こちらが今回の依頼達成の報酬になります。また、次回のお越しをお待ちしております、ルーミアさん」


「ありがとうございます。はい、ではまた」


「次くるときは常識を欠片でもいいので身に付けてきてくれると嬉しいです」


「うーん。その相談は難しいですが……善処はしますよ」


 この時リリスは思った。

「あ、これ絶対しないやつだ」と。


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