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第一章 誕生編 第8話 【鑑定の儀】 ①

長くなりそうなので分けます

僕が父さんに一太刀浴びせることができたことをきっかけに、全体的に訓練の密度が上がったように感じる


父さんも手加減なしに剣を振るようになった

もちろん寸止めにはしてくれるが、前のようにただ打ち込ませるのではなく、自分の描いた円から出ないというルールを無くしてこっちに斬り込んでくるようになったのだ 


自分より遥かに格上の相手との模擬戦は多くの経験値が入るらしく自分のステータスは見れないが、レベルが上がるごとに機械音が教えてくれるので成長しているのが実感できる


…しかし何故父さんが自分のステータスを鑑定するのを禁止したのかはまだ聞けていない


いつになったら禁止が解かれて、理由を説明してもらえるのだろう


魔法の授業も魔力操作の訓練の練度が上がった


魔力操作は細かい操作をすることで上がりやすくなるが、当然その分だけ精神的な疲労が大きい


水魔法を糸状にして針の穴に通す修行なんか脳の回路が焼き切れるかと思うくらいにきつかった


だか、隣のリリは涼しい顔でやってのけてしまうのでこっちも負けてられない


…………


そんな訓練を何日も何日も続けて僕とリリは5歳になっていた

つまり今年に【鑑定の儀】を受けることになる


どうやら【鑑定の儀】はこの辺では近くの街の、『ゴアの街』の教会で行うことになっているらしい


「そろそろ 鑑定の儀だな」


「あの〜父さん 僕って鑑定持ってるよ 受ける意味あるの?」


「そうだけど決まりみたいなもんだしな あと固有スキルを国に登録する目的もあるしな」


「え?そうなの?初めて聞いたけど…」


「あぁ 国の人材確保のためだろう 固有スキルは人生設計に直結するからな 優秀なスキル持ちな子供は国が教育なんかを保障してくれるんだ」


(これはまずいんじゃないか?)


リリの【魔導王】が鑑定の儀で明るみに出ることは予想されたけど、国の人材確保ってなるともしかしたら強制的に国のために働かせられる可能性が高くなるのかもしれない


「ね、ねぇ父さん それって国に強制的に連れてかれて働かせられるなんてことはないよね?」


「おいおいバカ言うなって 国は教育の保障はするけど、そんな奴隷みたいなことさせないぞ そんなこと魔族との戦争でも起きない限り起こらないって」


「そっか 安心したよ…」



よかった〜 どうやら杞憂で終わりそうだ

魔族とはここ何十年も休戦中で不可侵状態だ

万に一つもリリが責務を負うなんてことはないだろう


「それでいつごろに鑑定の儀があるの?」


「4日後だ」


「え?聞いてないよ?」


「言ってなかったからな ここからゴアの街までは馬車で半日ってとこだ その日は村で待ってる馬車を貸してもらって隣のシルヴァードのうちと一緒に出かけるぞ」


「うふふっ おめかししなくっちゃね! 何せちゃんとした儀式ですもの!」


急すぎるよ〜! でもリリがもしかしたら面倒ごとに巻き込まれることもなく、その上学費免除のおまけ付きだ そんなに気を張らなくてもいいだろう


安心してほっと息を吐くと突然扉がどんどんと叩かれた この荒っぽい感じは……


「おう!グラン! お邪魔するぜ ちょっと話があってな」


やっぱり来たのはシルヴァードだった


「おう!シルヴァード んで、話ってなんだ?」


「それがよ、村の近くで魔物が出たって言うんだがよ」


「何が出たんだ」


「コボルトだ」


コボルトか 確か犬の魔物だっけ二足歩行だけど


「なんだよ コボルトか そんなもん村の男達だけでも対処できんだろ?」


「それがよ いつもとは様子が違うらしいぜ なんでも、いつもよりも大きくて、素早いしで村の男衆も何人か怪我をしてやっと1匹追い払えたらしんだ」


「何?どういうことだ? コボルトなんて男3人でかかれば楽勝じゃないか! それが全員でやって怪我人まで出ただと?」


「そうなんだ だから村長が鑑定の儀に行くのは子供と母親だけにして俺らは村の守護をやれってさ」


「はぁ? 何言ってんだ! 子供の晴れ舞台を見れない親がどこにいる!!」


思わず父さんがシルヴァードの胸ぐらを掴んでしまう


「あなた!シルヴァードに怒っても仕方ないでしょ」


「あぁ…そうだな すまないシルヴァード」


そう言って力なく手を離した


「いいってことよ 俺も同じ気持ちだしな」


「恩にきる なんとも受け入れ難い話だが俺たちの仕事はこの村の護衛だ 魔物が謎の活発をしている中 村を開けることはできん」


魔物の活性化か 何処かで似たような話を…

はっ!そうだあのバカ神が言ってた、僕がこの世界に持ってきてしまったエネルギーによる影響だ!

確か魔物が活発化するかもしれないって言ってたな

俺のせいじゃん…


「あなた 私は大丈夫よ! ミネルバさんも一緒だし ちゃんとゴアの街まで行けるわ! 馬車だって冒険者だった時に乗ったことあるもん!」


母さんが自分の胸をドンと叩いて言う


「そうか…わかった! 俺は村に残るよ 街での土産話楽しみにしてるよ」


「えぇ! アレンもそれでいい?」


「うん 父さんにたくさんお話ししてあげるからね!」


父さんが行けないのは間接的に俺のせいだしな〜


街に行くのは僕と母さんとリリとミネルバさん、村にはシルヴァードと父さんが残ることになった


…………



村から街に行く日になった


「うん!アレン とってもかっこいいわよ!」


今日の僕はいつもの村人Bみたいな格好じゃないシャツとズボンに皮の靴のよそ行き仕様だ


母さんはまだ村娘Cの格好だ どうやら馬車は母さんが運転するようなので街に着いてから着替えるようだ


どうやら儀式が行われるのは夜らしく早朝に村から出たら余裕で間に合うということだ


「行ってくるね父さん 父さんも村での仕事頑張ってね」


「おう! アレンもお利口にするんだぞ!」


精神年齢アラサーの僕にとってお利口など朝飯前さ


「うん!じゃあ行ってくるね〜」


玄関を出ると隣の家からリリとミネルバさんが出てくる


「あ!アレ〜ン!」


こちらに気づいたリリがぶんぶんと手を振ってくる 


今日のリリは髪の色とよく似合う水色のドレスを着ている 普段の格好とは違い貴族の令嬢のような感じがする


ミネルバさんは娘が主役なため地味目な灰色のシックなドレスを着ている 目立たないように化粧も薄めなようだが、元々の顔がいいのでそれでも十分の大人の色気を振りまいている


僕半日間個室でこの二人と過ごすのか…と中々気持ち悪いことを考えながら一緒に馬車まで向かう


馬車は前で二頭の馬が引いてくれるらしく、3人が乗るには十分広いほどの大きさだった


母さんが御者席にヒラリと乗り込むと、


「さあもう乗っちゃっていいわよ〜」


と言いながら手綱を握った 冒険者時代に乗ったことがあると言っていたが本当のようだ 貫禄すら感じられる


僕は馬車の扉を開けて二人を促す こういうのはレディーファーストだからね


「あら? うふふっアレン君はもう紳士なのね」


「ん! アレン紳士だ! かっこいい」


そう言って二人が乗り込んだのを確認して僕も乗り込む


ミネルバさんが何か香水をつけているのだろうか?

中が甘い香りに包まれていてドキドキしてしまう


「じゃあそろそろ出るわよ 出発進行〜!」


ギシッと音がして馬車が動き出した


それから道中では何のトラブルもなく快適に進んでいった


最初は僕と話していたリリも途中で寝てしまった


必然的にミネルバさんと二人きりになってしまう


「ねぇアレンくん」


「はい! なんですか?」


「ふふっそんなに畏まらなくて大丈夫よ アレンくんにありがとうって伝えたくって」


「ん?ありがとうですか? 僕は何もしてませんよ?」


「うちのリリといつも仲良くしてくれてありがとうってことよ この子あんまり女の子らしくないし 

ちょっとアレンくんを振り回しちゃうこともあるでしょう? でもアレンくんはいつもリリに、付き合ってくれて遊んでくれてるじゃない だからありがとうってこと」


なんだそんなことか


「僕はただリリといるのが楽しいから遊んでるんですよ 一度もリリに付き合ってあげてるなんて思ったことはありません 確かにリリは我が強い節がありますけど、それもリリの魅力ですよ」


僕は本心に思っていることを伝える 最初は僕の負うはずの責務を負ってしまった罪悪感もあったが、今では純粋にリリといるのが楽しいから一緒に遊んでいるんだ


僕がそう言うとミネルバさんは満足そうに笑って


「あらそうなの? ふふっリリはこんな素敵な殿方が身近にいて幸せ者ね」


と言った


「素敵な殿方なんてそんな…」


「うふふっ謙遜しなくてもいいのよ  (リリを貰ってもらえるのはアレン君だけね……)ボソッ 」


「ん?何か言いました?」


「ん〜ん、こっちの話〜!」


そう言ってニヤリと笑うとミネルバさんは外の景色を眺めだした


一体なんだったんだろう


「みんな〜 そろそろ着くわよ〜」


御者台から母さんの声が聞こえる どうやらもう近くまで着いたらしい


「んむぅ〜… まち?」


リリもようやくお目覚めだ


「そうよ〜 そろそろ着くからリリも起きてなさい」


まだ寝起きでボーッとしている目をくしくしと擦り、顔をペチペチと叩いて起きようとする


(小動物みたいで可愛いなぁ…)


そう思いながらリリを見ているとミネルバさんが何か微笑ましいものを見る目をしている

一体なんなんだろう?


窓から身を乗り出して進行方向の方を見ると大きな門があり その横に門番が立っている


馬車が並ぶ列に並び僕らも順番を待つことにする


段々と列が消化されていき僕らの番が来た


「この街の滞在目的は?」


なんか空港の搭乗手続きみたいだな


「鑑定の儀のためよ」


「身分証は?」


「はいこれ」


そう言って母さんが金色のプレートを門番に渡す


「む、Aランク冒険者か」


「元よ、元 今は引退してるわ」


どうやらあれは冒険者ギルドのギルドカードらしい、やっぱりAランクは珍しいのだろうか


「それでは荷台を調べさせてもらう」


そう言って門番が荷台の窓を覗き込んでくる

リリが笑いながら門番に手を振ると、門番はニヘッと笑って手を振り返した なんだこいつ…ロリコンか?


「よし、異常はないようだ では銅貨3枚 通行料としていただく」


「はいどうぞ」


母さんが銅貨を取り出して門番に渡した 村では基本物々交換だったから貨幣を実際に見るのは初めてだ 知識としてはもう本で知っていたがな


確か豆銅貨→銅貨→銀貨→金貨→白金貨→王金貨

の順に価値が上がって、同じ貨幣10枚が次の貨幣の1枚分の価値だっけ


銅貨3枚って高いのか安いのかわからんな 物価を見て調べるしかない


「よし、たしかに3枚いただいた 通行を許可する 鑑定の儀の者は入ったら右手にまわったとこに馬車を預けることになっているからな」


「わかったわ」


無事街に入ることができたようだ 先程門番に言われたように右手に回るとそこに金髪の修道女さんが『鑑定の儀の馬車こちら!』という看板を持って立っていた 


その人は女性にしては背が高く ゆったりとした修道着でもわかるほどプロポーション抜群なようだ


「はいはーい 鑑定の儀の方々ですか〜?」


「そうよ 馬車はどこに?」


「こっちになりまーす ついてきてください〜」


少しその修道女さんについて行くと馬車置き場に着いた もうすでに多くの馬車が止まっている


「ん〜と じゃあここに止めてください〜」


馬車を誘導に従って停車させて、馬車から降りる


「え〜っと 貴方達二人が本日鑑定の儀を受ける子たちってことで大丈夫?」


「はい そうです」


「お!君礼儀正しいんだね!じゃあお姉さんについて来て〜」


といってズンズンと進んで行く


「あれ?親は一緒ではないんですか?」


「親御さんと子供の控室は分かれてるの〜! 儀式が始まったら会えるから心配しないでね〜」


そう言って修道女のお姉さんは僕にバチッとウインクしてくる

この人ほんとに修道女か? 淑女感をまるで感じないぞ


どうやら馬車置き場は協会の裏手だったらしく、表の方にぐるっと回ると大きな教会が出てきた


「おっきいね!アレン!」


リリが目をキラキラと輝かせている

リリは多分合体ロボとか好きなタイプだろう、なんかそんな感じがする


教会に入ると奥におそらくこの教会の崇める神の像があった なんかあのバカ神に似ている気がするな

ってか、あいつじゃねぇか 崇めるのやめたほうがいいですよ? ズボラの駄女神ですよアイツ


「じゃあ二人はこっちの部屋で待っててね〜」


そう言って倒されたのは100人弱の子供がいる大部屋だった ここにいる子たちが今日一緒に鑑定の儀をする五歳児たちだろう


中には大きなテーブルがあり その中央には食べ物や食器が置いてある  食べて待ってろってことなんだろうか

他の子達はその料理を食べたり、他の子と話したり 一人でボーッとしたりと思い思いに過ごしている


五歳児だし無法地帯かなと思っていたが、意外にそんなに騒がしくもない


「ねぇ アレン!ご飯あるよ!」


うちの姫様はご飯をご所望らしい


「うん 昼に何も食べてないし 何か食べよっか」


テーブルにある料理は肉や様々な野菜が豊富に使われていてなんとも美味しそうだ 少なくとも村じゃこんなの出ない


「美味しそうだね!! 」


そう言ってリリはお皿にどんどん料理を乗せていく

最終的に山のように積み上がっている すごい量だ…

僕もお皿に食べられる量の料理をとってリリの方に振り返る


「大丈夫リリ? そんなに食べれるの?」


「え?」


そこにはもうすでに全てを喰らい尽くし、もうおかわりに向かおうとするリリがいた


(嘘だろ… 今の一瞬で全部平らげている! 一体どこに入っているんだ?)


結局リリはそれから3回もおかわりしてようやくお腹いっぱいになったようだ


リリの新たな一面にびっくりすると共に、もしかして大食いとしても神童なのかなとアホなことを考えた


食べ終わった僕たちは二人でおしゃべりしながら過ごしていた


すると


「おい」

 

と後ろから声がかかった


振り向くとそこには五歳児の割にでっぷりと太っている豪華な衣装を着た男の子とそれに付き従うようにいるガリガリでノッポな男がいた


「どうかされました?」


「俺は男に話しかけたわけじゃないぞ! おいそこの女」


どうやらリリに用があるようだ


「ん?誰?」


「俺の名を知らないとは世間知らずな奴だな!

俺はこの街を収める子爵家の次男 キュエル・F・アシュワンだ! 」


つまりは貴族の子供か めんどくさそうだ


「そーなんだ で?何か用なの?」


なんかリリ塩対応だな 失礼な話のかけ方だし しょうがないとも思うが


「へへっ 気が強いようだな ますます気に入った おいお前、喜べ俺の第一夫人にしてやるぞ 」


何言ってんだこいつ!? 頭沸いてんのか?


すると隣のガリガリが


「キュエル様から求婚されるなんて幸運でやんすねぇ ささっこっちに来るでやんす!」


と揉み手をしながら言ってくる


こいつ逆にすごいな!語尾がやんすってザ・腰巾着じゃねぇか 何が幸運でやんすねだよ!舐めてんのか


するとリリは


「何言ってるの?リリはあなたのおよめさんに何かにならないよ?」


と、何当たり前なこと聞いてんだみたいな顔で言ってのける


「くっこの女!言わしておけば!!」


とキュエルがリリに向かって拳を振り上げる


(こいつリリに手を挙げようとするなんて! 流石に我慢の限界だ!)


僕はその手をぐいっと掴み上げる


「ぎっ! 貴様何をする!」


「おいお前今何しようとしやがった!? 女の子に手をあげようとするなんてクズのやることだぞ!」


「お、俺の父は貴族だぞ、、 貴様!タダで済むと思うなよ!」


「親が貴族だろうが関係ねぇよ! ちったぁ反省しろや!」


そう言ってキュエルを解放して少しドンッと押してリリから離れさせる


「お、お前!キュエル様になんてことを!!」


と、隣のガリが殴りかかってくるが日々訓練を積む僕にとってあくびがでるようなパンチだ


当然対処しようと体を向けるが……


「はいはーい そこまでそこまで」


その手を掴んだのは僕ではなくさっきの修道女だった 嘘だろ?全然見えなかった…


「まったく〜大切な儀式の日に喧嘩しちゃダメだよ〜 めっだよめっ!」


と言って腰に手を当てて頬を膨らまし、私怒ってますよアピールをする


いつも父さんの剣を受けている僕でもいつ来たかわからなかった… 一体この人は何者なんだ?


「どうして喧嘩したの?お姉さんに話してみて」


「こ、この女が貴族である俺に無礼な態度を取ったのだ! 俺は悪くない!」


「そ、そうでやんすよ〜! 全部この女と男が悪いでやんす!」


こいつら…抜けしゃあしゃあと…


「アレンくんは?」


「あいつらがリリを嫁にするとか言い出したんです それをリリが断ったら逆上して殴ろうとしたのでそれを止めただけです」


「なるほどなるほど〜 喧嘩両成敗!っと言いたいところだけど どうやらアレンくんが真実を言っているようだね〜」


ん?どういうことだ?


「おい!貴様!修道女の分際で俺が嘘をついていると言っておるのか!? 不敬だぞ!」


「そーでやんす!なんの証拠もないでやんす」


「ふっふーん 私の固有スキル【真理眼】の前ではどんな真理もお見通しだよ〜」


「なんですか?そのスキルは?」


「私の能力は相手が嘘をついているか本当のことを言っているのがわかるってやつなのよ! 今の聞き取りでアレンくんが真実を言ってるってわかったの」


「で、出鱈目だ! 嘘をついてるんだ!」


「嘘じゃないわ 神の名の下に誓えるわ」


「ぐぬっ!」


修道女にとって最もたしかな宣誓だろう 何せ神に仕えているのだから


さっきの速度といい、真理眼のスキルといい、謎が多い人だ


「じゃあ二人は個室にごあんな〜い!」


そう言って二人をヒョイと小脇に抱えるとそそくさと居なくなってしまった 


ふぅっと息を吐いて後ろを見るとリリが僕の裾をちょんとつまんでいた


「大丈夫リリ? 怖かった?」


すると


「ううん! アレンのおかげで全然怖くなかったよ! ありがとアレン!かっこよかった!」


と花が咲いたように笑った


その顔があまりにも可愛らしく数秒ほど見惚れてしまう


(何がなんでも守り抜こう)


僕は再度誓ったのだ



…………



しばらくするとさっきの修道女のお姉さんが扉を開けて入ってきた


「さぁみんな! 鑑定の儀の時間よ! 着いてきて〜」


どうやらようやく始まるようだ 僕らはぞろぞろとついていくと奥の方の部屋に入っていった


中には椅子が何個も置いてあった その前に小高いステージがありその上には多分鑑定を行う人なのだろう おじいさんが白い布衣を着て立っている その横にはテーブルがありスキルの記録をする係の人が座っている その後ろにはやはりあのバカ神の像がある 地味に神々しく見えて少しムカつく


そしてその部屋の上の方にテラスのように出っ張ったところがありそこに大人の姿が見える


どうやら親はあそこから見学するようだ


僕らは続々と部屋の椅子へと座っていく 自由席のようだ


「じゃあ今から儀式の手順について説明するよ〜

まず名前を呼ばれたら立ち上がってあのステージのおじいさんのとこまで行ってね そこで膝をついて神にお祈りしたら おじいさんが手を出すからそこに頭をつけるの そうすると鑑定が始まって固有スキルを告げられるから それが終わったら元の席に戻ってね! みんなわかった?」


みんながは〜いと元気に返事をする ここら辺は五歳児っぽいな 儀式ってより遠足みたいな感じがしてきたぞ


「アレン! なんのスキルか楽しみだね!」


「う、うん、そうだね〜…」



「じゃあ早速始めていくわね 最初は……」


そうして儀式が始まった

どうやらあのおじいさんは固有スキルしか見ることはできないようだ 他の項目はバレないようなので安心だ


おじいさんが固有スキルを告げると隣の記録係がサラサラと羽ペンで記録していく


子供たちはその結果に一喜一憂している


「では次の子は……キュエル・F・アシュワンくん」


お、どうやらあの貴族のようだ、はてさてどんなスキルかな?


お祈りを済ませたキュエルの頭におじいさんが手を添える


「ほ〜 お主のスキルは【魔法士】じゃ 精進するのじゃぞ」


どうやらレアなやつらしい


「いよっしゃ!! 俺様に相応しいスキルだぜ」


とガッツポーズをして喜んでいた 会場が少しざわついている


先に戻るキュエルと目があった 勝ち誇るような目線を向けてくる


それから何人かが呼ばれやっと


「次の子は… アレンくん」


僕の名前が呼ばれる、まぁ僕は自分のスキル知ってんだけどね


僕は前の方に歩いて行き癪だがバカ神の像に向かって祈る すると急に周りの光景が変わった


え?っと思っていると


「おい、こっちじゃこっち」


と聞き覚えのある声が聞こえる


後ろを見るとやはりあのロリっこ女神が玉座に座っている


「おぬし わしのことを散々馬鹿だのアホだな言ってくれたのう! わし一応世界神なんですけど?」


「何開き直ってやがる! 元はといえばあんたが四徹したから僕のスキル間違ったからじゃないか!!」


そう言って僕は文句をさらに言ってやろうと思い口を開こうとするが ストゥルドが手でそれを制す


「そのことなんじゃがな おかしいんじゃよ」


「おかしいってどういうことだ?」


「うむ、わしもミスった時は四徹の影響じゃと思っておった だがどうにも違和感を感じたわしは、おぬしの魂に施した術式を見直したんじゃよ

するとどうやらわし以外の誰かの手が入った痕跡が隠されるように見つかったのじゃ」


「つ、つまりどういうこと?」


「おぬしとあの娘のスキルを取り替えた犯人は別にいるってわけじゃ 」


「え、なんのためにそんなことを?」


「わからん じゃがそれをして徳をする存在は見当がつく」


「それは誰なんですか?」


「ずばり!魔族じゃ!」


「魔族がなんで僕のスキルを取り換えると、徳をするんですか?」


「うむ、、 魔族が他種族と戦争をしてきたのは知っておるじゃろ 今は休戦しておるがそれは隙を窺っておる段階だからともいえる その隙を作るために利用したかもしれんのじゃよ」


「隙?ですか…」


「そうじゃ お主も最近耳にしたじゃろ “魔物が活性化してる” とな つまりお前が使うはずの余剰エネルギーの影響で魔物を活性化し他種族がその対応に追われているのを見計らって戦争をふっかけるという算段なのかもしれん」


たしかにそう考えると辻褄が合う気がするな だがおかしな点もあるのだ


「でも、結局リリが魔導王のスキルを持っているからリリが今日の鑑定の儀でスキルを認知して本格的に使い始めたら その問題は解決なんじゃないですか?」


「その通りじゃ 使うことができたらな」


ずいぶん含みを持たせた言い方だ


「何か懸念があるんですか?」


「うむその通りじゃ 魔族がそれをわかっていないわけがないのじゃ」


「つ、つまりどういうことですか?」


「おそらくリリは魔族から命を狙われるじゃろう…

スキルの芽が開く前に摘み取ってしまおうと考えるだろうからな」


なんてことだ! 魔族によってリリの命が狙われるなんて


「どうすることもできないんですか?」


「おそらく魔族は誰に魔導王のスキルが移ったのかわかっておらんのじゃらう だから今はまだ安全じゃ だがこの鑑定の儀でそのスキルが明るみに出たら 命を狙われることになるだろう」


「そんな! じゃあリリはこの後殺されるかもしれないんですか?」


「そうとは限らん もしかしたら魔族に伝わるのに時間がかかるかもしれない じゃが…」


ストゥルドが何か言い淀む


「どうしたんですか?」


「うむ… こんなことは想定したくはないんじゃが 会場に魔族が紛れ込んでる可能性もある」



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