第一章 誕生編 第7話 アレン 4歳の成長
決意を新たにした僕は日々の訓練により一層打ち込むことを決めた
まだ三歳児の僕には出来ることはそう多くはない
そのため、今できることに全力を注ぐべきだと考えたのだ
朝食を食べ、朝の剣の鍛錬が始まる
僕は昨日のように父の待つ庭へと向かった
「父さん 今日もよろしくお願いします!!」
「ん?アレン ほほう… なるほどそうか……」
父さんが何か呟いているが聞こえない
「 アレン 確かお前は鑑定が使えたよな」
「? 使えるよ」
「それ 使うの俺がいいって言うまで禁止な」
「え?なんで?」
突然何を言い出すのか? 鑑定がなくともスキルが育つのは謎の機械音で知らせられる 何が目的なんだ?
「理由は今は言えねぇ 俺が使えって言った時にでも話してやる」
「え〜…… わかったよ…」
一体何が目的なんだろ? 大したことじゃなかったら怒るぞ
「聞き分けの良い子で助かるぜ じゃあ 始めるとするか 内容は昨日と同じでいくぞ 走り込み始め!!」
そこからは昨日の訓練と同じだ だがなんとなく昨日より体が動く感触がある 経験値5倍の成果か?
だが、今日も父さんの表情を変えることはできなかった
午後からはリリと一緒に魔法を使う
リリを守ると決めたからには絶対に手なんか抜けない 魔導王を努力で超えてみせるつもりだ
…………
そんな鍛錬の日々を何日も何日も繰り返し、やがて訓練から1年以上経って4歳になった後のある日の訓練で、、、、
「はぁっ!!」
木刀を父さんに袈裟懸けに振り下ろす
しかし
「そんなもんか? アレン!」
父さんが顔色を変えることなく僕の刀を受け流し、僕の首筋に木刀を添える 畜生!これで何回死んだんだ?
僕はバックステップを踏み、父さんから距離を取る
「くそっ! 全然父さんを動かせない!」
「年季がちげぇよ! でもまぁ最初に比べたらだいぶマシになったぜ たまにヒヤヒヤする剣、振りやがって!」
父さんは飄々としながら言う
「次はもっとヒヤヒヤさせてあげるよ!」
「おぉ!言うじゃねぇかアレン!」
木刀を正眼で構えて父さんを見据えながら思考を巡らす
(さぁどうする? 考えろ考えろ! 僕が今取れる手段は、刀で斬る、魔法を撃つの二つだろう 発想を変えなくてはいけない! 研究してる時もそうだったろ? 一見不可能なことを可能にしてしまう手段は意外とあっけないもんだ!)
僕は高速演算のスキルをフル活用し、瞬きにも満たない時間で考える そしてある一つの結論に達した
(そうか!もしかしてこの方法なら!)
「いくよ!」
「何か掴んだな? よし!来い!」
父さんに向かって一気に駆け出し、唐竹割に振る
「はぁっ!」
「おっと、どうした? 威勢だけか?」
しかしあっさりと受けられてしまう
「いいや!まだだ!」
僕は横に飛びながら木刀に手を添え、こう唱える
「エンチャント!!風!!」
木刀に風の魔力を帯びさせ、一息に詰め寄り横薙ぎに振る
「はぁぁぁぁあ!!」
「そう、、来るかぁぁ!」
父さんが迎撃しようとするが、先程までの剣とは違い、風魔法により加速した剣が届く
ミシリと父さんの体に木刀が初めて当たり、思わず蹈鞴を踏む
(やった! 動かせた!そのまま円の外に出ろ!)
思わず気を抜いてしまった
「おいおい、アレン 戦いの途中に気を抜くのは感心せんぞ」
やばっと思ったのも束の間に僕は首根っこを掴まれて投げられる
「うわっ!!」
地面にぶつかる瞬間にくるっと宙返りして足から着地する
「くっそ〜 惜しかったのに!!」
「甘いぞ!アレン!! お前は俺に一太刀浴びせることができた それはすごい成長だ だがな、お前がもう一撃気を抜かずに打ち込んでいればお前の勝ちだったかもしれない だがお前はニ太刀目を入れる事は出来ずに、投げ飛ばされた いいか、アレン! 戦場では最後に立ってた奴が勝ちなんだ 初太刀を入れたものが勝つわけじゃない わかったなアレン」
「うん…わかった」
「よし! だがそう気を落とすなよ 不意をつかれたとはいえ、俺に一太刀浴びせられたんだ そんなやつなかなかいねぇぞ だから誇れ! 次気をつければいいさ まぁ次はお前の魔法剣を想定して動くけどな!」
今日の剣の鍛錬はこうして終わった
父さんに一太刀浴びせることができたけど、それ以上にほろ苦い経験になった
リリを守るって決めてから油断していたつもりはなかったが、いつのまにか緩んでいたかもしれない
より一層気を張らなきゃいけないな
ってか 俺の渾身の一撃だったのに涼しい顔しやがって! 明日からはもっとギャフンと言わしてやる
そう思って僕は午後に備えて、昼食まで眠りについた
…………
「お〜い ララ ちょっと治癒魔法掛けてくれ」
「まぁまぁ〜 どこ怪我したの〜 … ってあなた!! 肋が何本か折れてるじゃないの!?」
「アレンの前でカッコつけるのに必死に耐えたよ…… あいつ魔法剣なんてもう覚えやがって 刃のついた剣だったらもしかしたらやばかったかもな
くくくっ」
「根源たる光よ 今ここに光を示し 我らに癒しの波動をもたらしたまえ ヒーリング ふぅっ治ったわよ ちょっと!骨折したってのに何笑ってるのよ〜」
「まさか4歳の息子が魔法剣を使って 俺にがっつり一太刀浴びせてくるんだぜ 笑えてきて仕方がねぇよ! ほんとに我が息子ながら末恐ろしいぜ」
「そうね〜案外すぐ私たちのこと超えて行っちゃうかもよ?」
「あぁそうかもしんねぇな だが、まだまだ壁として立ちはだからないとな」
「私も午後の授業、いつもより厳しめにしなくっちゃ!」
「ははっ ご愁傷 アレン…」
…………
その日の午後の魔法の訓練はいつもの数倍のキツさだった 突然どうしたんだろう?
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