第二章 冒険者編 第24話 母さん
家から走ってきた僕は、息を切らしながら靴を脱ぎ捨て下駄箱にぶち込む
(やばい、やばい! チャイムが鳴っちゃうよ!)
僕が階段を駆け上がり、廊下に差し掛かった時にチャムが鳴り出してしまった
(間に合え!間に合え!)
教室の扉をガラッと開け、教室に飛び込んだ
「おぉー 木坂!やっと来たか〜 お前がギリギリなんて珍しいじゃないか」
どうやら、すんでの所で間に合ったようだ
僕は息を切らしながら、自分の席に着いた
「遅かったな!博士!」
「そうだよ〜 博士くんが遅刻したのなんて、初めてじゃない?」
僕は乱れる息で答えられないので首を縦に振って、答える
僕はみんなから渾名で博士と呼ばれているのだ
小学生らしい安直なあだ名だな ん?
そのまま、朝の会で出席を取り、授業が始まった
「夏には窓には水滴はつかないよな でも冬の窓には水滴がつくだろ なんでだかわかる人〜?」
「はいっ!」
「おっ! 流石学くんだね! じゃあ学くん!」
「はい! 空気は温度が高いほど多くの水分を含めます 冬は教室の方が温度が高く、湿気も多いです
そのため、外の冷たい空気に冷やされた窓の周りの水蒸気が水に変わることで、窓に水滴がつきます!」
「流石! 正解です!」
教室がおぉ〜っとどよめいた
「すげぇ〜 流石、博士!なんでも知ってるぜ!」
「私さっぱりわからなかったわ〜 博士くんはいつでもすごいよね!」
「次のテストも満点期待してるよ!」
教室中が僕を称賛する声に包まれていた
(ふふっ 僕に解けない問題なんてないさ
何せ、予習は中学生まで済ませてるからね!)
僕は内心、得意になっていたのだ
テストはいつも満点、授業中の誰も答えられない質問はいつも僕だけが答えられる もちろん、成績表はオール5だ
次の授業は体育で球技だ
男子はサッカー、女子はバレーをやる
「博士! 任せた!」
「任された!」
けんちゃんからパスを受けた僕はすぐに3人に囲まれた
「この前は二人がかりで止められなかった けど、今度は3人だ! これなら流石の博士も!」
「ふふ、まだまだだね! サッカーも予習済みだよ!」
僕は3人に向かって鋭くドリブルで切り込む
「やけになったか!? 3人を抜けるもんか!」
3人が距離を詰めてきたところを狙って、ヒールトリックでボールを浮かし、3人の頭上を越させて相手を一瞬で抜き去った
「なにぃっ! 上を通しただって!?」
「ガラ空きだ! よっと!」
僕はキーパーの立ち位置が右に寄っているのを確認して、左の角にボールを叩き込む
「ゴーーール!! 決めた! さっすが博士だぜ!!」
後ろから竹やんに抱きつかれる
よせやい、照れるぜ…
僕はその試合で一人で3点、ハットトリックを達成していた
体育後、教室で着替えている時のみんなの話題は、僕のプレーについてだった
「おい!見たかよ博士のあのプレー!? ヒールトリックだぞ!?」
「もちろんだよ! それに中盤でボールを奪ってからドリブルで、何人もの相手を抜いて行って、最後はキーパーも抜き去ってのシュート! 一体何食ったらあんなことできんだろ!」
「勉強も運動もぶっちぎりですごいなんて、博士は神だな、マジで!」
僕はみんなが僕の話題で盛り上がるのを横目で見ながら冷静な顔に努めていた
正直、表情を取り繕うので精一杯だった
その後の授業でも僕はあらゆる質問に正確に答え続けて、常に教室の注目を集めていた
4時間目が終わり、楽しみな給食な時間だ
「今日の給食なんだっけ?」
隣のみゆちゃんが聞いてくる
「なんだっけな ちょっと献立表、見てくるね」
「ありがとう! 博士くん!」
みゆちゃんが無邪気な笑顔でそう言った
僕に惚れたら火傷するぜ…
えーっと 今日の献立は…
今日はいつもは出ない珍しい料理が出るようだ
ご飯、牛乳、わかめサラダ、ABCスープ、そしてハッシュドビーフだ
ハッシュドビーフか〜 給食に出たのは初めてじゃないかな?
すると、何故か金髪が頭をよぎった
ん?なんだ今の記憶は ハッシュドビーフは洋食だから連想したのかもな
「ハッシュドビーフが出るらしいよ」
「はしゅっど? 何それ? 美味しい?」
「ハヤシライスみたいなものだよ 美味しいよ」
「ハヤシライス!? 私それ大好き!」
やがて、白衣に身を包んだ給食係が給食を運んできた
僕を含むその他の生徒が、号車ごとに並んでいき給食を受け取る
やがて、全員分の配膳が終わり、日直が前に出てくる
「手を合わせて、いただきます!」
「「いただきます!」」
クラス全員で挨拶をして、給食が開始する
ハッシュドビーフをご飯にかけて、スプーンで口に運ぶ
うん!美味しいな 後でおかわりしよっと
「どう?みゆちゃん おいしい?」
「うん!初めて食べたけど美味しいね! 博士くんは食べたことあるの?」
「うん 何度かね うちの母さんが料理好きでたまに作ってくれるんだ」
「へぇ〜 いーなぁ 私のお母さんにも作ってもらおっと!」
僕も母さんに頼んで、今度作ってもらおうかなと思った
ハッシュドビーフ、侮れん美味しさ!
その後、僕は2杯もおかわりをしてしまった
「皆さん手を合わせて、ご馳走様でした!」
「「ごちそうさまでした!」」
僕らは自分の食器を下げ、それを給食係が運んで行った
その後の昼休みは外でみんなとまたサッカーをして遊んだ
20分の休みでこんなに遊べるなんて小学生はすごいなぁ… ん?
5、6時間目は図工だった
今日は『自分の宝物』というテーマで絵を描くというものだった
「お前何にした? 俺、サイン入りのサッカーボール! この前、ゴンベ東京の加藤選手にサインしてもらったんだ!」
「まじで!? すげ〜じゃん! 俺はこの前捕まえたノコギリクワガタ! めっちゃデカくて、カッケェよ! 博士は何描くの?」
「僕は『家族』を描くよ テーマについて考えたらやっぱり家族かなって」
「流石博士だなぁ… 俺のクワガタが何かバカっぽくなってくるよ」
僕は一人っ子だったこともあり、両親は僕のことを第一に尊重してくれた
僕がもう少し小さかった時に、両親に質問攻めをしたとしても、二人とも優しく教えてくれたっけ…
僕は自分を中心にして、父さんと母さんが僕の隣に立っている絵を描いていた
絵を描いている間の思考は、普通、穏やかなものだ
しかし、今回は違った
筆を進めるに従って、言いようのない不安、違和感に包まれていく
(くそっ、なんなんだ朝からこの違和感は あ〜頭がもやもやする 風邪かな?)
そんな調子であったが、僕は、授業が終わる頃には、その絵を完成させていた
僕の周りに父さんと母さん、平和な光景、いつもの光景、だけど胸がざわつく光景
こりゃほんとに風邪でも引いたのかも、皆勤賞逃しちゃうかもな
その後、その絵は先生から絶賛されて市のコンクールに出されることとなった
やはり、他の生徒から称賛の声を浴びるが、僕は苦笑いするしかなかった
そして、帰りの会、明日の時間割の報告が終わり、最後の先生の連絡の時間となった
「えっと さっきの報告でも言われたように、明日は時間割が変わってるから体育があるぞ 体操服忘れないようにな! あとは、連絡はなし!」
すると、前の扉がガラッと開き、教頭先生が担任の先生を手招きした
「佐藤先生、ちょっと…」
「はい なんでしょうか… え… はぁ…なるほど…」
教頭先生が担任の先生に何か紙を渡して、久々と話をしている
しばらくすると、話が終わったようだ
「え〜今教頭先生から連絡があった なんでも、ここら辺に不審者が出たようだ」
教室が歓声に包まれた
あるあるだよな、小学生は不審者情報に興奮しだすのだ
互いにお前なんじゃね? とからかいあっている
「おい、おい注目! 大事な話だぞちゃんと聞けよ
今日は放課後学校に残らずに、真っ直ぐ帰宅しろ
出来るだけ一人にならないように、友達と帰れよ
俺からは以上だ」
日直が帰りの挨拶をする
「起立! 礼! さようなら!」
「「さようなら!!」」
その声を合図に、みんながやがやとかあり始めた
僕は帰る方向が一緒の竹やんと、けんちゃんに声をかける
「今日は一緒に帰ろう てか、いつも一緒だけどね」
「だな 不審者が出ても俺がパンチでやっつけてやるよ」
「けんちゃんは頼もしいな 早く帰ろうぜ 今日、『銀河サッカー伝説』の放送日だぜ!」
「そういやそうじゃん! 帰ろうぜ! 博士、けんちゃん」
僕らは昇降口を飛び出して、帰路についた
途中でみんながいい感じの棒をとって、何をするでもなくそのまま歩いていく
相棒、よろしくな…
なんだろう、すごく頼もしく思えるな
そのまま、くっちゃべりながら帰っているとY字路についた、左にはけんちゃんと竹やんの家があり、右は僕の家だ、つまりここで分かれることとなる
「じゃあな博士! また明日」
「不審者に襲われんなよ!」
「襲われないよ! 撃退してやるさ! また明日!二人とも」
僕は一人で帰り道を歩いて行く
「ねぇそこの僕 駅ってどっちかな?」
突然声をかけられて、ビクッとした
恐る恐る振り返ると、細身のスーツのおじさんだ
人も良さそうだし、大丈夫そうだな
「はいはい、駅ですね? それはここの道を真っ直ぐ行って…」
「う〜ん ごめんわかんないから ちょっと案内してくれる?」
大人から僕の知識が頼られたと思った僕は得意になって、その人を案内していた
「そろそろ駅ですよ」
「そっか ここならいっかな?」
「え?」
後ろを振り返った瞬間、そのおじさんがナイフを振りかぶっているのが見える
咄嗟に後ろに避けたが、頬をかすり血が垂れた
「くっひひ! 血だ! 子供の血だ!」
そのおじさんはさっきの様子とはガラッと変わり、血走った目で涎を垂らしながら笑っていた
(くそっ! こいつ、もしかして例の不審者なのか? 不審者にあった時はどうしたら良いんだっけ? 思い出した!)
「誰か〜!! 助けてください!! 襲われています!!」
僕は大声で助けを呼んだが、あたりはシンッと静まりかえっていた
「来ない来ない来ない来ない! 助けなんか来ないよ! ここは人通りの少ない通りだし、周りに家屋もない! さぁ、もっと見せておくれ」
おじさんがナイフを握りしめて僕に肉薄し、首筋目掛けて振り下ろしてくる
「血!血!血! 見せろぉぉお!」
だが、何故か自然と体が動き、手に持っていた棒でそのナイフを受け流した
(なんだ? 勝手に体が動いたぞ まるで、染み付いた動きのように)
僕の思いがけない動きに一瞬呆気に取られていたおじさんが、突然、憤怒の形相をうかべた
「なんで!なんで!なんで!? ずるいぞ!武術を習ってるなんて卑怯だ! 死ね死ね死ね死ねぇぇ!」
おじさんがやたらめったらにナイフを振り回してくるが、その全てを棒で受け流し続ける
(いける! いけるぞ! これなら…)
と、一瞬だけ気を抜いてしまった
「うらぁぁ!!」
すると、おじさんが僕に対して蹴りを放ち、それが脇腹に突き刺さる
「ぐっ!」
小学生で体重が軽いこともあり、簡単に吹き飛ばされ、棒も飛んでいってしまった
「ふぅっ!ふぅっ! お前がいけないんだぞ! 僕に、僕に嫌いな血を見せてくれないから! お前がズルをしたからいけないんだぞ!」
おじさんはガリガリと頭皮を血が出るほど掻きむしり、口から泡を出していた
(く、狂ってる… くそっ動けない このままだと刺されて死んじゃう)
僕は最後の望みをかけ、ランドセルの防犯ブザーを鳴らした
「だ〜か〜ら〜! 聞こえないって! そんな音!
はぁっ もう飽きた、血を見て落ち着こうっと」
おじさんがゆっくりこちらに近づく
何故かその光景がダブって見える
(なんだ? 目までおかしいのかな? 違う、見た方があるんだ この光景を… デジャブってやつか? くそっこんな時に考えることじゃない!)
ゆっくりとおじさんがナイフを振りかぶる
「じゃあね 真っ赤を見せてよ」
僕は迫り来る結末にぎゅっと目を瞑った
「おい!! うちの学に何してんだ!!」
突然、閑散とした空間に声が響き渡った
あぁ、忘れもしない母さんの声だ
見ると母さんがこっちに走ってきている
その姿もダブって見えている
「くそっ! なんなんだあの女は! どいつもこいつまで僕を馬鹿にしやがって!」
おじさんが標的を母さんに変え、ナイフを振りかざして走っていく
僕は内心、安心していたなぜなら母さんは合気道の有段者で、対武器もこなせるのだ
案の定、おじさんのナイフをパシッと取ると腕を捻り、ナイフを離させてそのナイフを遠くに投げ捨てた
「観念しなさい!」
「ぐぅっ! どいつもこいつも…」
(やった!母さんがやっつけた! これで一件落着だな!)
だが、そのブレる光景に突然、強烈な不安を感じた
「母さん!! 避けて!!!」
「え?」
そう叫んだが、おじさんの持っていた2本目のナイフによって、母さんが深々と腹を刺されてしまった
「ちっ! ずらかるか 子供の血が見れな買ったのは残念だったなぁ…」
おじさんは母さんからナイフを引き抜くと、走り去ってしまった
母さんのお腹から血が噴き出している
「うわぁぁぁぁぁ!!! 母さん!!」
僕は母さんのもとへ駆け出し、母さんを腕に抱いた
「あ、あぁ そうだ!止血!止血! 血を止めれば良いんだ! 傷口を押さえて… なんで!? 止まらない!!止まらないよ! どうしてだよ!!」
母さんの傷を必死に抑えるが、血は止めどなく溢れ出す
(あぁ… まただ! また僕は母さんを救えなかった また?またってなんなんだよ!! くそっ!!
このままだと死んじゃう! 母さんが死んじゃうよ!!)
僕は持っている知識を使って、なんとか血を止めようとする
が、無常にも血は止まらず、血の水溜りを作っている
「そ、そうだ!救急車! 呼ばなきゃ!呼ばなきゃ! 」
母さんのポケットを探り、携帯電話を取り出す
血まみれだ
僕は血塗れの携帯電話を震える手でなんとか押した
「こちら、119番 家事ですか?急…」
「救急です! 母さんが刺されて…血がいっぱい出て…はやく、早く来てください!! 住所は○○市◇◇町99-99です!! 刺された母さんの年齢は35歳です! 僕の名前は木坂学です! 救急車をはやく!!」
「わかりました! すぐに救急車を手配しますね!
電話はこのまま繋いでおいて! 周りに他の大人はいますか!?」
「いません、僕だけです 血が、血が沢山出てるんです」
「落ち着いてよく聞いて! 傷口を手で押さえて止血するのよ!」
「それはさっきやりました! それでも血が止まらないんです!」
「てことは、内部の臓器が損傷してるのかもしれないわね とりあえず、救急車が到着するまでに患部を圧迫して、少しでも血を止めて!」
え? てことは、僕にできることはないのか?
嘘だ、嘘だ!!
僕は必死に母さんのお腹の傷を抑える
「止まれ!止まれ!止まれ! くそっ!なんでだよ!」
母さんの顔はみるみる青ざめている、血液が足りなくなっている証拠だ
母さんが…母さんが!
すると、母さんの手が僕の頬に触れる
ひどく冷たい手だった
「母さん!?」
「学… 怪我はない?…」
なんてことだ… 自分はお腹を刺されているのに、僕の心配なんかして
「僕は大丈夫だよ! だから、喋らないで!」
「そう、安心したわ あなたが、怪我をしないでよかった」
「喋らないで!! くそっ!止まれ止まれ止まれ!!」
僕が止血しようとする手を母さんが止める
「もう、いいのよ学… 私が助からないのは…私が一番わかってるわ だから、最後に貴方と話をさせて…」
「母さん… なんで…そんな」
僕の目から大粒の涙が溢れだす、認めたくない!
母さんが…母さんが死ぬだなんて!!
「あんなに小さかった学が…私の心配をするほど…おっきくなっちゃったなんて… この前まで、よちよち歩きだったのにね…」
母さんは遠くを見るような目でそういった
虚な目をしている
「学、あなたのこともっと、も〜っと見ていたかった… 学は、毎日毎日、学んで行って成長して、その姿を見るのがとっても楽しかった…
学、生まれてきてくれて、母さんの…子供でいてくれてありがとう… 私がいなくても…学は大丈夫よね? だって、私の子供…ですもの…
学… 愛してるわ…」
母さんがゆっくりと目を閉じた
「母さん? 嘘だよね? 冗談…なんでしょ? ほら…ははっ、びっくりしたよ、もう十分だよ
だから、ほらドッキリだったって… そう、でしょ? 母さん?」
僕は母さんの顔にそっと触れる
その肌はわずかに暖かいが、だんだんと冷たくなっていく
僕は母さんの死を実感したのだった
(し、死んだ… 母さんが死んだ… さっきまで、元気に生きていたのに… 死んじゃった…)
母さんは死んだのだ、昔飼っていたカブトムシなように、母さんも死んでしまったのだ
「あ、あぁ… あ うわぁぁぁぁああ!!」
僕は天に向かい慟哭した
泣き喚きながら、いろんな母さんの思い出が蘇ってくる
朝、いつも僕を起こしてくれた母さん、風邪をひいた時に眠るまで手を握っていてくれた母さん、僕が欲しいって駄々をこねたおもちゃを、玩具屋を走り回って買ってきてくれた母さん、迷子になって心細くて泣いていた僕に駆け寄って抱きしめてくれた母さん、運動会の時に張り切って早朝からお弁当を作ってくれた母さん、母さん、母さん、母さん…
その記憶のどれもが愛おしく、愛につつまれていた
そんな、母さんが死んだのだ 僕の手の中で…
(僕のせいだ! 僕があんな男に道案内なんかしないで、帰っていれば母さんが! いや、僕に力があれば! あの男を一人でも倒せるくらいの力が有れば! 母さんは死ななかったんだ!! あぁ!力だ…力がなければ何も救えない 母さんすら救えない… 知識だ…知識を誰よりもつけくてはいけない
もう、大事なものを手から零れ落ちさせないように、大事なものをまもるために!!)
僕は母の亡骸を抱きながら、誓ったのだ
(僕は…僕は誰にも負けない知識をもつんだ!)
……………………
「………ン! …………レン!」
「アレン! 大丈夫?」
僕は目を開けてムクリと起き上がった
「アレンくん 何か怖い夢でも見たの? 泣いてるよ?」
頬に手をやると涙が手を伝っていった
「うん… 悪夢だった… でも、大切なもの、忘れちゃいけないものだったんだよ…」
僕が、知識を躍起になって集め出したきっかけはあの日の母さんの死だったのだ
それをショックな出来事とはいえ、忘れていたなんて… ごめん、母さん… 僕はなんてことを
僕は思わず母さんへの申し訳なさから泣き出してしまった
「あ〜あ〜 そんなに怖い夢見たのね? ほら、これで少しは安心したかしら?」
クリスが僕を優しく抱きしめくれた
「アレンくん 辛い時は私たちを頼ってね だって仲間だもん」
リューネちゃんはそう言って、その小さい体で僕を抱きしめてくれた
「ありがとう 二人とも… みんな、居なくなったりしないよね?」
「当たり前じゃない 仲間じゃないの」
「そうだよ! いなくなれって言ってもいなくなってあげないんだから! あ、でもいなくなれって言われたらちょっとショックかも…」
「安心したよ でも…少しだけこのままでいさせて…」
僕は泣き止むまで、二人の腕の中で泣き続けたのだった
読んでいただきありがとうございます!
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