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第二章 冒険者編 第21話 『本の街』の図書館

謎を考えるのが僕に取っての試練です

次の日、僕らは件の図書館の前まで来ていた


「ここが、図書館か〜 今まで見た建物で一番でかいな〜」


「しかも、話によるとこの建物にぎっちりと所狭しに本が詰め込まれてるみたいよ とんでもない本の数よね…」


「へぇ〜 すっごいんだねぇ…」


僕らは3人とも、その大きさに圧倒されて口をあんぐりとしながらつい、見上げてしまっていた


「とりあえず、入ろっか」


「そうね、外観を見ただけじゃ知識は手に入らないしねま」


「どんな謎がでるのかな? わくわく」


僕たちは緊張の面持ちで図書館に入る

すると、入口に恰幅のいいおばさんが立っていた


「こんにちは 我が街の図書館をご利用ですか?」


「はい そうです」


謎がくるっ! よしっ何でもこいだ!

僕は来る謎に備える


「そうですか、ではお静かにご利用くださいませ」


えっ? ないの? 何が拍子抜けだ


「? どうかされました?」


「あ、あぁ 他の場所みたいに謎が出されるのかなぁって思いまして…」


「あぁ、まだここでは試練はありませんよ レベル1層ですからね」


ん? レベル1層?  階層に分かれてるってことなのかな?


「どうやら、当館は初めてのご様子 説明しましょうか?」


「是非お願いします」


「わかりました では…」


そのおばさんの話はこうだった


この図書館は全部で4階層に分かれており、階層が上がるにつれて、扱う知識のグレードも上がっていくそうなのだ


そして、階層を上るには職員の出す謎に答えなければならず、その難易度は階層を上がるにつれて上がるようだ


まずは1階層

ここで扱われてるのは、そこらへんの書店でも扱っている、伝記や、基本魔術書、そして地図などだ

そのため、この階層には誰でも入ることができる


次は2階層

ここで扱われてるのは、専門書の類である

例えば、薬師が使う、調合書などがある層はここだそうだ 


そして3階層

ここで扱われているのは、応用魔術書や新たな魔術、理論などの論文などだ


最後に4階層

ここで扱われているのは、禁書や禁術などの特秘情報などだ おばさんによると、即死魔法や呪い魔法などのマジで洒落にならないものが扱われているらしい

正直、見ること自体禁止にすれば良いのでは、と思ったが、知識は持つ資格のあるもの、つまり謎を解くほどの知識を持つものがその知識を求める限り、邪魔することはできないそうだ


僕なら全部燃やすけどね


と、これがこの図書館についての説明であった

なんとも、特異な場所だな…


「どうでしょうか? 理解していただけましたか?」


「はい 丁寧な説明をありがとうございました」


「いえいえ では当館の知識をお楽しみくださいませ 知識を求めん者達よ」


僕らは図書館の中に入った


「うわぁ… すごい量だ…」


そこにはとてつもなく広い空間が広がっており、そこに一面の本!本!本!


僕はワクワクとその眼前一杯に広がる知識たちに駆け寄ろうとした


「待ちなさい! アレン、リューネちゃん」


かと思ったが、クリスに首根っこを掴まれた

てか、リューネちゃんも駆け出そうとしてたのかよ

多分、逃走目的だけど…


「うん、ごめん 最初は地図を見ないとね」


「うぇ〜っ 捕まっちゃった〜 とほほー…」


僕らは地図のある区間に行こうと思ったのだが、いかんせん、この量だ 何処だか、検討もつかない


「アレン! この層の地図があるわよ!」


見ると、中央の柱におっきく、この層の本のジャンルの大まかな区間が載っている地図があった


「え〜っと 地図、地図、地図… お、ここか」


その地図によると、結構奥の方にあるようだ

こりゃ見つからないわな


「よかったよ〜 この地図がなかったら、今日一日は地図を探すだけの日になるところだったよ」


「そうね だから地図って大事なのよ 道を知ってれば迷わずに、目的地に着けるのよ ね?地図って大事なんだなぁ、ってわかったかしら リューネちゃん」


「私は探す日でも良かったけどね〜」


リューネちゃんが、ふへぇ〜っとため息をつく

そんなに嫌か?


「リューネちゃん? わかったかしら?」


クリスが再度微笑みながらリューネちゃんに問いかける

こわっ! 笑ってるけど、額に青筋が浮かんでやがらぁ!


「ひっ! はいっ! わ、わかりまくりましたぁ!」


「よろしい じゃあ早速地図の置いてあるとこにいきましょうか」


大人しく、手を引かれてリューネちゃんがクリスについていっている こりゃブルってんな…


「予想はしてたけど、やっぱり地図だけでもすごい量だね」


「そうね… とりあえず王都周辺の街が載ってる地図は… これかしらね?」


そこには『ロッシーニ王領』と、書かれている

てか、この国の王ってロッシーニ王なんだな

地味に初めて知ったぞ、家の本にはそんなの載ってなかったし


クリスがパラパラと地図のページをめくっていく


「うん! この本で正解だわ! リューネちゃん、アレン 見て!」


見ると、王都を中心として、放射状に街道がひかれ、そしてそこから枝分かれする様になっており、概ねその街道に沿うように街が形成されているようだ 


「私たちが今いる街はここよ、でここがゴアの街よ」


見ると、海側の街道の先端の方にゴアの街、そしてそこから少し王都側に寄ったところにマーシャの街があった

結構遠いのな、王都って


「まだまだ王都までの道のりは長いってわけね」


「そういうことよ リューネちゃん聞いてるの!?

リューネちゃん!」


「はっ! 起きてます!起きてますよ〜! 寝てるわけないじゃん! も〜クリスちゃんったら〜」


完全にリューネちゃんが居眠りこいてやがった


「ふふふっ そうね、そんなにやる気あるんだったら、リューネちゃんだけに特別授業してあげるわ」


「うわぁ! ごめん!ごめんなさい! アレンっ!

助けてアレン!」


リューネちゃんはクリスに連行されていった

きっとO・SHI・O・KIが待っているんだろう

強く生きてくれ…


解放された僕は、一度中央の地図に戻った


(えーっと 伝記コーナーは… ここか、結構区間広いな… 見つかるかな?)


僕は、伝記コーナーに向かった

理由は、僕に取り込まれた剣についての情報があるかもしれないと考えたからだ


禍々しいオーラを放っていたし、ただの剣でないことはたしかなのだが…


「いや〜 すごい量だなあ こりゃ骨が折れるぞ〜」


それから僕は片っ端から関連の本を見て行った

しかし、その剣についての記述は見つからなかった


そして、その中である違和感に気づいた


(勇者についての記述、例えば聖剣などについては載ってるんだけど 魔王についての記述が奇妙なほどに薄いな なんでだ?)


この世界には、魔王と勇者が存在しているのは明らかだ

しかし、魔王についての情報が何かしらの意図を感じるほどに薄いのだ


勇者の本に登場はするのだが、その種族、姿、使う技などが完全に抜け落ちており

最終的に勇者に倒されました、としか情報がないのだ


たしかに、魔王はこの国、ひいては種の敵であるために、勇者よりも記述が少ないのは納得できる


だが、ここまで露骨に情報が抜け落ちすぎているのは、何か裏があるとしか思えないのだ


(さらに上位階層レベルの情報なのかもしれないな)


この階層から魔王やあの剣についての情報が抜かれてるとすると、その情報はこの階層では扱えない情報であるということなのだ


僕は一先ず、次の階層に行くことをクリスとリューネちゃんに告げに行った


「クリス、リューネちゃん、次の…」


「リューネちゃん この街道に存在する街の名前を端から全部言ってって」


「あぅぅ… えっと リブロ、ホルモー、カルビン、フィラー、サーロン…… えっと、えっと… うわぁ! わかんないよ〜!」


「じゃあまた最初から覚えて行きましょうね〜

あら、アレン どうしたの?」


そこには、地獄が広がっていた

リューネちゃんが額に鉢巻を巻いて、地図を覚えさせられていた

スパルタ教育すぎる…


「うわぁぁぁあん! アレンくん、助けて!

クリスちゃんが、クリスちゃんがぁ! 」


リューネちゃんがガクブルとしながら僕に抱きついてきた


「クリス、リューネちゃんにどんなこと覚えさせてたの?」


「えっと とりあえず、ロッシーニ王領の街を全てね 街道順に」


鬼だ…鬼がいるよ


「そんなの無理だよ! アレンくんもクリスちゃんに何が言ってあげて!」


リューネちゃんがビシッとクリスを指差しながらそう言う 

そうだね、怖かったね… おじさんはここはガツンと言っちゃるけんね…


「クリス、あまりにも厳し…」


「あら、私は全部覚えてるわよ だから覚えられないことなんてないわよ」


クリスがあっけらかんと言う

まじかよ…どんな教育受けてんだ?


「と、とりあえず リューネちゃんはこのペースで覚えるのが難しいみたいだから もう少しゆっくり目にやってあげてくれ リューネちゃんがこれ以上勉強が嫌いになったら大変だよ」


「むっ それもそうよね 私も加減を間違えていたわ ごめんねリューネちゃん」


「ん、いいよ でも、ご褒美はちゃんとちょうだいね」


「もちろんよ それは約束するわ」


抜け目ないなリューネちゃん 

とりあえず、一件落着…かな?


「で? アレンは何しに来たの?」


あ、忘れてたわ


「えっと この階層には僕の求めている知識が無さそうだから、次に進もうと思ってるって報告」


「え!? 次のとこ行くの? 私も行きたい!」


リューネちゃんがケロッとした顔でそう言った

もしかして、さっきのは演技か?


「私も行くわ、謎を解くのに人数がいた方がいいでしょ?」


と、言うわけで次の層にみんなで行くことになった

さてさて、謎は如何程じゃろうな


次の層に続く扉を開けると、案の定、謎を出す職員の人がいる 40代くらいのおじさんだ


「2階層の知識を求めるのですね それではあなた方の知識を試させていただきます 申し訳ありませんが、一人ずつとさせていただきますね」


げっ! やっぱりそうなのか! 

そりゃそうだよなぁ… チームの誰かが、謎が解けても他の人達がその謎を解けるわけじゃないしな


「アレンくん… どうしよう」


「と、とりあえず私が行くわ みんなは傾向を掴んでちょうだい」


クリスが一歩前に出た


「最初は貴女が挑戦されるのですね それでは謎を出させていただきます なお、他の方々が助言することは禁止とさせていただきます 

では、問います 現国王の三女の名前と、趣味は何でしょうか?」


めちゃくちゃ専門知識じゃないか! 

なるほど、傾向は専門的な知識なのか…

と言ってもこれは難しすぎないか?クリス大丈夫だろうか


「三女の名前はリゾティーナよ 趣味は、確か紅茶の茶葉収集よ」


「正解です この通行証をお待ちくださいませ これがあれば次回からは謎の試練無しで、通行できます  それではお通りください、深い知識を持つ者よ…」


すご! なんでわかるんだ? 貴族の令嬢っぽかったけど、さっきの地図の件といい、余程の教育受けてきたんだなぁ


「じゃあ、私は先に行ってるわね 早く来なさいよね」


クリスが2階層に進んでいった さて、次は


「私が行くよ! アレンくん 私もある程度なら専門知識あるしね!」


原初の精霊、リューネちゃんが挑戦する

正直、不安だ…


「お次は貴女ですね それでは早速…

ワイバーンの爪、レインボーフロッグの目玉、グレーターホーンの髭、これらを混ぜ合わせて作られる薬品は?」


わっかんねぇ〜 僕がこの問題だったらやばかった

リューネちゃんがんばれ!


「やった! これならわかるよ! 正解は酔い止め薬、でしょ?」


「正解です こちらが、通行証です それではお通りください 深い知識を持つ者よ…」


どうやら杞憂だったようだ…

危なげなくリューネちゃんは試練を突破した

ってか、気になるんだけど、カエルの目玉が入った酔い止めって…


「アレンくんなら簡単だよ! 私も先で待ってるね!」


リューネちゃんも先に進んだ

いよいよ、僕の番だな 二人に出された問題からして、ちょっと自信ないけど…


「最後は貴方ですね では、早速…

同じ重さの綿と鉄が存在します さて、どちらが重いですか?」


そう来たか、どうやら物理学の専門知識だ 助かった〜 

普通ならここは、同じ重さだからどちらも同じ重さである、が正しいように感じる

しかし、この世には浮力が存在し、それは大気中でも働き、その大きさは体積が大きな物体ほど大きくなる


そのため、密度が鉄より小さい綿の体積は、同質量の鉄より大きくなるので、鉄よりも大きな浮力が働く だから…


「答えは鉄の方が重い、だ 質問は質量じゃなくてあくまでも重さ、だからね」


「正解です 貴方にもこの通行証を、ではお通りください、深い知識を持つ者よ…」


僕も無事進むことができた

よかった〜専門内で…


2階層に入ると、クリスとリューネちゃんが待っていた


「来たのね アレン 絶対アレンなら突破できるって信じてたわ!」


「そうだよ! 当たり前だよ〜」


ぐぅっ 二人の期待がつらい…

まじで運がよかった、姫の趣味と名前とか知らんし


「と、とりあえず折角来たんだし 魔王についての記述を探すよ」


「そうね じゃあ私は他の本見るわ リューネちゃんは?」


「私、お薬の本読む! 私が見てないうちにどれだけ発展したかな〜」


3人がそれぞれ違うジャンルのコーナーに行く


(歴史学とか、考古学のとかかな? えーっと…

ここっぽいな?)


僕は、目当ての知識がありそうなコーナーへと向かった


(流石に、すごい量あるな〜)


先程の1階層よりは本の数は少ないのだが、その一冊一冊がとても厚い

一先ず、魔王が書いてありそうな題名の本を探す


(おっ、これなんてどうだろ 『6代目勇者の動向と考察』 載ってるかな?)


やはり魔王と言ったら終盤だろうと、最後の方のページを見ると、そこには魔王との決戦が書かれていた

しかし、やはり魔王は勇者に倒された、という文章しか存在しておらず、情報の抜け落ちが見られる


{まさか、専門書であっても扱えない情報なのか?

そこまでの重要な情報ってことなのか…)


僕は他の関連本も片っ端から見ていくが、やはり魔王の情報のみが綺麗に抜け落ちている


そうやって調べていると、館内にオルゴール調の音楽が鳴った


「ご来場の皆様 本館は間もなく閉館となります

本日はご来場ありがとうございました また、お越しくださいませ」


と、アナウンスが入る

てことはこの曲はこの世界の『蛍の光』的な存在なのかね


「アレン 閉館だって 帰らなきゃね 目当ての情報は見つかった?」


「いや… ここでも綺麗に抜け落ちてたよ」


「そうなの… てことはさらに上の階層、次の階層は応用魔術書しかないから、4階層にあるってことよね」


「そういうことになるね」


4階層か… とんでもない謎を解かされるかもしれないな


「今日は帰りましょ 明日また来て、3階層に挑戦してみましょう」


「アレンくん どんな謎なのかな? 私、解けなさそう…」


リューネちゃんが不安そうに言う

正直、僕も同じ気分だよ


僕は4階層の前の3階層の謎も解けるか怪しいなと、少しネガティブな気持ちを抱くのであった


読んでいただきありがとうございます!

感想や評価が執筆の励みなってます!ありがとうございます!!

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