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第二章 冒険者編 第18話 “料理コンテスト” 本選

書いてたらたこ焼き食べたくなりました

そして、ついに本選の日を迎えた……


昨日の夜遅くまで、たこ焼きに改良を重ね、ある秘策を考えた僕たちは、朝の市場に来ていた


「いらっしゃい! あら、料理コンテストの本選に出る『仏恥義理』じゃないの!

もしかして、仕入れかい? 悪いねぇ、多分ここには本線で使えるほどの食材は残ってないのよ〜」


「いいや あるよ おばさん、これってある?」


僕はおばさんにある食材の絵を見せる



「あるにはあるけど… 捨てちまうような所だよ?

ほんとにいるのかい?」


「うん! これがなきゃダメってくらいにね…」


僕は高級な舌を持つ、審査員のお眼鏡にかなうたこ焼きのための布石を手に入れたのだった


(よし! なかったらやばいって思ってたけど、あってよかった〜 普通は捨てちゃう所だから早めに行って正解だった〜)


僕は安堵の笑みを浮かべたのだった


…………………



本選会場にて…


「アレン 例のブツ、手に入ったのね?」


「うん 完璧さ これで対抗できる」


「アレンくんがそれを使うって言った時は、普通捨てちゃうところだから大丈夫かな?って思ったけど 食べてびっくりしたもん! 最高のたこ焼きができるね!」


僕らは喜色を浮かべながら仕込み作業をしていた


「こんにちは 『仏恥義理』の皆様」


見るとシェイリィさんが立っていた、今日も最高のチャイナ服だぜ!


「こんにちは シェイリィさん お互い頑張りましょうね」


「えぇそうね 昨日首位を独走してたと思ったら、まさか追い抜かれてるんだもの しかも、初出場のお店に」


シェイリィさんが真剣な顔でそう言う


「だから、この本選では、私が勝たせてもらいます

私、ピンチの方が燃えるんですよ」


「えぇ、こちらも負けませんよ」


シェイリィさんは微笑を浮かべて去っていった

これは、宣戦布告ってやつだろうな


「アレン 絶対勝ちましょうね」


「そうだよ! 負けてられないよ!」


「あぁ! 僕もそのつもりだよ みんな、優勝目指して頑張るぞ!! エイ、エイ…」


「「「オ〜!」」」


僕らは再度、気合を入れ直すのだった

優勝しなくては、それも、ブッチギリで!!


……………


そして、遂に料理コンテスト本選が始まる


周りの観客席には観客が満席状態で、立ち見の人も多い めちゃくちゃ人気じゃん


「さぁ〜て! いよいよ始まりました!

 『料理コンテスト 本選』!!

予選で勝ち残った、10店で争われる、ガチンコ料理対決です!

ルールは簡単! 制限時間内に料理を完成させて、審査員がその料理を審査します!

審査員は全部で3人! それぞれが持ち点、10点を持ち評価して行きます!

その点が一番高かった店が、優勝となります!!


ではでは、審査員の方々の紹介です!!

 

まずは一人目! 毎年お馴染みのこの街の街長!

ゴーシュさん!


次に二人目! 王都で店を構える、天才料理人!

ルエルさん! そのお店は王もお忍びで、訪れているほどの美味しさです!


そして、3人目、料理研究会会長!

サバナドゥさん! 未知なる料理を求めて、本日も審査員の席に座っております!

では、審査員の方々から、一言ずつ頂戴しましょう! それでは、ゴーシュさんからお願いします!」



ゴーシュさんは髭を蓄えた、貫禄のあるおじさんだ


「うむ、紹介に預かった、この街の街長のゴーシュだ まず、今年もこの大会が開催できたことを、運営委員会、参加者の皆様、そして観客の皆様に感謝する 今年も、この街の食材を使った美食を楽しみにしているぞ 以上だ」


見かけ通りの威厳に満ちた人だな〜 イケオジや…


「はい! ありがとうございます! 次は、ルエルさん! お願いします!」


ルエルさんは、おそらく16くらいの桃髪の少女だ

どことなく気怠げだな


「ん、ルエル 美味いご飯食べに来た 以上」


はや!一言だけじゃん! 審査はしっかりしとくれよ?


「は、はい! ありがとうございます〜

次はサバナドゥさん! お願いします!」


サバナドゥさんは少し小太りで、眼鏡をかけている

前世の研究室にこんなのがいたなぁ…


「さ、サバナドゥですっ!はいっ!

え、え〜と 新しい、料理を見つけにきました!

た、楽しみにしてましゅ!」


終始落ち着かない様子だった、最後噛んだし

僕も学会の発表であんな感じだった頃もあったなぁ…


「はい! ありがとうございます!

これで審査員の方々のご紹介は終わりにいたします


さぁ〜て! いよいよ本選の方に移らせていただきます! 泣いても笑っても最後です!」


遂に始まる! 僕はギュッと拳を握りしめる


「アレン 頑張りましょ」


「アレンくん! 審査員のみんなをびっくりさせちゃおうね」


二人はワクワクとした顔でそう言う

全く、頼もしい仲間たちだ!


「うん! 度肝抜いてやろう!」


僕らは頷きあい、決意を固めた


「それでは、『料理コンテスト 本線』!

スタート!!」


パンっと音がして、調理時間のカウントダウンが始まる


僕らは自分の持ち場に行き、調理を始めた



たこ焼きの粉と、水の分量は水多めの方が美味しい

だが、焼くのがその分難しくなるのだ


そしてこの水に、ある秘策が仕込まれている

ただの水ではあきまへんで!


僕とリューネちゃんは作った生地をたこ焼き機に流し込み、焼いていく


焼きにくい生地だが、家事神のリューネちゃん、前世での経験がある僕の前では朝飯前だ


たこ焼きに焼き目をつけて、焼いていく


「お〜っと! 皆さん段々と料理が出来上がっていっています! すごい良い匂いがここまで立ち込めてきてありますね! あぁ〜お腹すいた…」


どうやら他のお店も順調に作っているらしい

流石、本選に残ったお店たちだ


僕らのたこ焼きもほぼ出来上がっている

うん!完璧な焼き上がりだな


僕とリューネちゃんはたこ焼きを皿に盛り付け、ソースとマヨネーズと青のりをかける


鰹節はこの世界にはなかった 作り方もわかるのだが、いかんせん時間がないのだ


「終了〜〜〜!! 皆さんお疲れ様でした!

それでは早速審査に参ります! では第10位の『主婦の会』の皆様どうぞ!」


どうやら、この街の定番料理の魚の煮物のようだ


それが一つずつ、審査員の前に出されていく


「それでは審査開始です!」


審査員たちが、料理を食べ始めた

みんな食べ方綺麗だな…


「はい! それでは審査員の方々、点数をお決めください…… それでは点数、オープン!

7点! 3点! 4点! おーっと! これは辛口だ! 解説をお願いします!」


「うむ 美味であり、この街の特産も使っておる

が、良い意味で普通の家庭料理であった

久しぶりに実家に帰りたくなったよ」


「ん 魚の処理がまだまだ 塩が少し足りない

以上」


「え、えっと やはり、家庭料理なので独創性に欠けるというか… すみまへん!」


「辛口評価だ〜! これは、高得点は難しいか〜!? 続きまして!…」


そこから審査は続いていった


街長さんは、結構点をくれるのだが、ルエルさんやサバナドゥさんは5点以上を出さなかった

やはり、天才料理人と料理研究家の牙城を崩すのは並大抵の料理では難しいようだ


ちなみに、審査を待っている料理は公平を期して、火魔法でアツアツの状態を保っている

心遣いが嬉しいねぇ


「さて! 残りあと2店となりました! ここまで、高得点が出ておりません! 果たして、優勝は誰の手に!? 続きまして!『龍天正』の皆様よろしくお願いします!」


いよいよ、シェイリィさんの番だ


料理が審査員の前に運ばれていく


ん?あれは…エビチリか!?


審査員たちが少し驚いた顔をして、食べ始めた


この世界に中華ないのかな…?


「はい! 審査員の方々、点数を決めてください………… それでは! 点数オープン! おっ!!  10点! 8点! 9点! ここにきて高得点が出ました!! 解説をどうぞ」



「見たこともない赤い料理に面食らったが その味わいに驚いた 少し辛いことがアクセントになり、このエビの甘みを引き立てている 満足の料理であった」


「ん、エビの処理が丁寧で味わいの奥行きがある

久々に美味い飯をくった 以上」


「は、はい! この料理は西の方にある地域で食べられている料理ですね、はい! いや〜文献では知ってましたが実際に味わったことはありませんでして! いや〜ワクテカです! はい!」


「おぉ〜っと! 高評価だ! 優勝は決まってしまうのか!? さぁ、お待ちかね! 予選一位通過のお店です! 逆転優勝できるのか!

『仏恥義理』の皆様! よろしくお願いします!」


いよいよ、僕らの番だ どうか、秘策が通じますように


たこ焼きが、審査員の前に出された


みんな角度を変えて見てみたりと、珍しがり、おっかなびっくりと、食べ始めた


「はい!審査員の方々! 点数をお決めください!

……… 決まりましたでしょうか! 最後の点数開示なので、お一人ずつ解説をしてからお上げください!」


「うむ 審査員を長年やっているが、こんな料理は聞いたことも見たこともなかった 口に入れた瞬間広がるコクの深い味わいと、中にあるコリコリとしたものの旨味、 全てが素晴らしい完成された料理だ! だから、この点数である」


そう言って掲げた札には『10』の文字が

よっしゃ! 第一関門突破だ!


「ん この小さな丸っこいものの中に深みを感じた、そしてこの中のコリコリとしたものから豊かな味わいを感じた 私でさえ、何を使ったかわからなかった… ねぇ? これを作った人に質問したいんだけど?」


突然の質問タイムだ 僕が前に出る


「はい、作ったのは僕です 質問って?」


「おそらく、この生地に何かの出汁を使ったね?

一体何を使ったらこんなに深みがでる?」


秘策が成功したようだ!


「僕が取った出汁は、コンバの根のところです」


「!? そこは普通すてるとこ そこを使うなんて聞いたことがない!」


「実はあそこが一番いいんですよ」


コンバとはこの世界でのコンブのことである

実は昆布は根のところが一番いい出汁を取れるのだ

しかし、普通の人はこれを知らないので捨ててしまうところなのである


「そ、そう あと一つ聞きたい あのコリコリは何?」


「あぁ、あれはクラーケンですよ」


「く、クラーケン!?」


会場が響めきに包まれる まぁ漁師さんとかしか知らないからな〜


「クラーケンを倒したのは置いとく だけどあれってタコだよ タコなんてもの食べるなんて聞いたこともない……面白い ねぇ、名前教えて?」


「僕の名前はアレンっていいます」


「アレン、アレンね… アレン!私の弟子になって!」


会場が更なる響めきに包まれる

そりゃそうだ、王都に店を構える天才料理人から直々に弟子のオファーだ


「申し訳ないですが お断りさせてください」


ルエルさんが驚いた顔をする


「な、なんで? 私ときたら最高の料理人になれるよ?」


「その話も魅力的です ですが僕は冒険者です 大切な仲間を置いていけません」


「……そう、わかった 残念だけど諦める

代わりにこれあげるね」


ルエルさんが自分の髪飾りを僕に投げ渡す


「これは?」


「私が認めた証 今度王都にきたらそれ見せて

特等席を用意する あ、札あげなきゃ」


そう言ってあげた札には「10」の文字が!

よっしゃ! 一歩前進


「ありがとうございます」


僕はルエルさんに頭を下げる


「ん、正当な評価 アレンは面白い」


「おお〜っと! またしても10点が出たぞ!!

さぁさぁ、最後はサバナドゥさん!お願いします!

サバナドゥさん? お〜い? サバナドゥさん?」


見るとサバナドゥさんは俯いている

まさか!そんなに気に入らない料理だったのか!?


「………た」


ん?、なんか言ってる


「僕は!感動した〜〜!!!」


サバナドゥさんが急に立ち上がった

あれ?泣いてる!?


「こ、こんな料理、見たことも聞いたこともなかった… し、し、し、しかも、クラーケンを使ってるだなんて… 大発見だ!! この料理は革命だ!

このタレも!食材も!工夫も!そして料理も!

料理の革命だ!! 僕の研究はこの日のためなのかもしれない… とにかく感動した! え、えっと…

あ、アレン様!」


え?アレン様? どうした?


「はい? なんでしょうか…」


僕はサバナドゥさんに近づく



「こ、こ、ここに! サインしてください!!」


サバナドゥさんは着ている服を指差し、僕にペンを渡す


僕も困惑しながら、『アレン サバナドゥさんへ』

と書いてあげた


「あぁ! ありがとうございます!! この服!家宝にします! そ、そうだ札あげなきゃ! もちろんこの点数ですぞ!」


そこに書かれていた数字は『10』だった


「で、で、出ました!! 10点!!

満点だ!! ととと、ということは!

文句なしの優勝は!! 

初参加の、『仏恥義理』だ〜!!」


パーンと音がして会場に紙吹雪が舞う


「やった!やったわよ!アレン! 優勝よ!」


「やったよアレンくん! うぇぇええん!」


リューネちゃんとクリスが抱きついてきた

リューネちゃんに至っては号泣している


「負けたわ アレンくん」


声がかかり見ると、シェイリィさんが立っていた


「私も自分の渾身の料理を出したつもりよ

でも、完敗だったわ でも、不思議と悔しくないのよね、完膚なきまでの負けだったからね

ありがとうアレンくん」


シェイリィさんが手を差し出してくる


「こちらこそ、ありがとうございました!

絶対シェイリィさんのお店食べに行きますね!」


僕はガッチリと握手を交わす


「ふふっ 嬉しいわ 私、今度王都にお店を出すの

この大会はその弾みにしたかったの だから王都に来た時によってね 私もそこにいるから、来てくれたら最高の料理を振る舞うわ」


シェイリィさんとも約束をして別れる



その後、トロフィーの授与式があり賞金も少なくない額もらった なんと白金貨2枚だ

どんどん金持ちになっていくな… ちょっと怖い


大会後は街を上げての宴となった


他の参加店からお祝いの言葉をもらい


ルエルさんとサバナドゥから質問攻めにあった一幕もあった お酒を飲んで酔ったルエルさんは僕にずっと弟子になれと言ってきていた 絡み酒かい…


そして、僕らは宿に戻っていた


「おかえりなさいませ 料理コンテストの優勝、おめでとう御座います」


「ありがとうバァヤさん バァヤさんの情報がすっごく助かったよ」


「滅相もございません…」


バァヤさんは深々と頭を下げ続ける

仕事人だなぁ


部屋に戻った僕たちは、粛々と3人だけで優勝を祝った


「「「かんぱーい!」」」


「ほんと良かったわね! 私たち優勝したのよ!」


「うん! 優勝するって思ってたけど まだ信じらんないや!」


そのまま、えんやえんやと盛り上がりやがてある話題になった


「ところでアレン 次はどこに行くの?」


「たしかにね! どこ行こうね〜」


二人がここがいいかも? とか、ここは?とか話している


「みんな、ひとまず目標を決めないか?」


「「目標?」」


二人が首を傾げる


「あぁ、目標だ それに向かうように進むってのはどう?」


「なるほどね その目標に向かうルートで旅をするってことね」


「何それ楽しそう! で、目標って?」


実は前々から決めていたことがあるのだ

僕らの目標を


「それはズバリ…『王都だ』」


「王都ね シェイリィやルエルとの約束もあるしね

それにそこまでには色んな街もあるし」


「王都か〜 昔行ったきりだな〜 どうなってるんだろ? おもしろそ〜!」


リューネちゃんにとって昔とは…?


「よし、じゃあ決まり!! 『龍の止まり木』の目標は『王都』! そこに向かって進んでいこう!」


「うふふっ ワクワクするわね! まだ二つ目の街なのにいろんなことが起こってるから、暇になりようがなさそうね!」


ほんとだよな〜… トラブル気質なのかもしれない

運の値65は飾りなのか?


「ほんと! ずーっと楽しい旅になりそう!

えへへ〜 楽しみ〜」


「じゃあ今日はもう寝よう! 明日の朝次の街に出発だ!」


「えぇ、わかったわ」


「ワクワクして眠れないかもー」


遠足前の小学生か!


みんなには言ってないが、僕には王都に行く他の理由があるのだ


それは、リリのことだ


シルヴァードさんの話によると、リリは王都で保護されているはずだ


リリに一目あって、話がしたい

もし、リリが酷い目に遭ってたらどうしよう、その時は僕が助けなくちゃ


あの日、守るって決めたんだ、この度の中で成長して、もっと強くなってみせる!


僕は旅にワクワクしている二人を横目に、拳を握るのだった

読んでいただきありがとうございます!

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