第二章 冒険者編 第17話 “料理コンテスト” 2日目
段々と読んで頂いてくださる方々が増えてきています 本当に感謝感激雨霰でございます
より一層、楽しんでいただけるよう、私も邁進いたします
料理コンテスト初日の夜 宿にて………
「ふぅ… アレン お風呂上がったわよ ほんと、リューネちゃんには感謝しかないわね」
この宿にはお風呂がないので、リューネちゃんから風呂桶を出してもらい、土魔法で部屋を作ってお風呂に入れるようにしたのだ
リューネちゃん、マジ天使
「ちょっとアレン 早く入りなさいよ…ってどうしたの? すっごい考え込んじゃって…
アレン? ア〜レ〜ン?」
クリスが人差し指で僕の後頭部を突いた
「おうわっ! あぁごめん 考え込んでて聞こえてなかったよ… 明日のことについて考えてて…」
「明日のこと? 料理コンテストのことよね」
「うん、 どうしたら一位になれるかなって思って…」
「なるほどね〜 でも、お風呂で考えた方がリラックスできて、いい考えが浮かぶかもよ? ほ〜ら! 早く入ってきて!」
それもそうかもなと思い、簡易お風呂場に向かった
体を洗ってお湯に浸かる ふへぇ〜 最高だなぁ…
さてと、リラックス出来たことだし、一位奪還作戦を考えよう
僕らの料理の他との差異は2つある
一つ目はその料理の唯一性、二つ目は使っている食材が伝説の生物であること、だ
それ以上に宣伝効果と、集客効果のある戦略を立てなければ一位の『龍天正』に勝つことはできないだろう
10位以内に入ることはできるが、それではブッチギリではないのだ
お湯に浸かりながら、考える、考える、考える…
宣伝には何が必要なんだ 口コミ? ではなぜ口コミが生じるのか それには料理の唯一性のある情報が必要だ
その情報は何というものか? それは… 噂だろう
噂を立てるには…… そうか! 発想の転換が必要なんだ!
コペルニクス的転換が必要だったんだ!
僕はそのまま風呂を飛び出した
「エウレカ!! エウレカ!!」
「きゃーっ! アレン! 何してるのよ! バカ!」
「あ、アレンくん! 女の子に露出癖でもあるの!? 服着て! 服!」
あ、やべ アレンのアレンがオープンザプライスしていた
僕はいそいそとタオルを巻いた
「ふぅ〜っ 一体全体なんなのよ!? いきなり裸で飛び出してきて! くだらないことだったらもぎるからね!」
どこを?どこをもぎるんですか!? ヒュンッてなるわ
「アレンくん なんで急に出てきたか話してもらっていい? もしそれが、私たちの反応を楽しむ為だったらO・HA・NA・SHI が必要だから…」
それ、O・SHI・O・KI の間違いでは…
「ごめんごめん思い付いたことが嬉しくってさ
ついついアルキメデスっちゃったよ」
「そのアルキメデスるってのが気になるけど
明日の策が思い付いたのね」
「ちゃんとした理由でよかった! じゃあこれは必要ないね」
といってリューネちゃんは、トゲトゲゴツゴツとした、殺意盛り盛りの棒をしまった
何されるとかだったんだろ こわ
「で、何よ? その策ってのは」
「気になる〜!」
「簡単なことだったんだよ 噂だよ、噂が必要なんだ」
「どういうこと? 私たちの料理の情報なんて今日の時点で知れ渡ってるでしょ?」
「そうだよ! これ以上唯一性を持たせるには味を追加するくらいしかないよ?」
「発想を変えたんだ 噂はこれ以上ない、出てこないん じゃあどうする?
そう、作ればいいんだよ」
……………………
次の日の朝、僕は日の出前に出かけ、ある所に行って準備を整えた
この効果が出るのはすぐではないだろうが、確実に出るだろう
………………
「おはようっ! みんな起きて! 朝だよ〜」
「えっ! アレンくん 今日すっごい早起きだね!」
「う〜 アレン もう少し寝かせて…」
クリスが布団の中に閉じこもり、蛹のようになってしまった ゴアの街の早起きの反動でかいな…
とりあえず、クリスを放置してリューネちゃんと朝食を食べる
今日は卵焼きと、パンとスープだ
「むぐむぐっ アレンくんの言ってた策って具体的に何するの? 昨日はその時になったらわかるって言ってたけど」
「あぁ 実はもう僕の考えた策での、僕の動きはもう終わってるんだ だからもう、あとは待つだけさ」
「だから早起きしてたんだね〜 今日で予選が終わるから気合い入れて私も頑張っちゃお〜」
そう話していると、クリスがのそのそと起きてきた
まだ半分寝てるみたいだ
「ん〜むぅ 眠い…」
椅子に座ると、クリスは耳を下にして机に寝始めてしまった いつもの上品さのかけらもないな…
「ちょっとクリスちゃん! 起きて!起きて!
んもぉ〜 全然起きないや 食べるかな?」
そう言ってクリスの口元に卵焼きを持っていくと、パクっと寝ながらクリスが食いついた
「わっ! 食べた食べた! おもしろ〜い!」
そのままリューネちゃんはクリスにご飯を面白がって食べさせていた まるで餌付けだな
ってか、元貴族令嬢(多分)がそれでいいのか!?
その後起きたクリスが自分の朝ごはんがないと言って.リューネちゃんが若干引いていたのは言うまでもない…
そんなこともあったが、しっかりと服を着替えてコンテスト会場に向かった
……………
会場に着いた僕たちは、たこ焼きを焼き始め、最初のお客さんに備えた 最初にどんなお客さんが来るかが、僕の策において、重要なのだ
「ねぇ、アレン もう昨日の策はやってないの?それとも進行中かしら?」
「いや、もう完了したよ」
「あら、そうなの? じゃあ後は結果を待つだけってことね 期待してるわよ」
クリスはそう言って、いらっしゃいませの素振りに戻った それいるのかな?
「アレンくん そろそろです」
お、もうなのか
しばらくすると、アナウンスが入る
「レディース・ア〜ンド・ジェントルメ〜ン!!
さぁさぁ昨日に引き続き、お集まりの皆様方!
昨日の来場者数は過去最多となっております!
ありがたいございます!
さてさて、本日はコンテスト2日目、つまり、予選最終日となります!!
泣いても笑っても今日が最後です!
お客さんも、参加者の皆様も、今日でぜーんぶ出し切っちゃいましょう!!
さぁ、いよいよ2日目開幕まで〜あと5秒
5・4・3・2・1〜…」
「開幕です!!!」
ドワァッという歓声と共に客が雪崩れ込んでくる
さぁ、最初のお客さんが肝心なんだ…
「よかった! 私が一番乗りね ソースと塩を下さる?」
「は〜い! 豆銅貨4枚になります! はいどうぞ! お熱いのでお気をつけて〜 わぁ、今日も混みそうだねアレンくん! ってどうしたのアレンくん!」
僕は思わずガッツポーズをしてしまっていた
だが、まだ焦ることはできない
僕はさっきのおばさんに話を聞きに行く
「あの、すみません」
「はい、何でしょうか?」
「変なこと聞くと思うでしょうけど、旦那さんの職業はなんでしょうか?」
「漁師よ それがどうかした?」
「っ!! ありがとうございました!」
僕はウキウキと店に戻った
「アレンくん どうしたの?最初のお客さんに何か聞いてたけど ってめちゃくちゃ嬉しそうだね」
「うん そりゃ嬉しいよ 僕の策が成功した可能性が高いからね」
「っ!! うそ! 最初のお客さんが来ただけで分かるの?」
「肝心なのは誰が来たのかだよ まぁ見てなよ 効果はそろそろ出てくると思うよ」
それから、どんどんと列に人が並んでいき、昨日を遥かに超える、長蛇の列になっていった
それに、その列に並んでいる人の大半が女性だったのだ
「今日はすっごい混んでるね! 他のお店を見に行く暇がないほどだよ! これが策の効果なの?」
「うん、そうだよ 列に並んでるの女の人が多いだろ? これも策の効果だ」
「へぇ〜! この調子なら10番以内に入れるね!」
「ふっふっふ! 甘い、甘い 僕が狙うは一位!
ぶっちぎりの一位さ! まだまだこれからだぞ〜」
僕は不敵な笑みを浮かべた
その後、列は昼の最盛期を過ぎても衰えることなく続いていった
「すごいわねアレン! 列が全然途切れないじゃない! 昨日は昼を超えたら、列が衰えちゃったけど、今日は衰えるばかりか、増えてるじゃない!」
「むっふっふ〜 ここまで上手く行くと笑いが止まらんな〜! シェイリィさんには悪いけど、一位いただきますわよ! お〜ほっほ!」
そのままの勢いで、たこ焼きを売って、売って、売りまくった僕たちは、ついにその時を迎えた
「さてさて皆さまお楽しみいただけたでしょうか!
誠に残念ながら今年の料理コンテスト、予選の部は終了となりま〜す! 今日はなんと、昨日よりも来場者数が多かったそうです!!
例年以上の盛り上がりとなった今大会の優勝者が気になるところですよね!?
では皆様お待ちかね、結果発表の時間です!
まずはギリギリ出場権を手にした、10位からの発表です 第10位のお店は〜…デケデケデケ…デン!
『主婦の会』の皆様です! お袋の味がお客さんに好評だったようです!
続けまして、第9位は…」
そうして、順当に9位から、3位までが発表されていく やはり高級レストランや大手が上位だったようだ
「さて! 続いては第二位の発表です!!
第二位のお店は〜…デケデケデケデケデゲデケ……デデデン!! 『龍天正』の皆様です! 昨日までは第一位でしたが、勝負はわからないものですね〜
さてさてさて! みなさんお待ちかね!第1位の発表です!! 本日急浮上してきたお店です!
それでは発表致します! 映えある第1位で、本選に駒を進めるのはこのお店!!
ドラムロールカモンッ!!デケデケデケデケデケデケデケデケ…」
ドラムロールめちゃくちゃ長いな!リューネちゃんとクリスが祈るようにして拝んでいる
「デケデケデケ……デデデデン!!!
『仏恥義理』の皆様です! その唯一性がお客様に受けたようです! 本選でも是非頑張ってほしいですね!!
それでは皆様、明日の本選を楽しみにしていてくださいね! またね〜」
そのアナウンスが終わった瞬間、リューネちゃんとクリスが抱きついてきた
「やった!やった! アレンくん! 一位だよ一位!!」
「ほんとよね! まさか本当に一位とっちゃうなんてね!夢見たい!!」
二人が喜び合っているのを見ながら僕は懸念を抱えていた
それはシェイリィさんだ
彼女は僕らが一位になった時に、こちらを刺すような目で見てきたのだ
あれは完全に目の敵にされたな 本選は気を引き締めないと
…………………
その後、僕らは、会場の後片付けをし、宿に戻って夜ご飯を食べていた
「ところでアレンくん! そろそろ今日やった例の策っていうの、聞かせてもらっていい?」
「そうよ! 全然言ってくれないんだもん!
ねぇ聞かせてほしいわ〜!」
「僕がやったのは一つだけだよ、朝、ダレルさんのところにいって、自分の奥さんにある噂を流してほしいって頼んだんだよ」
「「噂?」」
二人揃って小首を傾げる
「それはね、『僕らのたこ焼きを食べたら大漁になった』って噂だよ」
「「え?それだけなの?」」
二人同時にそう言った 仲良しだね
「僕はきっかけを作っただけに過ぎないんだ
それが第一段階だとすると、第二段階でその奥さんがそのことを他の漁師の奥さんに話して漁師の奥さん達の中でその噂が広がるんだ
だから最初に来たお客さんが漁師の奥さんだったから喜んだんだよ」
「あ〜! だからあの時喜んでたんだね!」
「そう、これが第二段階、そして次はその噂が漁師の奥さんの中でまわっていくことで形を変えるんだ
例えば、『たこ焼きを食べると運が良くなる』とかね そしてそれが、漁師の奥さん以外のコミュニティにも伝わって広まる
これが第三段階さ
この段階を踏んだことで僕らのたこ焼きは爆発的に売れったってわけさ」
「そ、そんな単純なことで一位になったって言うの? 信じられないわね…」
「私も、正直信じられないよ… でも実際勝っちゃったからね!」
僕もまさかここまで威力を発揮するとは思わなかった
一位を譲る気はなかったけど、途中の混みようはとんでもなかった
「予選は搦手で勝てたけど、本選は完全な実力勝負だ 審査員達の度肝抜いてやろう!」
「えぇ! ここまで来たら優勝しましょう!」
「うん! ぶっちぎっちゃえ! 超特急!
だね!」
僕らは夜が深けるまで、明日の本選についての話し合いを重ねていったのだ
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