第二章 冒険者編 第11話 チート=リューネちゃん
私もリューネちゃんの料理食べてみたいです
街を出て、僕ら3人はパカパカと、シルバーに乗って歩いていた
「ねぇ クリス」
「何?アレン」
「意気揚々と街を出たはいいんだけど、僕道知らないんだよね」
「はぁ!?」
そりゃそうだろ 地図見たことはあるけど、世界地図みたいなものだし 街のことなんてオラわかんねぇだよ
クリスが呆れたと言わんばかりに、ため息をつき、眉間に指をあてる
「はぁ〜 こんなんじゃ先が思いやられるわよ…
一応私が道を知ってるから大丈夫よ だけど、次の街でちょっとお勉強よ!」
「うぇっ お勉強? 私は免除でいいよね?」
リューネちゃんが恐る恐る聞く
おいおい、原初の精霊さんが勉強嫌いでいいのか?
「だ〜め! みんなでお勉強よ! リューネちゃんだけが知らなかったら困ることがあるかもしれないでしょ?」
「も、もしかしてお勉強会ってこと? わぁ〜みんなで一緒に… えへへ〜」
筋金入りのボッチ(何十億年)にとって、勉強会は魅力的な言葉だったようだ
そんな平和な会話をしながら進んでいると、
「「「ギャギャウッ!! グルルルッ!」」」
コバルトA.B.Cが現れた
犬の魔物だ 顔コワ
僕らは急いでシルバーから降り、すぐに武器を構えようとするが
「ここは私に任せて! 久しぶりの戦闘だし、試運転しときたいの!」
と、リューネちゃんが躍り出る
リューネちゃんの戦闘を見るのは初めてだ
さて、リューネちゃんの実力は如何程に?
コバルト達がリューネちゃんに一斉に飛びかかる
リューネちゃん危うし!
「それっ!」
リューネちゃんが指を弾くと、次の瞬間、コバルト達が火柱に包まれた
燃えた跡には、彼らの魔石がコロンと3つ落ちている
「ふぅっ 久しぶりですけどちゃんとできた!
どうだった?アレンくん!」
まじかよ、戦闘は得意じゃないって言ってたけど即戦力ってレベルじゃないぞ、過剰戦力すぎる
てか、指パッチンで魔法使うってリューネちゃんは大佐なのかな?
僕は驚きの余り、言葉を失ってしまった
「か、かっこいい!! リューネちゃん! 何今の!? 指を弾いただけで消炭にしちゃったわ!
ブワーって、すごいすごい!! ねぇ、見てた?アレン!」
こっちのドリルは大興奮みたいだ 元々、魔法が好きみたいだしなぁ
「ねぇ! リューネちゃん 私も今みたいに指パチッてやって魔法使えるかしら? 」
「うん! いっぱい練習したらできるようになるよ! 教えてあげるね!」
「いいの!? ありがと〜!」
二人は手を取り合い、クルクルと回っている
クリス、忘れてるかもだがリューネちゃんは魔法歴何十億年の超ベテランだぞ…
とりあえず、リューネちゃんの実力の一端を知れた
Sランクは伊達じゃないってわけだな
………………
それから、道中現れる魔物は全てリューネちゃんによって消炭にされた しかも馬上からだ
魔物が可哀想に思えてくるよ…
段々と空が暗くなり始めたので、今日はもう休もうということになった
「じゃあ僕テント準備するね〜」
「アレンくん 住むところは私に任せて!」
リューネちゃんが胸を張ってそう言うと、自分の鞄から何か紙のようなものを取り出すと、それを開けた場所の真ん中に置いた
すると、その紙がパタパタと広がり、展開していき、やがてそれは立派なログハウスになったのだ
「じゃじゃ〜ん! お家のかんせ〜い! ビックリしたでしょ!」
まさか、テントに泊まると思ってたから、こんなしっかりした建物が出てくるとは思わなかった
「リューネちゃん これも固有スキルのやつ?」
「そうだよ! 色んなタイプの家を仕舞ってあるから、どんなとこでも快適に住めるよ!」
まじか! 本当に便利なスキルだな〜
まさに、リュネえもんじゃん!!
「ささっ! 早く入ってみて!」
中に入ると、ちゃんとしっかりとした構造をしていた
リビングキッチンの作りで、そこにテーブルと椅子が置いてある
奥には部屋があり、それぞれの部屋にベッドが置いてある さらに、トイレ、お風呂付きだ!
一家に一人リューネちゃんだな〜
「こりゃすごい… ありがとうリューネちゃん
まさかこんな快適に旅できるなんて…」
「そうよ! 今までテント暮らしが当たり前だったのに、もう戻れなくなっちゃうわね!」
「喜んでもらえて嬉しい! じゃあご飯にしよっか、私もうペッコペコ!」
「私も手伝うわ! 家事スキルの持ち腐れになるし」
「ありがとう! じゃあお願いするね!」
二人が台所に向かったので手持ち無沙汰になる
ここで僕が何もしないと、昨今の男女平等社会においては批判対象になってしまう!
そう思った僕は、とりあえず部屋の掃除でもしようと、鞄から箒を取り出し部屋を掃いてみる
しかし、どうやらチリ一つ落ちていないらしく、何も集まらないのだ
リューネちゃん完璧すぎるって…
そんな形だけの掃き掃除をしていると料理ができたらしく、二人が運んできた
後で、皿洗いは僕がやろう
「二人で作った料理よ! 早速食べましょう!」
僕達はテーブルに着席をした、テーブルは円卓なので上から見て、三角形に座る
「「「いただきます!」」」
今日のご飯は魚のソテーと、パンと野菜のスープだ
「むぐっむぐ 美味い! あぁ〜幸せってこれのことを言うんだなぁ… 二人とも、美味しいよ! ありがとう」
「うふふっ ありがとうアレン 私はちょっと手伝っただけよ ほとんどリューネちゃんが作ったわ」
「そんなことないよ〜 いつも一人で作ってたからほんとに大助かりだったよ いーなぁ… 誰かと食事するってのは…」
リューネちゃんがしみじみとそう言う
重みが違うぜ
僕たちはお喋りをしながら楽しく食事をした
「「「ごちそうさまでした!」」」
「美味しかった〜 二人にはご飯作ってもらったから、皿洗いは僕がやるよ 二人は休んでて」
二人は私たちもやると言ってくれたが、やんわりと断って休んでもらった
やがて僕の皿洗いが終わり、自然とみんながリビングのテーブルに集まった
すると、
「そういえば、聞いてなかったけど、アレンくんの固有スキルってどんなやつなの? 」
と、リューネちゃんに聞かれた
「たしかに! 私も気になるわ! ゴブリンディザスターの時は剣を持ってたし、剣系統かしら?
あれ?でも魔法も無詠唱で使ってたわよね?魔法系統なの?」
そういえば、たしかに言ったことなかったな
「僕のスキルは【剣召喚】だよ 剣を召喚できるってスキルなんだ」
「へぇ〜 そうなのね どんな感じなの?見せて!」
流石に家の中じゃまずいっしょ
「じゃあ外にいこっか ここだと危ないし」
外の開けた場所に出る
「じゃあいくよ〜」
「わかったわ〜」
「怪我しないでね アレンくん」
自分のスキル発動するたび怪我してる訳じゃないよ…
「顕現せよ 我が心剣 今その力を示せ …」
僕はミスリルの剣を召喚しようと思ったが、新しい剣が追加されていることに気がついた
「三日月!!」
召喚されたのは、剣ではなかった、それは刀だったのだ しかも鞘付きだ
僕はその刀を鞘から抜き放つと、中から美しい波紋を帯びた、刃が現れた
「すご〜い! かっこいいわねそのスキル! あれ?何その剣? 独特な形ね」
「もしや、それは『刀』なのかな? 私もあまり見たことないな〜」
二人が珍しそうに刀を見ている
身に覚えがないんだけれど…… あ!ゴブリンディザスター倒してレベル上がったのか!
そういえば、ステータス見てなかったな
僕は恐る恐る自分に鑑定をする
……………
アレン(7) レベル136
体力: 21500
速さ: 16500
防御: 9750
攻撃: 21500
魔力: 30500
知力: 12659
運 : 65
固有スキル
【剣召喚】 レベル4
{召喚可能剣: 木刀 鉄剣 ミスリルの剣 大業物:三日月}
スキル
深淵眼 レベル- 魔力支配 レベル6
剣聖術 レベル6 火魔法 レベル9
水魔法 レベル9 土石魔法 レベル3
風魔法 レベル8 光魔法 レベル9
闇魔法 レベル8 紫電魔法 レベル5
身体超強化 レベル5 気配遮断 レベル3
乗馬 レベル4 高速演算 レベル8
限界突破 レベル6 起死回生 レベル5
全経験値5倍
称号
【世界を渡るもの】 【研究者】 【世界神ストゥルドの期待】 【好奇心の化け物】 【悪魔殺し】
【厄災殺し】【ジャイアントキリング】
【ど根性】 【守人】
【勇者の卵】【魔王の卵】
…………………
うげぇ めっちゃ上がってる…
やっぱり厄災だけあって、経験値もとんでもなかったんだろう それに5倍だしな〜
どんどん化け物じみてくるよ
「どうしたの? アレンくん 何かあった?」
どうやらぼーっとしてしまったらしく、心配そうにリューネちゃんが顔を覗き込んできた
「な、なんでもないよー ささっ、家に入ろうよ
外は寒いし」
僕はそう誤魔化して家の中に入った
お風呂に入ろうってことになり順番は世界で最も公平な方法、そう、じゃんけんで決めた
その結果最初はクリス、次に僕、最後にリューネちゃんとなった
クリスが入浴しているので、リビングで飲み物を飲みながらリューネちゃんと談笑をして時間を過ごしていた
やがて、ホカホカしたクリスが上がったわよと、知らせてくれたので僕も入ることとする
お風呂場に行くと、脱衣所も広々スペースだ
服を脱ぎ風呂場に入ると、広々とした湯船が目に入る
ちゃんと石鹸も置いてある なんでもあるなこの家
流石にシャワーはないので桶を使うところだが
僕は無詠唱で魔術が使えるので、火魔法と水魔法を組み合わせてお湯を作り、それで石鹸を洗い流した
いよいよ湯船に浸かる
「ふぅ〜っ… めっちゃ気持ちいい」
思えばこの世界で湯船に浸かるようなことは無かった気がする
まるで、疲れがお湯に溶け出すかのようだった
ばばんば〜
風呂を堪能した僕は、リューネちゃんが待っていることもあり風呂から上がり 用意したラフ目な服に着替えてリビングにいるリューネちゃんに声をかけた
リューネちゃんはもパタパタと風呂場に向かったのを見届けて今度はクリスとお喋りをする
「お風呂めっちゃ気持ち良かったね」
「ええ、ほんとよね 私も実家にはお風呂があったけど、冒険者になってから入ったことなんてないもの
リューネちゃんには感謝しかないわね…」
そのことに激しく同意だ まさかここまで快適に過ごせるとは
「ねぇ、アレン 私の家のことって… 気になるかしら」
クリスが俯きながらそう言う
「気にならないわけじゃないけど クリスがはなしなくないなら話さなくていいんだよ
誰にでもそんなことはあるよ」
「そうね… ありがとうアレン 私の決心がついたら聞いてくれるかしら?」
「うん 勿論だよ あ、でもリューネちゃんも一緒にね 仲間外れにされたら怒っちゃいそうだから」
「ふふっ それもそうね」
クリスは憑き物が取れたかのように、スッキリした顔で笑った
「ふぅ〜 上がったよ〜 あ、何楽しそうに話してるの? 私も混ぜて!」
風呂から上がったリューネちゃんも、お喋りに参戦し、3人でたわいもない話をした
この3人ならば楽しく旅を続けられる、そう確信した夜だった
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