第二章 冒険者編 第10話 旅立ち
リューネちゃんが真のチートなのでは?
やった!リューネが仲間に加わった!!
僕の存在を何十億年も待ち続けた女の子を見捨てることは出来るわけがなかったのだ
「えっと〜 リューネちゃんは私たちのパーティに加わったってことでいいのよね?」
今まで蚊帳の外だったクリスがそう聞く
「はい! クリスさんもよろしくお願いしますね!
あと…これを機に、敬語をやめて会話しませんか…?
えっと…仲間、なんですし ダメですか?」
クリスが微笑えむ
「いいえ そうね 私たちは仲間なんですもの
これからは対等な関係として一緒に頑張りましょうね リューネちゃん」
「はい! えっと… 頑張ろうね! クリス」
二人はニコニコと笑い合っている
うん、この二人も仲良くできそうだ
「そうだ アレンもリューネちゃんに敬語使うのやめなさいよ 仲間だもん」
「そうですよ! あっ違う… そ、そうだよ アレンくん! 私もアレンくんと気軽に話してみたいよ」
女の子二人から詰め寄られる
その圧には勝てんばい
「わかったよ リューネちゃん これからは仲間だもんな 色々これから頼ると思うからよろしくな」
「はい! 仲間なんだし!どんどん頼ってね!
えへへ〜 仲間か〜」
リューネちゃんは仲間という響きが余程気に入ったらしい
そりゃそうか、何億年も孤独に待っていたのだから
そういえば宿はどうするんだろ?
「リューネちゃんは僕らの旅についてくるってことだけど
この宿はどうするの?」
すると、リューネちゃんはいたずらっ子の笑みを浮かべながら
「それは、明日のお楽しみだよ〜!」
と言った
どないするんだろ? 楽しみだ
「さてっ! 私も泣き疲れてお腹空いちゃった〜 ご飯作っちゃうね!」
と言ってリューネちゃんはいつものように奥に引っ込んでいく
てかパーティーにリューネちゃんが加わるってことは、毎日美味しいご飯が食べられるってこと!?
まじで誘えてよかったわ〜 もしそうじゃなかったらリューネちゃんのご飯欠乏症になってた
「ねぇアレン ちょっと聞きたいんだけど」
「どったの?」
「リューネちゃんって戦闘できるのかしら?
ほら、あんなに小さいじゃない? だから心配になっちゃって」
「たしかに… 後で聞こうか」
そう話していると、奥からお盆をもってリューネちゃんが料理を運んでくる
僕も料理を持って、運ぶ手伝いをしてあげる
「え、いいよ〜 座ってて! アレンくん」
「今度こそ手伝わせてよ ほら、もう仲間だろ?」
「な、仲間! そうだよね〜 えへへ〜 じゃあお願いしちゃうね〜」
今回は3人で手分けして料理を運んだ
てか、ほんとに仲間って単語に弱いな リューネちゃん…
食事はちゃんと3人分あった
リューネちゃんも食べるのだろう
改めて、宿主と宿泊客では無くなり、仲間になったんだと実感する
「「「いただきます!」」」
3人で一斉にかぶりついた
今日のメニューは鳥肉のステーキだ
噛むたびに肉汁が溢れ出し、とてもジューシーだ
あぁ、めちゃくちゃ美味い…
リューネちゃんは小さな口で必死に食べている
リューネちゃんの食事シーンを見るのは初めてだったので、つい見つめてしまう めんこいなぁ…
「もぐもぐっ アレンくん どうしたの? さっきから見つめてきて」
「いやリューネちゃんが食事しているの見たの初めてだったからさ 珍しいなと思って」
「そ、そうなの… あ、あんまり見つめられると、そのっ…恥ずかしいよ…」
と、顔を赤くする
おい、あの可愛い生き物はおいくらなんだい?
え?もう僕のパーティーメンバー? やっほい
今日はリューネちゃんも含めてみんなで話しながら食べた
やっぱりみんなで食べると美味しいね
食事を食べ終わった僕たちは、それぞれ食器を下げ、自分で洗った 仲間ですしお寿司
その後僕らは今後の話し合いとして、テーブルに集まる
「えーこほんっ それではこれより第一回パーティー会議を始めたいと思います 拍手〜」
クリスとリューネちゃんがキョトンとしながら拍手をした
「まずは最初の議題です それはズバリ、リューネちゃんは戦えるのか問題です」
リューネちゃんが、自分が議題に上がったことでビクッとする
「えっと 結論から言うと戦うのは得意じゃないけどできるよ 昔は冒険者してたこともあるんだよね
もう昔の話だけど」
そうか、異世界人の魂を探すための旅の過程で冒険者になってたのか リューネちゃんの昔って、何千年前じゃ効かないよね?
「なるほど、では戦闘は可能、と言うことだね?」
「うん、そうだよ〜 一応、当時の冒険者カードもあるしね」
と言ってポケットからカードを取り出すが、今とデザインが全然違う 何か真っ黒いカードだ
「ま、まぁ一応明日ギルドに行って、使えるか確認しようね さて、じゃあ次の議題はとっても重要です
それは… このパーティの名前をどうするのか問題です」
オーディエンス(クリスとリューネちゃん)も、なるほどと頷く
「そうね 確か二人パーティなら付けなくてもいいけど 3人以上になると名前つけなきゃだもんね」
そうなのだ、2人パーティの場合、名前は付けても付けなくても良いが、3人以上なら、義務化してしまうのだ
「そうなんだね〜 私の頃はそんな制度なかったな〜」
リューネちゃんが遠い昔を回想する顔をしている
それって何億年前でしょ? 地球なら恐竜いるんじゃない?
「で、どうやって決めるのかしら? アレン」
ふっふっふ、抜かりなしよ…
僕は二人に紙とペンを渡す
「第一回パーティー名はな〜んだ!! ドンドンパフパフ!」
二人がぽかんとする おいおい寂しいじゃないの
「何よそれ? 何するの?」
「簡単に言えば、各自その紙に名前を考えて書いて、それを発表して多数決です」
「なるほど! じゃあ私、かっこいい名前考えるよ! 期待しててねアレンくん!」
リューネちゃんがふんすっと意気込んでる
めんこいねぇ… おじちゃんが何でも買ってあげるよ…
各々がうんうんとしながら考えている
さて、僕も考えようかな〜 って言ってももう答えは出てるんだけど
僕は、僕の案をサラサラと紙に書くき終わって、周りを見ると、みんなペンを置いていた
どうやらみんな描き終わったみたいだね
「みんな書き終わったね? じゃあ誰から発表してもらおうかな?」
「はい! はい! 私! 私!」
リューネちゃんが必死に手を挙げている
よほど自信があるのだろう
「じゃあリューネちゃん どうぞ!」
「やった! みんなあまりのかっこよさにびっくりしちゃうよ!! じゃじゃ〜ん!」
そう言って見せてきた紙には漢字が書かれていた
えっと?『仏恥義理』? なんて読むんだ?
「私の案は『仏恥義理』です! どう?かっこいいでしょう!」
と、フフンとドヤ顔をしている
え? リューネちゃんの感性ってヤンキーなの?
ちょっとおじさん困っちゃうな
「い、いいんじゃなくって! とっても素敵な名前よ! えっと…次は私でいいかしら?」
「いいよ、次はクリスね」
「ふふんっ、私の名前の格好良さには勝てないよ!なんてったって、『仏恥義理』だもんね!」
リューネちゃん、落ち着こうね
「私の案はこれよ 『† 厳格なる能天使†』 と書いて、『ストリクト・エクスシア』と読むわ
ふっ、かっこよくて声も出せないようね」
クリスもか… 9歳で厨二病発症してない?
なんだその†は、つけなきゃダメか?
「じゃ、じゃあ最後は僕だな 色々考えたんだけど、やっぱりこれかなって」
そう言って僕は書いた紙を二人に見せる
「アレン これって…」
「アレンくん この名前は…」
「「ここの名前じゃない(だよ)!?」」
そう、僕の案はこの宿の名前
『龍の止まり木』なのだ
「僕たちが出会ったのもこの、『龍の止まり木亭』
だろ? リューネちゃんは僕らのパーティーに入るわけだし、ここが無くなるのは嫌なんだ
だから、パーティーの名前にしたいなって思ったんだ」
「アレンくん… 私の宿のためにそんなことを考えてくれたんだね」
その後多数決を取り、全会一致で、僕らのパーティー名は『龍の止まり木』に決定した
「さてと、最後の議題かな
最後は、次、僕たちはどこに向かうか問題です
明日、僕はこの街を出て次の街に行こうと思ってます みんなの案を聞かせてください」
「うーん ここから近い街ってなると、『ドラムの街』と、『コリュシュッド街』ね リューネちゃんは何かあるかしら?」
「私、ここら辺の街の名前、あんまりわからないんだよね〜 すぐ変わっちゃうから、覚えてられないんだ〜」
そりゃそうだろう、何億年の間に街の名前も変わるだろうに
「そっか〜 クリス その二つの街の特徴ってわかる?」
「そうね〜 私も少し知ってるくらいよ
『ドラムの街』は高い山に面して作られている街よ、確かその山の魔物が強かった気がするわ
『コリュシュッド街』は海のある港町よ 海鮮が魅力の街ね」
なるほどな、どっちも違う意味で魅力的だ
「距離はどうなの? どれくらいかかりそう?」
「同じくらいだと思うわ、馬で4日歩けば着くところよ 途中で別れ道があって、右が『ドラムの街』
左が『コリュシュッド街』よ」
別れ道を進んだらそれぞれの街ね… そうだ!丁度いい、あの方法があるじゃないか!
「みんな 僕から提案があるんだ 僕らの行き先はその分かれ道で決めないか?」
「あら アレンにしては博打を打つじゃない
そうする何かがあるってことよね?」
「あぁ、実はそのような場面で確実に僕らの行き先を良い方向に決めてくれる道具を持ってるんだ」
「え!何それ! 私そんなの生まれてから見たことないよ! 見せて!見せて!」
リューネちゃんが詰め寄ってくる
「フッフッフ それはそこでのお楽しみってやつさ」
さっきのリューネちゃんへのお返しだ
本日の議題を消化し切った僕たちは、そのまま各自の部屋に行き、寝たのだった
………………
朝日と共に起床する
身支度を整えて、リビングに向かった
いつものように、リューネちゃんがテーブルを拭いて待っていた
「おはよう リューネちゃん やっぱり早いね」
「おはよう! アレンくん! やっぱり癖で起きちゃうんです」
テーブルに座っていると、パタパタとクリスが起きてきた
今日もナイスドリル
「ふわぁ〜あ おはよう アレン リューネちゃん」
「おはようクリス ちゃんと寝れたか?」
「最近、前まですっごく早起きしてた反動で朝眠いのよ…」
「そうなんだね じゃあ、とりあえずご飯にしよっか」
これから毎朝リューネちゃんのご飯食べられるのか
最高では?
3人で朝食を食べる 今日も大満足だ
食器を片付けた僕たちは3人で外に出る
「じゃあギルドに向かおうか リューネちゃんの冒険者カード使えるか見るのと、パーティー登録しないとだし」
「そうね 行きましょう」
僕らは3人でゾロゾロとギルドに向かう
ギルドの扉を開ける 今日もルカさんか
「おっはようっす!! お二人さん! ってあれ?今日は3人すね? 誰すかその子迷子すか?」
ルカさんが首をかしがる
「いや、この子は僕らの新しいパーティーメンバーですよ この子の冒険者カードがちょっと古いから使えるか確認してもらっていいですか?」
「えっ! この子がっすか? どう見ても五歳児くらいっすよ? でも、冒険者カードねぇ ここ数百年はデザイン変わってないんすけど… ま、いっすわ 見せてほしいっす」
リューネちゃんがカードを渡す
「ななっ! ブラック… いやいや、昔のカードのデザインが違かったんすね〜 多分使えるっすよ
その子の血を垂らすと、更新されて今のカードにデザインが変わると思うっす」
へー便利だな やっぱりギルドカード半端ないって
ルカさんが針をもってくる
「ささっ! ちくっとやっちゃってくださいっす」
見るとリューネちゃんがちょっと震えている
針が怖いみたいだ
「あ、アレンくん 手を握っててもらえない?」
僕はリューネちゃんの震える手を握ってあげると
意を決したように、プスッと針を指先に刺した
そして、出てきた血をカードの窪みにつけると、みるみるとカードのデザインが変わった
「おお〜っ!最高っすよ! どれどれ〜
『リューネ Sクラス』 へーリューネちゃんってSクラスなんすね〜 …… えぇっ!! Sクラス!!」
ルカさんが飛び上がって驚いた
「リューネちゃんってSクラス冒険者だったんだね…」
「でも 昔のことだよ 時間はあるだけあったから、暇つぶしにランクあげてただけだよ」
普通暇つぶしでSまで上がらんて… とんでもない拾い物かもしれん
「お、お見それしたっす〜 いや〜Sランクのカード見たの初めてっす! みんなに自慢するっす」
その後、リューネちゃんのパーティ登録もして、パーティの名前を『龍の止まり木』にした僕達はルカさんに街を離れることを伝えた
「やっぱり街を離れるんすね〜 いや〜寂しくなるっす! あ!そうだ、ギルマスからこれ預かってるっす」
そう言ってルカさんが持ってきたのは、大きな箱と手紙だった
大きな箱を開けてみると、中身は前に武器屋で見た、ジャイアントロイヤルバットの軽装だった
手紙を見てみるとこう買いてあった
『やっほ〜 リビエラちゃんだよ〜
この手紙を見ているってことは、アレンちゃんはこの街を離れるって決めたことだね?
私からのプレゼントは気に入ったっしょ?
この街を救ってくれたことに対する、私からの御礼の気持ちだよ、大切に使ってね
あと、この手紙の他に私からの推薦状があるから次の街のギルマスに見せたらイチコロだよ!!
次の場所でも頑張ってね! リビエラちゃんとの約束だよ?
ps. クリスちゃんとはほどほどにイチャつきなね
リビエラちゃんより』
と、書かれていた
この装備はリビエラちゃんの感謝の証なのか、大切にしよう
色々と、便宜を図ってくれたみたいだな
推薦状も、あるのと無いのとでは大違いだろうな
最後のだけ蛇足だけど…
「あのリビエラちゃんは、今どこに?」
この手紙を残すってことはいないのだろう
「あぁ、ギルマスなら そこの柱の影でアレンくんの様子見てるっすよ」
最後まで締まらない人だ…
…………………
その後、リビエラちゃんに感謝と少しの文句を言ってギルドを後にした
「さてと、これで正式にリューネちゃんが僕らの仲間になったね 改めてよろしくね」
「そうね! この3人なら楽しく過ごせそうよ!
よろしく! リューネちゃん」
「はい!よろしくね 二人とも!」
宿の前に着いた さてさて、一体この宿をどうするんだろう
「リューネちゃん宿はこのまま置いていくんですか?」
「いいえ あ、馬房からシルバーちゃん出してきてもらっていい?」
ん?どうするというのだろうか とりあえずシルバーを出してきた 今日も凛々しいね
「じゃあちょっとみんな下がっててね えいっ!」
そう言ってリューネちゃんが指を弾くと、宿がパタパタと畳まれていき、やがて小さなボストンバックになった それをリューネちゃんがヒョイっと持ち上げる
「ふぅっ さて!いきましょうか!」
「まってまって! 何今の!? 宿仕舞ったの!?」
「うん! そうだよ〜 私の固有スキル【家事神】を極めるとできるの!」
リューネちゃんがどやっと胸を張る
固有スキルは奥が深すぎる、極めるとこんな規格外なことできるのか…
「ねぇ! リューネちゃん! 私のスキルも家事系統なんだけど 私も極めればできるかしら?」
「うん! きっとできると思うよ! 一緒に特訓しよっ!」
二人はキャイキャイと手を取り合っている、二人が仲良しでよかったよ
僕らは少ない荷物をシルバーに乗せて、自分たちも乗り込む
前は僕で後ろにクリスが乗り、その間にリューネちゃんだ
3人乗ってもシルバーは力強く歩を進めていく
「さぁ 次の場所に出発だ! レッツゴー」
「「オーッ!」」
二人が拳を振り上げる
これからますます楽しくなりそうだ
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