第二章 冒険者編 第9話 クリスティーナの今後と、リューネの今後
リューネちゃんのことは気になるが、とりあえず今はクリスの件が咲きだ
一体クリスもなんの用があるのかな? それも気になるところだが
そんなことを考えていると、いつのまにかギルドの前まで来ていた
ドアを開ける 今日の受付はルカさんだ
「おっはよ〜っす! お二人さん! あれれ〜もしかして一緒に来たんすか〜? 若いなぁ〜
昨日はお楽しみでしたっすね!」
若いなぁって 僕たち9歳と7歳ですよ?
お楽しみなわけあるか!
すると
「ルカさん? 御冗談はその辺で勘弁してくださらない? 急で申し訳ないんですけれど、ギルドマスターにアポイント取ってくださる?」
と、クリスが笑顔で言う 笑顔なのに怖いよ!
「じょ、冗談っすよ〜 ギ、ギルマスに聞いてくるっすからちょっと失礼っす!」
ルカさんが逃げるように去っていった
ありゃ、完全にぶるってんな〜 九歳児にビビる大人って…
しばらくすると戻ってきた
「ギルマスが 『今暇だから遊びに来て』だそうっす!」
軽いな〜 このギルド大丈夫かな?心配になるよ
とりあえず、許可は降りたのでクリスと二人で向かう
ルカさんは仕事が忙しいからと断ってきた、日和ったな
ギルドマスターの部屋の前までいき、クリスが扉を叩く
「クリスティーナです 入ってもよろしいですか?」
「いいよ〜 はいってー」
と、軽い声が扉の奥から聞こえる
「失礼します」
扉を開けるとリビエラちゃんが立っていた
今日もギャルギャルしいぜ!
「やっほー リビエラちゃんだよ〜 んで?クリスちゃん私に何か用があるんでしょ?」
すると、クリスが腰を90度に折り曲げ、最敬礼をする
「本日は私のために貴重な時間を割いてくださりありがとうございます 本日は私の処罰について話があって参上いたしました」
こっちは固すぎだな、二人を足して2で割ればいい感じなのでは?
「ちょっとちょっと! 頭上げな〜 クリスちゃんはちょっち肩の力を抜いた方が吉よ で、話とはなんぞや?」
「はい… 昨日から私はどうやったら償えるのか考えていました 私の罪は許されざる物であり、アレンのお陰で罰が消えても罪は消えません
今日は私の出した、償いの答えを承認してほしいのです」
なるほど、そういうことか
多分、クリスはボランティアみたいなことをして、償いの時間にするんだろ で、ある意味当事者の僕と、一応、責任者のリビエラちゃんに承認をもらうってわけね合点よ!
じゃあクリスが提案したら、すぐさま了承してあげよう 少しでも罪の意識軽くしてほしいしね
「その償いの内容は…」
来たっ!
「アレンの冒険者生活の手伝いをすることです!」
「勿論!僕は賛成っ… え?」
今、なんて? 僕の手伝いを?
「なるほどね! クリスちゃんは自分の起こしたことでランクを上げられなかったアレンちゃんの手助けをして、早くランクを上げられるようにするってことね! ナイス償いだよ! 30リビエラちゃんポイント贈呈! アレンちゃんも賛成みたいだし!
私ももちろん承認するよ!」
「ありがとうございます! 失礼します!」
僕は口を開けて放心状態のまま、クリスに手を引かれ外に出た
「ふぅっ… とっても緊張したわ… でもよかったわ! アレンが賛成してくれるなんて! これから頑張りましょ! ん?アレン? お〜い」
クリスが僕の顔の前で手を振る
「はっ! あれ?ギルマスの部屋は? 廊下?」
「ちょっと大丈夫?アレン はっ、もしかしてもう嫌になっちゃったの? うぅぅ〜…」
クリスが潤んだ瞳で上目遣いでこちらを見てくる
くそっ卑怯だぞ その技は僕に効く…
「い、嫌じゃないさ もともと仲間は欲しかったし クリスが仲間になるなら大歓迎だよ」
そうなのだ、最初から仲間を集めることも計画に入っていたのだ それが多少早まっただけだ
やったぞ! クリスティーナが仲間になった!
「じゃあ これからよろしく! クリスティーナ!」
僕はクリスに手を差し出す
「えぇ! こちらこそよろしく! アレン!」
その手をクリスが握り、硬い握手を交わした
これから二人で、なんとかやっていけそうだ!
「あの〜 二人とも良いところを邪魔してまじめんごなんだけど… ここ、ギルマスルームの目の前なんだよね…」
前言撤回、先が思いやられるかも…
……………
その後、僕らはルカさんのニヤニヤとした目線に耐えながら、正式にパーティー登録をして、ギルドを後にした
よし、次は最後の謎 リューネちゃんだ
テクテクと歩き、宿に着く
帰ったら無くなってるなんてことはなく、ちゃんと認識できていたので安心した
ちゃんと外には『龍の止まり木亭』の看板があり、クリスが驚いていた
僕らは宿の扉の前に立った
かつて、これほどまでに緊張する宿の扉があったろうか?
意を決して扉を開ける
「おかえりなさい! 二人とも今日は早いですね」
よかった ちゃんとリューネちゃんがいる
「ただいま!リューネちゃん 今日はちょっとリューネちゃんに用があってね」
リューネちゃんがコテンと、首を傾げる
「用ですか? 何でしょう!」
「リューネちゃんにちょっと聞きたいことがありましてね…」
僕とクリスは頷き合う
「リューネちゃんって一体何ものなんですか?」
すると、
「あ〜 バレちゃいましたか…」
と、悲しげな表情でリューネちゃんが呟く
「いつから気がついてたんですか? この宿がアレンくん以外の人に、認識されてないって」
「小さな違和感は感じてました でも、決定的だったのが、クリスがこの街には宿は4つしかないって言ったことです
最初はクリスが冗談を言っていると思いました
けど誰に聞いても、宿は4つって言うんですよ
そこで確信しました
一体どうして、そんなことをしてるんですか?」
すると、リューネちゃんは遠くを見るような顔をした
「うーん とりあえず座りませんか?
その理由について長い話になりそうです」
促され、僕はテーブルのいつもの席に座り、クリスは僕の隣、リューネちゃんは前に座った
「さてと、どこから話しましょうかね
皆さんはこの世界がどうできたか知ってますか?」
その話は家の本に載っていた
「確か、創造神が無から世界を一人で作り出したんですよね?」
「はいその通りです
私は創造神様が世界を作った次に作られました
その役割は魂の管理です」
すると、クリスが驚きの声をあげる
「うそっ! てことはあなたは…」
え?僕ピンともきてないけど? 置いてかれてるわ
「はい アレンくんにはドワーフ族だって嘘をついたんですけど、私は精霊、原初の精霊のリューネです」
ビッグネームっぽい! 原初の精霊か? 尚更なんでこの街に?
「私は生み出された瞬間から自分の職業を理解していました だから生まれてから、何億年間も自らの職務を全うしていました
人の感覚だと長いように思うかと思いますが世界の感覚だと短いです 人で言う、世界が赤ちゃんだった時に、あるイレギュラーが起きました
それは異世界からの魂の流入です」
ん?なんかこの話聞いたことがあるような…
「今から何十億年前、まだ今より人類の発展がなされていなかった時に異世界から魂が流入し、世界のエネルギーが不安定になってしまいました
入ってきたエネルギーが少しでも、大きな影響が世界に起こるのです
だから、当時の魂担当の私は考えました
どうにかして、余分なエネルギーを消費できないかと
私はある方法を思いつきました
それは、その魂を転生させ、巨大なスキルを持たせる、というものでした」
あ!この話はストゥルドが言ってた何十億年前に起こった魂流入事件だ つまり、リューネちゃんの話してるのは僕の先例なのだ
「私はその案を実行し、その魂をある男の子として生まれ変わらせました
私は彼がより長く生きて、エネルギーを出来るだけ消費しようと、姿を見せずに、時に助言をし、時に励まして監視していました
彼は私のことを妖精さんと、慕ってくれていました
彼はすくすくと育ち、やがて冒険に出ました
その時くらいから、私にとって、彼の冒険を見るのが楽しみとなっていました
彼は仲間を集めながら、強くなっていき、やがて当時の魔王の城に攻め込みました
つまり、勇者になっていたのです
しかし、彼は魔王を殺さなかった、いえ、殺さなかったんです
なぜなら当時の魔王はまだ幼く、実際に侵攻していたのは大臣のような人たちでした
彼はその魔王を保護することにしました
やがて、魔王は麗しい女性へと成長していきました
そして、二人は恋に落ち、子供を3人設けました
ですが、どちらの種族にも追われている彼ら家族は、ある小さな島に移り住み ひっそりと家族で幸せに暮らしていました ですがっ!」
突然リューネちゃんが拳をギュッと握りしめた
その拳から血が垂れている
「当時神だった、ある男が下界に干渉し、彼の住む島の場所を、両種族に漏らしたのです!
その結果、家族は両種族から同時に襲撃に遭い
子供だけは逃がせたものの、妻の魔王は死に、彼も虫の息でした
私は彼だけでも助けたいと思って神からの規則を破ってしまいました
それは彼の魂への違法な干渉、および下界への顕現でした
私は彼の前に初めて姿を表しました
彼は妻の亡骸を抱きしめていました
彼は私に気づくと、私をあの精霊だと理解しました
私は彼の魂に干渉し、死を書き換えようとしました
けれど、それは彼自身によって止められました
それは、妻と一緒に死にたいからでした
彼は最後にこう言いました
『俺の命を救う代わりに もう、俺のような奴が来ても不幸にしないでやってくれ』と…
天界に戻った私に待っていたのは処罰でした
その内容は、魂への干渉権剥奪、魂の管理者の役割を外し、下界へ落とす というものでした
殆どの力を失い、下界に降りた私は彼の言葉通りに彼のような転生者を探しました
天界の情報が入らない私に取れる手段は一つ、歩いて探すだけでした
だけど何億年探しても見つかりませんでした
そこで私は考えたんです そうだ待てばいいんだって
そう決めた私は宿を開きました
それがこの【竜の止まり木亭】なんです
私はこの宿に強力な認識阻害をかけました
彼の魂の波長に合う人以外には認識できないようにしていました
私はこの宿で一人で何億年も待ちました
たまにお客さんがきて、この度に期待して出るんですが、みんな彼の子孫でした」
なるほど、だからこの宿を経営してるのか
僕が認識できたのも、魂の原産が異世界だからだろ
う
「私は待ちました 待って待って待ち続けました
もう来ないんじゃないか 彼のような人は来ないんじゃないか、そう思っていたら、アレンくん、貴方が来たんです」
リューネちゃんの顔は泣いていた
「私、すっごい嬉しかったんです…
一目でわかりました、あぁこの人だ この人が私の追い求めていた人なんだなって
でも同時に怖かったんです、またあの結末を迎えてしまうかもしれないって
だから私は努めて、普通にしようって、感情を押し殺して対応していました
アレンくんは私のことをただの宿の宿主だと思って旅立ってくれればそれでいいって思うようになったんです
でも、アレンくんがゴブリンディザスターと戦って、帰ってこなかった時、すっごくすっごく…後悔しました
私のせいだ、私がアレンくんに何も言わないで手助けもせずに行かせたからだって自分を責めました…
アレンくんがもしかしたら死んじゃったかもしれないって思うと、胸が張り裂けて死んでしまいそうでした
だから、貴方が帰ってきてくれた時、とっても安心してつい大泣きしてしまいました 恥ずかしかったんですよ…
あと、嬉しいこともありました、アレンくんが私のために花を贈ってくれたことです
精霊として生まれて何十億何経ちましたけど、誰かから贈り物をされるのは初めてでした
アレンくんは私に初めてプレゼントしてくれた人なんですよ」
そう言ってリューネちゃんは笑った
「ふぅっ… これが私がどうして認識阻害をかけていたかの理由です 蛇足なことも話してしまいましたね 」
「いえ、無駄なんかじゃないですよ リューネちゃんのことが知れてよかったです」
「そう言ってもらえて私、とっても幸せです
じゃあちょっと外の風で涼んできますね」
そう言ってリューネちゃんは立ち上がろうとする
「待ってください リューネちゃん」
「はい なんでしょうか」
「このまま出て行くつもりですね?」
「え、何言ってるのよアレン! そんなわけ…」
「アレンくんには叶わないですね」
リューネちゃんは優しく微笑んでいる
「どうして黙って出ていこうとしたんですか?」
「それは… 私がいたらアレンくんの邪魔になってしまいます 何十億年前から探してる人なんて変ですよね… だから私はアレンくんの前から消えます」
「リューネちゃん自身はどうしたいんですか?」
「え?」
リューネちゃんが動揺する
「もう一度聞きます…リューネちゃん自身はどうしたいんですか?」
「そ、それは…」
「この宿から連れ出してもらいたい、そうなんじゃないんですか?」
「そ、そんなことないです 私は本心から貴方の前から消えて、負担になりたくないって思ってるんです!」
「じゃあどうして! いつもいつも玄関先で待ってたんですか!?」
リューネちゃんがハッとした顔をする
「それは、出迎えるためで…」
「いや違います! 誰かから連れ出してもらうため、それを期待していたから入り口の側にいたんです」
「だったらどうしろっていうんですか!! 貴方についていってもどうせすぐに死んじゃうくせに!!
もう、もう誰かを失うのは嫌なの!!
失うくらいなら、いっそ最初から持たない方がいい!!」
「じゃあ、じゃああの彼のこともそう思うんですか!? 最初から出会わなければよかったって!」
リューネちゃんが崩れるように這いつくばる
「そ、んなこと… 思うわけ…ないじゃないですか!! 何十億年経っても思い出せるの、彼の顔も、笑顔も、怒った顔も、泣いた顔も!!
そして…最後の死顔も…」
「じゃあ僕がそれを上書きしてあげますよ!!
リューネちゃんを呪縛から解き放ちます!」
「そ、そんなの無理ですよ… 出来っこないです…」
「諦めるんですか!! 僕は何十億年ぶりのあなたの待ち人です そして、最初にプレゼントを送った人です 僕と行きましょう!! 僕が貴方を記憶という呪縛から解き放ちます 絶対後悔なんてさせません」
僕はリューネちゃんに手を伸ばす
「でも、でも…」
「僕は前のような結末にはなりませんよ
だって今回はあなたがいるから 前回は顕現出来なかったリューネちゃんが僕の隣でサポートしてくれるから!! 僕の手をとってください!
僕を選べ!! リューネ!!」
「ほんとに?ほんとに信じていいの?」
「えぇ 信じてください 絶対に期待を裏切りません」
「私結構甘えん坊ですよ? 大丈夫ですか?」
「はい いつでも甘えていいですよ」
「私がギュッてしたくなったらいつでもしていいの?」
「いつでもどうぞ」
「ありがとうアレンくん 私を信じてくれて、私もあなたに応えたい、あなたのためになりたいって思えました 私はあなたのために今後生きて行きます」
リューネちゃんが僕の手を握った
「これからよろしくお願いしますね アレンくん」
その顔は、眩しいほどに輝いた笑顔だった
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