第二章 冒険者編 第8話 クリスティーナの罰
自分の想定通りに話は進まないですね
パチっと目が覚めた、目に飛び込んできたのは天井から吊り下がっている天幕だ 病院?
「知らない天井だ…」
今回ばかりは本当に知らない天井だわ
え?毎回言うのかって? 言いたくならない?これ
あ、ならない? そうですか
僕はいつもの服ではなく、入院患者のような格好をしていた
おそらくまた戦闘の疲れで眠ってしまったのだろう
ふと、体を起こそうとすると膝のあたりが重い
不思議に思って見ると、金髪ドリルが僕の膝に突っ伏して寝ている
この見事なドリルはクリスティーナだろう
ぐっすりと眠ってるとこ悪いが、状況を確認したいので起こしましょうかな
「あの〜 クリスティーナさん? 起きてくださいよ」
そう言ってゆさゆさと揺すると
「はっ! 起きてるっ起きてます! あれ?
アレン!!」
と言って僕に泣きながら抱きついてきた これもデジャブな気がする てか、こいつどんな風の吹き回しやねん
「うぅっ よかった〜… このまま目覚めないかと… ぐすっ」
「落ち着いてください〜 状況を確認したいんですけど…」
「はっ! 私ったら… ごめんなさい! あぁ恥ずかしい!」
と言ってクリスティーナが、僕からズザザっと距離をとって 手で顔を覆ってしまう
また耳まで真っ赤ですぜ
「あの〜 僕どれくらい寝てたんですか?」
まさか、また三ヶ月とか?
「え! えぇっと アレンが寝てたのは一日よ
だから今日はあのゴブリンディザスターが倒された日の次の日よ」
よかった〜、一日で済んで 三ヶ月は洒落にならんて
僕はほっと胸を撫で下ろす
「ギルドの様子は? どんな感じです?」
「えっと昨日はアレンの功績にあやかって、みんなで酒盛りをしてたわ だから多分みんな酔い潰れてるわ」
あの人達らしいや きっかけさえ有れば飲みたがる人種だしな
するとバンっと扉が開き、ルカさんが入ってきた
「アレンくんの声が聞こえたっす! やっと起きたんすね! いや〜よかったよかった」
と言って ルカさんはハッハッハと笑っている
元気な人だなぁ
「ご心配をおかけしました おかげさまで目覚められましたよ」
「ほんと心配したんすからね〜 さてと本題っす!」
げ、絶対めんどいぞ
「ギルマスがお呼びっす!」
………………
僕は病み上がりの体だったが、何の不調もなく体が動いたので、自分の足でルカさんと三階まで行く
途中でギルドのホールを通ったがみんな酔い潰れて眠っていた 酒くせぇ…
そして、ギルドマスターの部屋の前につく
ルカさんが、コンコンと扉を叩く
「ギルマス アレンくん連れてきたっす」
「はいっていいよ〜!」
と、中からいつも通りの声が聞こえてきた 今日も平常運行だ
「失礼するっす」
中にはリビエラちゃんが椅子に座って待っていた
「まずはアレンちゃん 目覚めてよかったよ 結構危なかったんだからね!」
「はい ご迷惑おかけしました」
するとリビエラちゃんは椅子から立ち上がり僕の前まで来て、
「それとアレンちゃん 一人のゴアの街の住人として心から感謝します ゴブリンディザスターという厄災から単身で街を守っていただいてありがとうございました」
と言い、腰から折って頭を下げてきた
「頭を上げてください 僕はただ出しゃばっただけですよ 」
頭を上げたリビエラさんはニコッと笑った
「えへへ ありがとうアレンちゃん! ととっ、ここからはギルドマスターとしていろいろ話すね〜」
リビエラさんはこんな感じが一番だ やっぱりさっきみたいな態度はむず痒い
「えっと 今回のゴブリンディザスターの単身討伐による、街の防衛の功績により アレンちゃんのランクを二階級昇進、つまりBランクに上げます」
え? また上がんの?
「ははっ ギルマスとアレンくんには驚かされるっすね〜 今回は流石にウチも止めないっすよ!」
ルカさんは何故か胸を張っている
その時ふと、僕のことを一日中看病していたであろう、一人の女の子、クリスティーナのことを思い出した
「じゃあ! けって〜…」
「ちょっと待ってください クリスティーナにはもしかして何か処罰があるんですか」
すると、リビエラさんの顔が曇る
「うん… そうなっちゃうかな〜 ランク外の依頼を意図的に行うのは明確な規則違反だしね〜」
やっぱりそうなんだ
「具体的にはどんな処罰が? まさか剥奪!?」
「いんや 流石にそこまで重くないよ
とりあえず1ランク降格かなぁ〜」
1ランク降格か、ちょっと可哀想だな
あの時僕に嫉妬していたって言ったのは、自分が必死に上げたランクをぽっと出の僕に追い付かれたからじゃないのか?
だとしたらランクを下げられた彼女はやる気を失ったり、自暴自棄になったりするのでは?
見る限り、一つのことにがーっとなってしまうタイプだし、その可能性は高い
それに僕のこと心配して看病し続けてたっぽいし、そのお礼をしなきゃだな
「じゃあ僕の上がるランクいらないんで、クリスティーナの降格なしにしてもらえませんか?」
「何言ってるんすかアレンくん!? 自分の功績を他の人に譲るっていうんすか?」
「お願いします リビエラちゃん」
と僕は頭を下げた リビエラちゃんはまだ迷っているようだ、しばらくするとはぁーっとため息をついた
「頭を上げて アレンちゃん 困ったわね〜貴方の思いを無碍にもできないし、クリスティーナちゃんへの処罰も無しに出来ずらいしな〜 う〜ん」
するとルカさんはポンっと手を叩く、何が思いついたのかな?
「じゃあこうするっす! アレンくんは一つ昇進 クリスティーナちゃんは現状維持
んで、クリスティーナちゃんに事の顛末、つまりアレンくん自分の功績を犠牲にしてまでクリスティーナちゃんの降格を阻止したことを伝えるんすよ!
そうすれば、クリスティーナちゃんはアレンくんにとっても申し訳なく思って自責の念に駆られると思うっす!
そうなればクリスティーナちゃんは過去の行いをすっごく反省すると思うんすよ!
どっすか? 名案でしょ!」
ルカさんは一息にそう言うと、ふふんとドヤ顔をしながら胸を張った
流石にその案はないだろ そう思っていると
「うそ! ルカっちまじ天の才じゃね!? 超名案じゃんそれで行こう!!」
と、リビエラちゃんが言ってルカさんと手を取り合って喜び合う
ちょっと〜 当事者が蚊帳の外だよ〜?
「あ、あの! 本人には伝えない案を考えませんか?」
「だーめ! もう決定! そうじゃなきゃ罰にならないじゃない!」
あぁ…もうダメだこのギルド…
僕は喜び合う二人を見ながらそう思ったのだった…
…………………
「じゃあ早速向かおっか〜 クリスティーナちゃんのとこ♡」
くそ! 絶対この人たち楽しんでるって
あれ?僕この街救ったよね?もう少し融通してもよろしくってよ?
僕はしずみ、女性陣二人はルンルンと降りていく
「入るっすよ〜」
入るとクリスティーナが僕の服を畳んでいた
「あら? ルカさんにギルドマスター様まで?
どうされたんですの?」
さっきまで号泣してたとは思えんな
もうお嬢様モードだ
「えーっと 私が伝えに来たのはあなたへの処罰についてなの」
クリスティーナが真剣な顔になる
「はい、覚悟しておりました どんな罰でも、剥奪でも降格でも受け入れますわ」
あれ?話が違うぞ? もっと取り乱すかと思ってたのに
リビエラさんがチラッとこっちを見た
笑ってやがる… ふざけやがって
「あなたの処罰は1ランク降格です」
「そうですよね 受け入れま…」
「ですがっ! 実はこの処罰は取り消しで〜っす!」
クリスティーナがポカンと口を開けて固まる
「な、なんでですか!? どうしてそんなことが」
「それはね〜 アレンちゃんのおかげなの!!」
「へ? どうしてアレンが?」
「よくぞ聞いたっす! なんとも感動的な話っすよ〜 ほんとは二階級昇進だったアレンくんが看病してもらったお礼だって言って、クリスティーナちゃんの降格に待ったをかけたんすよ〜
あの時のアレンくんはかっこよかったすね〜
あぁなんて感動的な話! よよよ〜」
と、割り込んできたルカさんがわざとらしく泣き真似をする
こいつら、もしかして嵌めやがったか?
「そ、そんなことが アレン あなたになんと言ったら…」
と、こっちはガチ泣きをしだす
誰か収集をつけてくれ
「じゃあ、後は任すわ! 私たち忙しいから!」
「そうっすね! ウチもとっても忙しいっすからね〜 あーいそがしーいそがしー」
と言って二人が出て行く
絶対に楽しんでやがったな まんまと嵌められた
クリスティーナはまだ泣き止まない
女の子が泣くと、居た堪れなくなるよね
「あの〜 出来れば泣き止んでもらえませんか?
クリスティーナさん」
「グスッ クリス…」
「え?」
「クリスって呼んで、恩人にさん付けで呼ばれるなんて嫌よ あと敬語も ぐすっ」
そうは言っても歳上じゃん 精神的にはおっさんだけどね
だが今は抵抗するのは得策じゃないような気がする
「わかったよ クリス これでいい? 僕はただ君に看病してもらったお礼をしただけなんだよ
だから君は気に病まなくていいんだよ」
「そんなわけにはいけないわ! 私は罰を受けなくちゃいけないのよ、勝手に危険なことしたくせに、お咎め無しなんて、そんなの耐えられないわ」
ルカさん あんたの思い通りになってるよ
だから助けておくれ…
クリスはずっと泣き続けているので、とりあえず背中を摩って上げる
するといつの間にかクリスが眠ってしまっていた
どうしよう…
とりあえず眠るクリスをおんぶして宿に連れて行こう、部屋は空いてるだろう
受付のルカさんのニヤニヤとした目線に耐えながら僕はギルドを後にした くそっ母さんと知り合いらしいから、会ったら言いふらしてやるぞ
宿に着いた リューネちゃん心配させちゃったかな
「ただいま〜 リューネちゃん」
中に入るとリューネちゃんがテーブルに座っており、驚いたようにこちらを見た その目は真っ赤だった
「アレンく〜ん!! よかっだぁ〜
いぎでだぁ〜 グスッ うぇぇえん」
と、リューネちゃんが僕に抱きつくようにして泣き出してしまった 僕より小さいので僕の胸に顔を埋める形だ
「ほんとにご心配をおかけしてすみません リューネちゃん どうか泣き止んでください」
「でも、でも アレンぐんがぁ〜 うっうぅ 」
と、さらにひしっと抱きつくように泣き出す
「と、とりあえず座りませんか? 色々お話したいこともありますし」
すると僕のことを上目遣いする様に見てくる
涙と鼻水ですごい顔になっちゃってる
「ん、わがりまじたぁ グスッ」
テーブルに向かうが、リューネちゃんはひしっと離れない
とりあえずクリスは違う椅子に座らせておく
すると、リューネちゃんはやっとクリスを認識したらしい
「え? 誰でずか? その子 くすんっ」
と、泣きながら聞いてきた
「えっと、この子は僕の側で眠ってしまって、そのままにするのも悪いしで、宿に空き部屋があるなら、泊まらせたいなって思ってたんです だめですか?」
「ぐすっ 大丈夫でず 後でその子の部屋をお掃除しでおきます くすんっ」
と、泣きながら対応する様子が可愛くて思わず笑みが溢れてしまう
「ほんとに… 心配じだんですよ… ぐすっ 全然帰ってこないし、街の人はアレンぐんがゴブリンディザスターをだおしたって言ってるし
死んじゃったかと思っだ ほんとに、ほんとに良がった〜 ううっ」
と、まだ泣き止まない どうしたら泣き止んでくれるんだろ
ふと僕はお土産を思い出す
「どうか泣き止んでください これ、リューネちゃんのために採ってきたお土産です 」
と言って鞄から朝日下草を取り出し、リューネちゃんにあげる まだ花は輝きを失っていなかった
ある意味この草も、命の恩人、いや恩草だな
すると、リューネちゃんは草をぎゅっと抱きしめる
「うぅっ 私のために贈り物を… なんて、なんて優しい人なんですかアレンくんは… う、うぅ 生きてきた中で一番嬉しいです ほんとにありがとうございます ぐすっ うぇぇええん」
と、さらに泣き出してしまった
そんなに喜んでもらえるとは思わなかったな
そこからずーっと泣き続けたリューネちゃんはやがて少しずつ泣き止んでいった
「ご迷惑おかけしました… うぅっ 恥ずかしいです」
泣き止んだリューネちゃんは顔を真っ赤にして恥ずかしがりながらペコっと頭を下げた
「いえいえ 何も迷惑なんかじゃないですよ こちらこそご心配おかけしました」
と、僕も頭を下げ、どちらも頭を下げている状況が何か面白くて二人して笑った
「それで、クリスはどこに泊めましょうかね」
「クリス? あぁ、そこで寝ている子ですね?
アレンくんの隣の部屋が空いてるのでそこに泊まってもらいましょう」
「そうですか じゃあ宿泊代は僕が払いますね」
「あ、それは大丈夫です えっと、さっきのお花がお代ってことで…」
と言ってリューネちゃんが二ヘラと笑う
「じゃあちょっと部屋の掃除してきますね
少し待っててください」
リューネちゃんはパタパタと部屋に向かい、すぐに戻ってきた
「終わりました さぁ運んじゃいますか」
「はやっ! 速すぎないですか? ま、まぁ運びますか」
クリスを抱っこして部屋に向かう、扉を開くとベッドも部屋もきちんと掃除されており、キチッと整理されている いくらなんでも掃除早すぎない?
クリスをベッドに寝かし、布団をかけて部屋を後にした
「じゃあご飯にしましょうか 今から作るからちょっとだけ時間掛かっちゃいますけど…」
「全然待てますよ! リューネちゃんのご飯はとっても美味しいですから!」
「えへへ 頑張りますね」
ニコニコとしながら奥に引っ込んでいく
なんであんなに泣いたんだろ? 冒険者なんて危険と隣合わせだろ? 過去にトラウマがあるとかかな? まぁ、この話題は避けるべきだな〜
しばらくそう考えていると、ご飯ができたようだ
リューネちゃんがお盆を運んでくる
「んしょっ おまちどうさまです! 召し上がってください」
今日のご飯はなんとステーキだ やった!めっちゃ豪華じゃん!
「いただきます! はぐっはぐ ん! 美味い!
なんだこの美味い肉は! 肉もさることながら、油さえも美味しい、水筒に入れて飲めるぞこれは!
美味い!美味い!」
結局ペロリと完食してしまった 結構量あったけどね
「ご馳走様でした〜 やっぱりリューネちゃんのご飯が一番です!」
「一番! ありがとうございます えへへ〜 一番かぁ… 明日も美味しく作りますね!」
と、ルンルンとお皿を下げていく
その後僕は部屋に戻り、明日クリスに事情話そうと思いながら寝た
…………………
次の日、いつものように日の出と共に起きる
クリスティーナの様子でも見よかな
隣の部屋に行くとまだ寝ている、よほど僕のことを看病してたのかね? 感謝…
よく見ると睫毛も長く、鼻筋もスッと通った美人さん顔をしている 将来は化けそうだ
と、親戚のおじさんみたいなことを思いながら寝顔を見てると
「ん、むぅ… 」
と、クリスが起きそうだ
ぱちっと目が覚めた
「知らない天井ね…」
君もそれ言うんだね シンパシー感じちゃうわよ
「おはよう クリス 眠れた?」
「えぇ、アレン よく眠れた… ってアレン!! なんで私の部屋に え? ここどこ?」
「とりあえず 下に降りてご飯食べようよ リューネちゃんがご飯作って待ってるよきっと」
「リューネちゃんって?」
「この宿の宿主、 ちょっとちっちゃいから、驚かないでね」
「わかったわ じゃあお言葉に甘えてご飯頂くわ」
二人でリビングに行くとリューネちゃんがテーブルを拭いていた
「あ!おはようございます! アレンくん!
あと、クリスさん?」
「えぇ、クリスであってますよ クリス?」
見ると、クリスは口をあんぐりとして固まってる
「おーい クリス〜 起きてる?」
クリスの目の前で手を振ってみる、すると
「はっ! ちょっとびっくりしちゃっただけよ
はじめましてリューネさん 昨日はありがとうございました」
と、キリッとした顔をした もう手遅れでは?
「いえいえ〜 連れてきたのはアレンくんですよ〜 私のことはどうぞリューネちゃんとお呼び下さいね じゃあ二人とも座ってください! ご飯にしちゃいましょう!」
リューネちゃんは奥にパタパタと行く
僕とクリスは着席をすると、クリスが話しかけてくる
「ねぇアレン? 小さいって言ってたけどあれは小さすぎよ! なんらかの法に触れてるわ!」
たしかにな、僕も最初そうだと思った
「大丈夫だよ リューネちゃんはドワーフ族なんだってさ だからもう成人済みだよ」
だがまだクリスは疑問の表情を浮かべる
「そうなの? でも私が見たドワーフ族は少なくとももっと大きなかったわよ? その中でも小さい方なのかしら?」
ん?どういうことだ リューネちゃんは自分をドワーフ族だから小さいって言ってたぞ でもそれよりも小さいのか はて?
「んしょっ んしょ はい!二人ともおまちどうさまです!召し上がれ〜」
と、いつのまにか食事が出来ていたようだ
今日の料理は、パンと野菜のスープ そして目玉焼きだ
クリスは、なんだ普通ね、みたいな顔をしている
度肝抜かれるぞ〜
クリスがパンを一口食べる、すると目をカッと開きバクバクと他の料理も食べ、すぐに完食してしまった
「美味しい〜!! どうしてこんなに美味しいの!? 今まで食べてきたものの中で一番美味しいわ!! 感動したわ!」
と、大満足いただけたようだ、我が事のように嬉しくてニコニコとしてしまう
僕も食べ進むとクリスがじっとこっちを見てることに気づいた
とりあえずパンを半分あげたら、すっごく喜んで嬉しそうに食べていた ちょろいでこやつ
僕もいつものように完食した 今日も大満足!
「ごちそうさまでした! リューネちゃん! とっても美味しくて感動しちゃったわ」
「ごちそうさまでした クリスよ そうだろう? しかもこの感動が薄れることはなく、毎日更新されるのだよ 恐ろしいだろ」
「えへへ〜 お粗末様でした そんなに喜んでもらえて嬉しいです! 食器下げますね〜」
と、リューネちゃんが奥に下がっていった
「これからどうするのクリス?」
「あ〜 ちょっとそれについてギルドに話があるのよ ちょっとアレンも付いてきてくれない?」
なんだろ? まぁいっか暇だし
「わかったよ じゃあ早速行こうか」
「ありがとう! そうね 行きましょ」
クリスがまず外に出て、僕が宿から出ようとすると
「あ、アレンくん! ちょっと待ってください〜」
と、リューネちゃんがこちらに駆けてくる
なんだろ?
「どうしたんですか? 何か伝言が?」
「いいえ… えいっ」
といって、リューネちゃんが腕を前に突き出し顔を真っ赤にしている
ワッツ?
「あ、あの 申し訳ないんですけど… そ、そのギュってしてもらってもいいです…か?」
と、あずあずと言ってきた
なるほど、昨日のことで寂しくなったんだな?
成人済みなのに、子供っぽいんだから〜
「お安い御用です はいっ ぎゅー」
と、リューネちゃんに腕を回して抱きしめてあげる
ほんとちっこいなぁ
しばらく抱きしめあって腕を離すと、リューネちゃんの顔は真っ赤を通り越して紅だった
紅だぁ〜!!
「えへへっ ありがとうございます! じゃあいってらっしゃい!」
「はい! 行ってきますねリューネちゃん」
と、僕は宿を出たのだった
外ではクリスが待っていた
「どうしたの?遅かったじゃない 忘れ物」
「うーん まぁ忘れ物みたいなもんだよ」
「ふ〜ん あっそうだ! 何なのよあの宿は、部屋はとっても綺麗だし! ご飯は信じられないくらい美味しいし! 羨ましいわ〜」
ふっふっふそうだろう〜 あの宿は僕だけの貸切状態だからな! なんで混まないのか不思議だけど
「まぁね〜 僕の宿を選ぶセンスがいいんだろうね〜」
「何よ〜もうっ あの宿の名前なんて言うの? 私が泊まってる宿以外あんまり見なかったのよね〜
しくじったわ〜」
「あの宿の名前は『龍の止まり木亭』だよ
知ってるでしょ この街に宿屋限られてるし」
「え?『龍の止まり木亭』? 初耳よ? アレン 宿を独占したいからって、嘘をつかないで頂戴!」
は?何を言ってるんだクリスは
「嘘なんて言ってないよ! そんなこと言うわけないじゃないか 看板にそう書いたあったし、確かだよ」
「そうなの? でも私宿を決める時他の宿の名前を見たけど、そんな名前の宿なかったわよ」
何が起こってるんだ? クリスが見たのは宿街だろ? そこにはちゃんと五つの宿があった筈だ
「クリス 正直に答えてくれ 宿街の宿は全部でいくつある?」
「何言ってるのアレン 4つよ、 4つしかないじゃないの」
リューネちゃんは一体何者なんだ?……
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