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第一章 誕生編 第13話 VSサテラ その後… ②

ランバラルが好きです

ララティーナが眠っているアレンを抱えながら家に入ると、グランが中にいた


「お、ララ おかえり 鑑定の儀はどうだったんだ? アレンは疲れて眠ってんのか? 」


どうやらこの村までは騒動が伝わっていないようだ


「あなた… それがね……」


グランに魔族の襲撃があったということ、その魔族を倒したアレンがその戦闘からずっと眠り続けていること、魔族はリリを狙っていたということを話した


「うっそだろ… 魔族の襲撃があったなんて… くそっ俺とシルヴァードがその場にいたらアレンが戦わなくて済んだってのに! くそっ!!」


思わずグランが拳で机を叩く



「魔族がリリちゃんを狙ってたと言ったな 一体何が目的なんだ? なぁ、ララ リリちゃんやミネルバさんはそのことを知っているのか?」


ララティーナが首をふる


「いえ、まだ言ってないわ 言うべきかどうか、まだ迷ってるの… グランはどっちがいいと思う?」


「言うべきだろう 知らずに、何も対策を取らないで魔族に殺されでもしたら大変だ」


「えぇ その通りね ようやっと決心が着いたわ 私、今から言ってくる」


「俺も一緒に行くさ」


ララティーナはアレンの部屋のベッドにアレンを寝かせ、グランと共に隣のシルヴァード宅に向かった


こんこんと扉をたたく


「私よ、ララティーナよ 」


するとガチャっと扉が開き、シルヴァードが顔を出す


「おう! ララティーナとグランか! ミネルバから聞いたぜ 魔族の襲撃があったんだろ? まったく災難だったよな 俺やグランが行けたらよかったんだが…」


「実はそれについて、大事な話があるの」


「ん?話ってのはなんだ?」


「ミネルバとリリちゃんにも聞いてもらわなくちゃいけない話なの 悪いけど中に入れてもらえる?」


「あぁ わかったぜ さぁ、入ってくれ」


ララティーナとグランは家の中に入って行きシルヴァードに促され、リビングのテーブルの席に座る


「少し待っててくれ、2人を呼んでくる」


ドタドタとシルヴァードが二人を呼びに行った


ララティーナが膝の上で手をギュッと握って俯いていると


「ララ、大丈夫だ 落ち着け」


と、グランがその手にそっと自分の手を乗せる


「あなた ありがとう…」


するとシルヴァードが二人を連れて戻ってきた


「おう!待たせたな さて、じゃあその大事な話を聞かせてもらっていいか?」


と言ってどかっと椅子に座る リリもミネルバも着席して、話を聞く体制になったようだ


「えぇ、魔族の襲撃があったことはきっとシルヴァードもミネルバさんから聞いていることと思うわ」


「あぁ!聞いたぜ」


「私が今から話す大事な話っていうのは 魔族が襲撃をした目的についてよ」


「目的?なるほどな」


「魔族が襲ってきた理由はおそらくリリちゃんだと思うわ」


「なっ! なんだと!?」


シルヴァードが思わずガタッと立ち上がる


「あなた 落ち着いて 今はララさんの話を聞きましょう」


「あ、あぁ そうだな すまなかった どうか話を続けてくれ」


「いいのよ 娘が魔族に狙われたって聞いて冷静になれる親なんていないわ 気にしないで さて、続きを話すわね 私がリリちゃんが魔族の目的だったって思える理由はいくつかあるわ


まずは修道女に化けてまで、リリちゃんに近づく必要があったってことよ ただ多くの人を殺そうとするならばそんな回りくどいことはしないはずよ 


それと決定的なのは正体を表した後の言動ね 執拗にリリちゃんに固執していたわ ほぼ執念に近かったわね


以上が私がそのように考えた理由よ」


家の中がシンッと静まり返ってしまった


最初に口を開いたのはシルヴァードだった


「とりあえず話してくれてありがとうな… まだごちゃごちゃ考えているが リリをどう守るか考えてみるよ」


「えぇ… 今後も魔族が出張ってくることは十分ありえるわね 一体どうすればいいか…」


ミネルバがそう言って俯く 


当事者のリリは何の話か理解できていないらしく、そんな両親のことを不安そうにキョロキョロと見ていた


「多分このことは国に報告がいくと思うわ もしかしたら何かしら手助けしてくれるかもしれないわ」


「それは、本当か 王都から騎士がやってきたなら心強いかもな」


その日は何の結論も出すことを出来ずに、そのままお開きとなった


…………


それから2日後……


村に豪華な鎧を見に纏い、これまた豪華な馬鎧を着た馬に跨った集団がやってきていた


村は騒然となり、一先ず村長が対応することとなる


「どうも御一行様 私はこの村の村長のブルグというものです さてさて、村に何か用ですかな? 外見から察するに何か尊き方々にお見受けしますが?」


すると一番先頭にいる、最も豪華な鎧を着た、立派な髭を蓄えた男が答える


「馬上から失礼する村長殿 私は近衛騎士団長のジークハルトというものだ! この村にいる『リリクシール』という少女に用がある! 悪いが案内してはくれまいかな」


「き、騎士団長様であられましたか! はい! すぐに案内しますぞ、着いてきてくださいませ」


そう言って村長が歩き出すとその後ろを騎士団がぞろぞろとついていく


村人はその光景を見ながら騒然としだす


「この家です で、ではリリクシールを呼んできますわい」


村長が家に向かおうとするのをジークハルトはそれを手で制した


「よい 私が直々に訪問して話すとしよう」


そう言って馬から降りて家まで行き扉をトントンと叩く


「この家のもの どうか開けてくださらぬか」


するとすぐに扉がガチャリと開き、強面のシルヴァードが出てくる


「ん?誰だあんたら 何かようか?」


「失礼した 名乗るのが遅れたな 私の名はジークハルト 近衛騎士の団長をしている 本日は其方の娘のリリクシールに用があり、参上仕った」


「近衛騎士団長様がなんで俺の娘に用が? もしかして魔族の件か?」


「その通りだ、できれば中で話がしたいのだが入れてもらえぬか? 」


「あ、あぁ 狭い家だがな入ってくれ」


「うむ、感謝する 総員!! 私の指示があるまで待機せよ!!」


そうジークハルトが呼びかけると、騎士達がバッと整列をして微動だにしなくなる


家に入りシルヴァードに促されテーブルの椅子に座った


「それで、何で来たのか目的を言ってくれ」


とシルヴァードが早速疑問をぶつける


「ふむ、 単刀直入に言おう 其方の娘、リリクシールを国で保護することを提案しに来たのだ」


「国がうちの娘を保護する? どういうこった」


「魔族から守るためだ おそらく魔族はリリクシールの芽を早々に摘んでおこうとしたのだろうと国は判断したのだ それに、これからも魔族の襲撃があると予想される だから魔族から守り抜くための措置というわけだ」


「なるほどな その話はうちにとってありがたいが… だが、王都での生活費なんざ、とてもじゃねぇけど払えねぇよ 俺も冒険者時代の蓄えはまだ少なくないほどあるが 王都で暮らさせるほどの蓄えは自信がない」


「その点は心配御無用だ 生活費も教育費も全て国が出そう さらに其方の家に、毎月ある程度の金が支払われる予定だ」


「娘の金の面倒を見てもらえる上に金まで貰えるってことか? なんとも上手い話じゃねぇかよ とりあえず今は結論が出せねぇ 嫁も、当事者のリリもいないしな 二人が帰ったら話し合って結論を出すさ」


「そうか、それでは今日のところはここで帰らせてもらうとする 良い返事を楽しみにしておる」


そう言ってジークハルトは席を立ち出口に向かい、外に出る


「総員!!待機止め!! これより王都に帰還する!! 村長殿本日は協力感謝する シルヴァード殿には返事を10日後の昼頃、また聞きに来ると伝えておいてくれ」


そう言ってひらりと馬に跨ったジークハルトは騎士を引き連れて帰っていった


……………



その日の夕方、村の近くの湖にピクニックに出かけていたミネルバとリリが帰ってきた


「「ただいま〜! 」」


「あぁ… お帰り」


家の中では珍しくシルヴァードが神妙な顔をして座って待っていた


「あら どうしたの?あなた 私たちが出かけてる時に何かあったの?」


「家に近衛騎士が来た」


「えぇ! もしかしてリリの件なのかしら?」


「そうだ 今からそのことについて話がある」


そう言ってシルヴァードはリリとミネルバに、ジークハルトから言われた提案について話した


「そんな高待遇で保護してくれるなんて 私たちにとっては願ってもないことね」


「あぁ だがリリはまだ5歳だ そんな小さいのに親元から離れるってのは…」


二人で悩んでしまう、結局はリリの意思次第なのだ


「なぁリリ この提案 受けるか?それとも受けないか?」


絶対に断られるだろうと思いながら聞くと



「お父さん、お母さん リリは王都に行きたい」


と意外にもリリがその提案を呑んだのだ


「ど、どうしてだリリ 寂しくないのか?」


「ううん 寂しいよ… お父さんとお母さんと離れるのは寂しい… でももう、リリのせいで誰かが傷つくのはもっとやなの! 」


「リリ…」


「その、魔族が狙ってるのはリリなんでしょ? もしリリが村にいたら他の人たちが襲われちゃうもん この前だって… この前だってアレンがリリを守るためにいっぱい怪我してたもん! もうリリのためにアレンに傷ついてほしくないの!」


と、リリがはっきりと言い切る


「そうか… それがリリの意思なら、俺らはそれを尊重するしかないな よし、じゃあリリの荷物をまとめ始めるか 後10日後に騎士団が来る それまでに仕上げなきゃな」


と言ってシルヴァードが背を向ける よく見ると頬に涙が伝ってるのがわかった


「あなた… そうね、リリが行きたいって言うんだものね リリ、これから10日間はずっと一緒にいましょうね 王都でも寂しくないように」


 そう言ってリリとミネルバは抱擁を交わした


……………



家族は10日間を一緒に過ごし、娘との時間を大切に過ごした


そして最終日……


「ねぇ あなた 隣のアレンくん家には言わなくていいの?」


「あぁそうだな リリが王都に行くことを伝えなくっちゃな グランのとこに行くか」


シルヴァード家は隣のグラン宅に向かった


ドンドンと扉をたたく


「お〜い! グランはいるか? 話がある!」


するとグランがガチャっと扉を開けて出てきた


「シルヴァードじゃねえか どうしたんだ?みんな連れて とりあえず中入んな」


リビングにはララティーナもいたがアレンの姿はない、どうやらまだ寝ているらしい


「アレンくんはまだ寝ているの?」


「あぁ… いつ目を覚ますやらな… んで今日はどうしたんだ? 何か話ってのがあるんだろ?」


「あぁ、実はな…」


シルヴァードはリリを保護してもらうために王都に預けることを話した


「なるほどな… 魔族から守るためか」


「そうだ… リリもこの提案に納得しているしな」


「そうなの… じゃあリリちゃんとはもうしばらくは会えないのね… 寂しくなるわね… それでいつ出るの?」


「今日の昼頃に騎士団が来て、引き取っていく予定だ」


「そんなに急なのか!? 目覚めたらアレン 寂しがるだろうな…」


皆が寂しさに俯くとリリが手を上げた


「あの… ララおばちゃん、グランおじさん あのね、最後にアレンに挨拶がしたいの だめ…かな?」


とおずおずと聞いてくる


「ダメなはずないじゃないの そこの部屋に寝てるわ 」


「わかった! ありがとう!」


そう言ってリリは立ち上がりアレンの部屋に行く


リリが扉を開けるとやはりアレンはベッドの上で静かに寝息を立てていた


リリはアレンの枕元に立ってアレンの髪を撫でる


「ごめんね… アレン… またねって言わないでいなくなっちゃうね リリ、ぜったいぜったいアレンに守って貰わなくても大丈夫なくらい強くなる! もう、アレンが私のために戦わなくていいくらい頑張るね さよなら… アレン 」


そう言ってリリはアレンの額にそっと口付けを落とす


そして振り返らずに部屋を出た


「あら、リリちゃん もういいの?」


「うん お別れは済んだから…」


そう言ってリリは寂しげに笑った


…………


「そろそろ俺たちも帰るとするか 荷物をまとめきってないんだ ほらリリ グランとララに挨拶して」


「ララおばちゃん、グランおじさん、またね… 絶対もう一回戻ってくるからね」


「あぁ! リリちゃん 待ってるぞ」


「えぇ、きっとまたすぐに会えるわ」


リリが二人に手を振りながら家から出て行ってしまった



「行っちゃったな」


「えぇ、そうね… ほんと寂しくなるわね…」



……………



そして遂にその時が訪れた


村の入り口にジークハルト率いる近衛騎士団が整列していた


やはり今回も、村長が出てきて対応する


「本日もご足労いただき感謝します 早速リリクシールの家に案内させていただきます」


「あぁ、協力感謝する」


騎士団がぞろぞろとリリ宅へ向かうと玄関先にシルヴァードとリリとミネルバがいるのが見えた


「総員!! その場で待機!!」


ざっと一斉にその場で騎士団が止まる 


馬から降りたジークハルトはリリの元へ向かう


「それでは其方らの結論を聞かせてもらおう」


シルヴァードが頷く


「俺らはリリを王都に預けることに決めた これからよろしく頼む」


そう言って家族3人で頭を下げる


「国からの提案を、受け入れてくれたこと感謝致す では早速リリ殿 こちらへ」


そう言ってジークハルトは手を差し出し、その手をリリがとった


「リリ殿は私の馬に乗ってもらおう 馬に乗った経験はあるか?」


「ん、ないよ 」


「そうか 多少揺れるが じきに慣れるであろう」


そう言って自分の馬にリリを乗せ、その後ろに自身が乗る


「待って! まだリリの荷物ある!」


「む、そうか 総員! リリ殿の荷物を運び出せ!」


すると騎士達が馬を降り、リリの荷物をえっほえっほと運び、あれよあれよという間に自分の馬に乗せ終わった


「それではこれより王都に出発する! シルヴァード殿、ミネルバ殿 感謝する!」


そう言って騎士団を連れて王都に向かっていく



「リリ! リリ! 元気でな!!」


「リリ! 風邪ひかないように気をつけるのよ」


と後ろから手を振ってシルヴァードとミネルバが叫ぶ


「お母さん!! お父さん!! またね!! リリ頑張るから!!」


リリも馬上から二人に手を振って答えた


やがて村の入り口を抜けどんどんと村から遠ざかって行く


ジークハルトがふとリリを見ると、リリが必死に泣くのを堪えていた


「どうした? なぜ泣かない?」


「リリ… 決めたの もう絶対に泣かないって! 自分で魔族から身を守れるようになるくらい強くなるまで 泣かないってきめたの!!」


と言ってさらに歯を食いしばって泣くのを我慢する


(この娘は、強くなるな よもや、王国最強の座を明け渡すことになるやもしれん)


ジークハルトは将来の希望を見据えて、くつくつと笑った



読んでいただきありがとうございます


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