第一章 誕生編 第12話 VSサテラ その後… ①
個人的にショートカットが好きです
…………
アレンがサテラとまだ戦闘中のころ…
ララティーナはリリを連れて教会を脱出することに成功していた
「はぁっ はぁっ… アレン…絶対に生き抜いていて!」
「ララおばちゃん! アレンは? アレンは!?」
激しい戦闘音を背に、リリを抱えて教会から離れるために走る 走る 走る
すると逃げてきた人たちが集まっている広場に出た
そこでは子供と抱き合い安全を喜び合う親子たちで溢れている
「リリ! リリ!」
集団の中から青い髪を振り乱し、ミネルバが駆け寄ってくるのが見える
「リリ! あぁ…よかった心配したのよ! すぐ駆けつけようと思ったけど人の波に呑まれてしまって… ララティーナさん! 本当にありがとうございます!! なんとお礼をすればいいか…」
「お礼はアレンに言ってあげて アレンがリリちゃんを守ってたのよ 私は外まで連れてきただけよ」
「そうなのね… じゃあアレンくんには、うんっとお礼言わなくちゃ あれ?アレンくんはどこ? 」
するとリリが泣きながらミネルバを揺さぶる
「アレンは‥. アレンは怖いお姉ちゃんとまだ戦ってるんだよ! アレンが死んじゃうよ!」
「うそ! ど、どうしてなの? よりによってなんでアレンくんなの? ララティーナさん!? 何があったの?」
ミネルバがララティーナに詰め寄ろうとするが、その時広場に快活な声が響いた
「はいは〜い! 冒険者ギルドの者で〜す 一体なんの騒ぎなんですか? 誰か説明してもらっていいっすか〜?」
見ると赤い髪のショートカットの元気そうな女の子がいた どうやら冒険者ギルドの職員のようだ
すると周りのものは口々に 魔族だ、悪魔だと一斉に騒ぎ出す
「ちょっとちょっと〜 落ち着いてほしいっすよ〜 一人ずつ、一人ずつ… あ! ララさんだ! お久しぶりっす!」
そう言ってその娘は腕を振りながらこちらに駆け寄ってきた
「久しぶりね、ルカ」
「はい! あの〜それで 何があったか聞かせてもらっていいっすか?」
ルカが上目遣いをしながら聞いてくる
「鑑定の儀の最中に魔族が出たの! それも上級の魔族よ 」
「えぇ!! まじっすか!? それ国に討伐隊の要請出さなきゃってレベルっすよ! それで今聞こえてる音は誰かがそいつと戦ってる音ってことっすよね! やばいじゃないっすか!! はやく応援を呼んであげないと!」
と、ルカがあわあわとしだす
「戦ってるのは私の息子のアレンよ 早く冒険者に呼びかけて応援を呼んできて!」
「えぇ!!息子さんが!? どういうことっすか? 鑑定の儀を受けたってことは5歳ってことっすよね!? と、とりあえずすぐに応援をよんでくるっす!」
そう言ってビシッと敬礼をしたルカはすぐに冒険者ギルドに駆け出していった
「ミネルバさん 私も今すぐにアレンのとこに行くわ! アレンも何か策があったから残るって言ったんだろうけど、上級魔族にいつまで耐えれるかわからないわ!」
「う、うん アレンくんをどうかお願いしますね!」
ララティーナはミネルバに向かって強く頷き、
体に身体強化を使って、走り出そうとする
するとその時協会の方からズドンと今までで一番大きな音がする
そして、その後音がピタッと止んでしまった
(嘘っ! アレンに何かあったんだわ!)
「アレン!! お願い!まだ生きていて!!」
全力で走り、教会に着いたララティーナは鑑定の儀の部屋に行き扉をバンッと開ける
「あ、アレン!!」
そこには首のない魔族の死体と、その横に横たわるアヘンの姿があった
すぐさま駆け寄ったララティーナはアレンをそっと抱き上げる
「あぁ…アレン… こんなにボロボロになって… まだ息があるわ! 心臓も動いてる… あぁ!神様!ありがとうございます!!」
ララティーナは思わず半壊したストゥルド像に祈り、アレンを抱きしめて涙を流す
しばらくそうしていると扉の外からドタドタとした足音が聞こえてきた
「応援連れてきたっすよ〜! ってうわ!! なんすかこの状況!!」
どうやらルカが冒険者の応援を引き連れてきたようだ
「ルカ! アレンが… アレンが! 」
「うわっ! ぼろぼろじゃないっすか!! 治癒魔法かけてあげないと!!」
「あっ! そうね! 焦りすぎてつい忘れてたわ… ごめんなさいねアレン… 」
そう言ってヒーリングをアレンにかけると、細かな傷がみるみると治っていく
だが、アレンは依然として目を覚まさない
「どうしようルカ! ヒーリングをかけてもアレンの目が覚めないの! どうしたら…」
ララティーナが目に見えて焦りだしたので、ルカがすかさずララティーナの頬に手を置く
「落ち着くっす!! こんなぼろぼろになるまで戦ったから疲れて寝てるんすよ! とりあえず、ギルドの治療室を使うっす! ひとまずそこで寝かしてあげてほしいっす」
「わかったわ! ありがとうルカ! ギルドまでアレンを運んじゃうわね」
そう言ってララティーナはアレンを胸に抱きかかえて、教会を後にする
「ふぅっ ララさんは以外に抜けてるところあるからな〜 やっぱり全然変わってないや〜 んでっ魔族の死体はどんな感じっすか?」
ルカが魔族の死体の周りで調べている冒険者たちに声をかける
「こいつを見てみろ! とても綺麗な断面をしている… どうやら刃物で一刀両断されたようだぜ!」
見るとサテラの首の断面はスパッと綺麗に切れていた
「げげっ! これまじっすか? 上級魔族の皮膚はある程度の斬撃も魔法も効かないほど頑強って話っすよね?」
「あぁそうだ… 下級ならまだしも、上級の奴らに攻撃を通すことのできるやつは王都にいる騎士様や、宮廷魔導士の中でもそう多くはないだろうな 一体全体どうやったってんだ?」
(まさかこれをあの五歳児がやったって言うんすか? いやいやいや! そんなことはありえないっす! 多分、最後に駆けつけたララティーナさんがやったに違いないっす! そうじゃなきゃ大変なことっすよ)
「なるほどっすね とりあえず私は一先ずギルドに戻ってララさんに話を聞いてくるっす みんなには調査をお願いするっす!」
「おう!任せな! だが報酬は頼むぜ!」
冒険者たちが豪快に笑って答える
「もちろんっす! じゃあよろしくっすね!」
…………
その頃ララティーナはアレンをベッドに寝かせてそのそばに座っていた
「アレン…」
するとガチャっとドアが開きミネルバとリリが入ってくる
「ララティーナさん! アレンくんは大丈夫でした?」
「アレン けがしてない? だいじょうぶ?」
二人が心配そうに聞いてくる
「大丈夫よ とりあえず今は疲れて寝ちゃってるけど ヒーリングもかけたし、呼吸も安定しているから、一先ず安心よ」
ミネルバとリリがほっと胸を撫で下ろす
「ほんとにありがとうね アレンくん あなたのおかげでリリが無事帰ってこれたわ 感謝しても仕切れないわ」
「アレン リリを守ってくれてありがと! 早く起きていーっぱいおしゃべりしようね!!」
ミネルバが眠っているアレンの頭をそっと撫で、リリはきゅっとアレンの手を握った
すると
「リリ… リリ……」
とアレンがうわ言を言い始めた
「アレン! アレン! リリはここだよ! 」
「リリ…を……守らなく………っちゃ………」
そう言い終わると再び、スースーと寝息をたて始める
「ふふっ ほんとにリリは幸せものね 」
その場の雰囲気が暖かなものになっているとドアがコンコンとなる
「もしもし! ルカで〜す! ララさんいますか?」
どうやらルカのようだ
「はーい! 入っていいわよ〜」
「失礼するっす〜 息子さん大丈夫っすか?」
「えぇ お陰様でね 治療室使わせてもらってありがとね」
ララが頭を下げる
「いえいえそんな! ララさんに畏まられるとむず痒いっすよ〜 ウチとララさんの仲じゃないっすか〜 たははっ
それで!本題っすけどちょっと今回の騒動の、事の経緯を聞きたいな〜って思ってるんすけど いまからでも大丈夫っすか?」
「えぇ、大丈夫よ どこに行けばいいかしら?」
「私が案内するっす!」
「わかった、任せるわ ミネルバさん申し訳ないのだけれどアレンのこと見ておいてくれない? もしかしたら起きるかもしれないし…」
「えぇ!もちろんよ! リリを守ってくれたナイトくんですもの! 」
「うふふっ ありがとうございます それじゃルカ 案内してもらえる?」
「はいっす〜♪ こっちっすよ〜」
治療室を出てルカの後についていくと階段を登るようだ どうやら2階にある部屋らしい
「ここっす! どうぞ!ささっ、入って入って〜」
そこは簡素なベッドと机が置いてある部屋で、中には小さな植物の鉢や、色んな小物がある
「この部屋は?」
「ウチの部屋っす! めんどいからギルドの中に住まわせてもらってるんっすよ〜」
ルカがたははと笑う、割と整理されているようだ
「んじゃ〜 ララさんはそこのベッドに座ってもらっていいっすか? 」
言われた通りにルカのベッドに腰掛ける、少し硬めだ
「さてと…」
そう言ってルカは机にあった椅子をギギッとこちらに寄せてそこにどかっと座り、メモとペンを取り出した
「じゃあ色々質問するんで、答えてほしいっす」
「わかったわ」
「じゃあまず一つ目! どのタイミングで魔族が出てきたんすか?」
「それがね、魔族は修道女に化けてたのよ だから魔族がいたのは儀式の最初っからってことになるわね」
「なるほどなるほど…」
ルカがサラサラとメモをとっていく
「となると、魔族はいつ正体を表したんすか? 話を聞く限り、最初は人間の姿をしてたっぽいっすけど」
「リリちゃんっていたでしょ? あぁ、あの治療室に一緒にいた子ね その子がスキルを告げられた後にその魔族がたしかゴミがついてるとかなんとか言って近づいてきたのよ でもそれをアレンが止めたのよね その時は私もアレンが失礼なことをしちゃったって思って焦ったんだけど アレンは冷静にその魔族に何か話してたのよ そしたら突然、魔族が正体を表したってわけなの」
「ちょ、ちょっと待ってほしいっす! 魔族がなんでそのリリちゃんを襲おうとしたんすか?」
「それが分からないのよね〜 リリちゃんに近づいたから リリちゃんを狙ってたってことは確かなんだろうけど」
「ほほう 魔族の狙いは、リリちゃん? っと…」
ルカがペンを走らせる
「じゃあこれが最後の質問っすよ! 誰が魔族を倒したんすか?」
「それはアレンよ! 私が駆けつけた時にはもうすでに魔族は首を切られて死んでたから」
「え!?まじっすか! ありえないっすよ!だって五歳児っすよ!? ウチが五歳児の時なんて多分ゴブリンとかにさえ、逆立ちしても勝てないっすよ!? もしかしてとんでもない固有スキル持ちっすか?」
「確かアレンのスキルは【剣召喚】よ 」
「【剣召喚】すか? たしかにめちゃくちゃ頑張ってレベルを上げたらすごくなるスキルかもしんないっすけど 今の段階で上級魔族を一刀両断するなんてありえないっすよ!」
「でもこれが事実なのよ 私がリリちゃんを連れて逃げる時 アレンはたしかに魔族の攻撃を防いでいたわ 何がとんでもない力を感じる剣だった気がするけど…」
するとルカが腕を組んで困った顔をする
「う〜ん 一応ギルドには証言通りに報告するっすけど まともに取り合ってもらえるかどうか… 」
「そうね、信じてもらえない可能性の方が高いわね でもまぁいいわ 私が話したのは真実 嘘は言っていないわ」
「わかったっす とりあえず聞きたいことは全部聞けたっす! 貴重な証言感謝するっす!」
「ええ じゃあ私はとりあえず家に帰るとするわ 私の家もリリの家もここの近くのブルグ村にあるわ 何か用があったりしたらそこに来てね」
「ハイっす! お疲れ様っした!」
その後、治療室に戻ったララティーナはミネルバに村に帰ることを提案し、ミネルバももちろんそれを了承した
そして預けていた馬車置き場に向かうが戦闘の騒音に驚いたのか殆どの馬が居なくなっていた
しかしララティーナ達が乗ってきた馬車の馬はきちんとそこにいて、乗客の帰りを待っていたのだ
「うふふっ とっても勇敢なお馬さんね これなら安心して帰れるわ」
一行は馬車に乗り込み出発し、村を目指す
時刻はすでに夜も更けかけの時ではあるがララティーナは元冒険者のタフネスで休憩を取ることなく、村に向けて馬を走らせる
後部座席ではミネルバと、リリ、そしてアヘンが仲良く寝ていた 何故かアレンはミネルバの膝枕で寝ているが…
翌日の午前中にようやく村に着いた一向はそれぞれの家へと帰って行ったのだった
……………
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