おっさんとは「
「いっただきまー」
食べようとしたら、ひょいっとつまみ上げられ私の目の前から消えた。
「なんでもかじるな!」
「うわー、核、核ぅぅぅぅ!」
上に持ち上げられた。手を伸ばして取り返そうとすると、ひょいひょいっと避けられてしまう。
……くっ。この私の手から逃れるなんて。
スピードなら自信があるのに。あるのに。
エック、速い!お父様くらい、速い!
ビュンビュンビューンとなかなか核を取り返せずにいると、クーの声が聞こえた。
「ちょっと、エリック!何、僕の大事な旦那様と遊んでるんだ!」
ひゅんって光の短剣がエック目指して飛んでいく。
「うおうっ、いや、待て、待て、何言ってんだ?」
ん?
「エリックじゃなくて、エックだよ?あ、違う、ミスターエックスだよ?」
一応、名前を間違えて読んでいたようなので、訂正する。
「は?」
クーが目を見開いた。
「そう、俺はエリックなんて名前の男じゃない。ミスターエックス、通称エックだ。で、お前は何と名乗っている」
エックがクーに尋ねた。
「なんだよ、エックって。僕はニックだから、ニックとエックと、お揃いみたいになってるじゃないか。すんごい迷惑」
クーが心底嫌そうな顔をエックに向けた。
「知らん。偶然だ。というか、俺も大概、あの話に従う気はないが、……思い切ったな。女になっちまうとは。女嫌いもそこまで行けば大したものだ」
クーがぎゅっと私の腰に手を回す。
「残念でしたー。女嫌いとかそんな理由で女になったわけじゃないです。僕はギーメのお嫁さんになるために女になったんだよ。エリック……じゃない、エックのように、いつまでもふらふらとしたいわけじゃない」
エックがめっちゃ変な顔をした。
なんか、今なら油断してそう。その手から核を奪えるんじゃないだろうか。
獲物を狙う鷹の目のように、私の視線はエックの手の核に釘付けだ。
「ニック、何言ってんだ?ギーメは女だぞ」
「はぁ?」
ニックが目も口も鼻の穴も、ぱっかーんと開きまくって私を見た。でも美少女はどんな顔してもかわいい。
「え?うそ……」
みるみる、頬が桜色に染まる。
瞳がうるんでゆるゆると揺れている。
うわ。かわいい。これなに、この顔何?
「僕と結婚するために、ギーメも女になったの?え、どうしよう、嬉しい」
いや、違う違う、ショウネンのふりをしている元々女です。
えーっと、どうしよう。どう誤解を解いたら……。
「ああ、3年は、僕の魔法は解けないんだ……どうしよう、3年待って、3年たったら結婚しよう?」
両手を握ってプロポーズされてますが、いえ、あの、ごめん……。3年がったら自由の身だよ。北の国にはもういないかも。
「こら、ニック、このクソ餓鬼が、ギーメは俺と結婚するんだよ」
エックがひょいっとニックの襟首をつかんで、私から引き離した。
「餓鬼って言った?おっさんがギーメと結婚できるわけないでしょう?」
「おっさんだ?俺はまだ26歳だぞ」
26歳だったのか。思ったより若くてびっくりだよ。30代は確実だと思ってた。
中学生から見れば、20代でもおっさんなんだよなー
てなわけで、ニックは若かった。
エックも若かった。
いや、リザも若いけど。