なんか登場
「俺が誰か分かってないようだな」
ちょっと、大丈夫なの?知ってるって言ったじゃん。ちゃんと覚えてたじゃん。
ミスターエックスって覚えてたじゃんっ!
「まぁいい。俺の正体を今明かすつもりはない」
正体?
「まさか、ミスターエックスって、二つ名じゃなくて、偽名?偽名使ってたのか!」
あっと。しまった。
思わず嘘つき―と責めそうになった。……私、ギーメ。偽名使用中。ブーメラン帰ってくるところだった。やばいやばい。
「嫁になるなら、すぐにでも俺の正体を教えてやるぞ?」
にぃって笑った。
「嫁になるつもりはないし、正体を知りたいとも思わないし、偽名使うのって、最高に素敵!」
エックが変な顔した。褒めただろ、偽名はいいぞって。
「まぁいい。俺の身は問題ない。思い切りぶっ飛ばしてくれ。暴廻風魔法程度で傷つけられると思うな」
そういえば、お父様と同じように、なんか嫌な顔されて嬉しそうな顔してたりしたし。
エックも「強く打たれるのが好き」なやばい奴だった。そうか。
「死んでも文句を言うなよ?」
「ああ、死んでも、文句は言わないから思いっきり頼む。ドラゴンの翼をむしり取ってきてやる」
エックの両足をつかむ。
「いや、想像して投げ方とちが……」
「黙ってろ!舌を噛むぞ。この方が飛距離が伸びる!」
両足をつかんでグルグルと回り出す。
超高速回転。ほら、ダンスで培った回転力を舐めるな!
ぐるぐるぐるぐるぐる、
ドラゴンは相変わらず私たちの真上で旋回している。まぁ、真上といっても、旋回で描いている円は大きいので、本当の真上というわけではないから投げやすい。
よし、今だ。
狙いを定め、ドラゴンの飛ぶ軌道も計算に入れ思いっきり投げる。
頭からひゅーんとドラゴンに向かって飛んでいくエック。
高速回転で勢いをつけて投げたものの、高く飛んでいるドラゴンまでは届かないだろう。
「言われた通り、思いっきりぶつけてやる!風よ、暴廻風魔法、ぶっ飛ばせ~!」
魔法を発動。エックに渦を巻く風の塊が思い切り当たって吹き飛ばす。
ものすごいスピードで、飛んでくるエックに気が付いたドラゴンの回避行動も間に合わないようだ。
よし。
エックはドラゴンにぶつかりそうになったところで、ドラゴンの足に手をかけて、くるりと周り、飛ぶ勢いを殺しつつ、ドラゴンの背中に飛び乗った。
そして、すぐに剣を一なぎして翼を片方落とす。
あ、あんまり遠すぎて様子がよく見えないので、目に強化魔法かけて見えるようにしてます。それくらい高い場所。
巨大なドラゴンなはずなのに、小さな小鳥が飛んでいるくらいの多ききさに見えているのだから。
すぐさま、もう片方の翼を切り落とした。
翼は、頭のように、着られたらすぐに次の翼が生えるような仕組みにはなっていないようで、あっという間に翼の無いドラゴンになった。
なった。
……翼、ないよ?
あれ?目の錯覚かな?
ごしごしと目をこする。
落ちて、来ない。
確かに翼は無いと言うのに、ドラゴンは相変わらず上空にいる。
「ギーメ!見て!」
唐突に話しかけられ、空にむけていた視線を声のした方へと向ける。
そこには、15歳前後……私よりもいくつか年下の少女の姿があった。
あ、察し