ウサラビー……の耳は……
いつもの私は、部屋に入ると、業火魔法で一掃して、ボス部屋に言っていたけれど、猛ダッシュして走るほうがボス部屋まで早く行けるんだね。勉強になった。うむ。一掃する必要なんてどこにもなかったんだ……。
魔窟をぶっつぶすには、ボスだけ倒せばいい。
って、魔窟はぶっつぶさなよ!必要なのは、スライムの核!ああ、まって、ウサラビーの耳も!ネジュミーの核もいあるよね。ああ、あと、なんかそういえばニックが胡椒も核だって。あれは何の核?
「おい、本、俺の考えが間違ってなければ、核を取り込んだボスはボス部屋を出て他の魔の物と同じように、魔窟の外に出ることもあるってことだろう?」
え?
「ああ、その通りだ。ボス部屋から出ることがないボスが、悪魔の卵を取り込むと魔窟の外に出るようになる」
ボスが、魔窟の外に?
「やはりな。悪魔の狙いはそれか。進化して強くなったボスが街を襲うようになれば、どれだけの命が失われるか……」
頭が沸騰した。
「ボス部屋はこっちだな!」
体が勝手に動く。
魔力が足に集中していく。
急ぐ。
急がないと!
「おい、ギーメ、速っ、待て!」
待てるか!
人の命がかかってるんだぞ!
「リザ、強くなれ」
お父様の言葉を思い出す。
「王妃となった後、大切な資質は何だと思う?」
あれは、婚約が決まる数日前のことだ。
「所作の先生は、優雅さをいつも持つことだって言ってたし、歴史の先生は、過去をよく知り未来へ生かすことだって言っていたわ、それからダンスの先生は、ファーストダンスを踊る役目があるから頑張らないといけないって言うし……」
お父様が優しく笑って私の頭を撫でた。
「そのどれよりも大切なことは強さだよ、リザ」
え?
「王も貴族も、我々は民に生かされている」
「知っているわ、税金をもらっているんだものね。我々が民をないがしろにすることが決してないようにっていうんでしょ?」
「ああ、それはもちろんそうだ。農民は作物を作って世の中の為に役立っている。商人はその作物や他の品々を滞りなく人々にいきわたるように役に立っている。じゃぁ、王や貴族はどう世の中に役に立ってばいいと思う?」
え?
「領地を治める……?」
「領地を治めるとは?」
「えっと、皆が幸せに暮らせるように、考えて税金を使ったりして……」
お父様が頷いた。
「そうだ。民が安心して幸せに暮らせるようにすることが我々の仕事だ。治水や土木、普段から生活を守るためにすることもあるが、一番大切なことは生活を守ることじゃない。命を守ることだ」
命を守ること?
「30年以上前の他国が責めてきた……侵略戦争……。あれはその前の40年ほど前にどこからか現れた42体のドラゴンに多くの民が命を失い、疲弊した我が国を狙われたのだ」
「ドラゴンが、42体も現れたの?」
1体現れるだけでも、100人の兵を集めても討伐は難しいというのに……それが、42体も?
「そうだ。あの時は、国内外の……国にとらわれない冒険者たちが現れて、我が国を救ってくれた」
冒険者が……。
「だが、冒険者たち到着する前に、多くの民が命を失った。土地や家屋を失っても、いつか手に入れることはできるだろうが、失われた命を取り戻すことはできない」
40年前と言えば、お父様も生まれていない。それなのに、まるで当時辛い思いをしたかのような顔をしたのはよく覚えている。




