実食
「おー、そうだそうだ。まぁ、お前らは知らないだろうが、一口大に切ったバナナにグラニュー糖をまぶして表面凍らせたような食べ物で、スイーツというにはあまりにもあれだが、うめぇんだよ、ほれ、オレサマが口を開けるから、中に一つずつ入れてくれ」
口を、開く?
本がパカット開いた。ちょうど真ん中くらいのページで。
「く、口?」
エックが何の疑問も持たずに、今作ったばかりのものを1つ本の口に入れた。
すぐ本が閉じる。
「はー、やっぱうめぇ。ラビキャンディーは最高だなぁ。いや、キャンディーって名前ついてんのはアイスキャンディーの名残なんだが。舐めるんじゃなくて、噛んで食べるんだ。この表面だけ凍ってて歯ごたえがあって、噛むと核のじゃりじゃり感とたまんねぇ食感。お前らは知らないだろうが、メロンパンの外はサクッとグラニュー糖がアクセントにって、あれに似たものが……って、次、次だ」
本が開く。
エックが入れる。
私がうらやましがる。
本が開く。
エックが入れる。
私が凝視する。
本が開く。
エックが入れる。
私が口を開ける。
本が開く。
エックが入れる。
私がよだれをたらす。
本が開く。
エックが入れる。
なくなる。
私が、泣く。
「ふあー、満足だ。よし、約束だ。悪魔の情報教えてやる」
本の声の調子からするとかなり上機嫌だ。
「ああ、それはありがたいが、1分待ってくれ」
エックがそう言い残して部屋からいなくなった。
そして、きっかり1分後。
私の目の前にラビキャンディーをエックが差し出した。
「え?」
「今度はギーメだ」
私が、まさか、今度は、本に食べさせろと?
そ、そんなの、拷問なのでは……。
あ、もしかして、エックは牢屋の中で、こんな過酷な拷問を受けていたというの?
「ほら、ギーメ、口を開けろ」
ん?
素直にエックの言葉に従うと、ぽんっとラビキャンディーを口の中に入れられた。
モグモグ。
ふわぁぁぁぁーーっ!
な、に、こ、れ。
冷たさがまず一番に来る。
そして、表面の凍った部分に歯を入れれば、カリっとして、まぶした核の甘さとじゃりっとした食感が何ともいえない。
それから、中の果肉?は、クリーミーだ。林檎のようなシャリシャリっとしたものではなく、トロンと口の中でとろけるような食感。核と凍らせた外側のカリカリさと、中のクリーミーさが混ざりあい……最高。
たっぷり蜂蜜をかけたような喉が焼けるような甘さはない。逆に、この甘すぎない優しい甘さと、それからときどききゅっと核の甘さが舌を刺激して。
やばいやつだ。
おいしすぎて、やばいやつだ!
思わず、次々にエックが差し出すラビキャンディーを食べてしまった。
はぁー、ナニコレ。
気が付けば最後の1個だ。
「なんか、すげー上手そうな顔してたが、これ、ウサラビーの耳だろ?」
エックが怪訝な顔して、自分の口に最後の1個を入れる。
「うわぁーーー、うわぁーーー、エック、酷いっ!最後の1個っ!」
「なんだこりゃ。確かに、上手いな。いや、1分もあれば作れるようなこんな単純なものが、……まさか、ここまでうまいとは……」
1分もあれば作れるわけないじゃん。
貴重品だよ。貴重品。
まず、スライムの核を手に入れるところから、高度だって!
「じゃぁいいか、悪魔情報を言うぞ。どうやら、この魔窟に卵を産み付けて行ったようだぞ。さっさと卵を回収した方がいい」
本が唐突に口を開く。いや、本は開いてない。
「卵?悪魔は卵を産むのか?」
「いや、そう呼んでいるだけだ。体内から石のような種のようなものを出す。額からだったり、手のひらからだったり、その時その時で色々だが、それを相称して卵と呼んでいる」
えー。
日本にあるもので、説明してみました。
本はまぁ、不思議な本ということで。
……バナナって、がっつり凍らせると、釘が打てますもんね。硬くて食べられたもんじゃないですよね。




