明かされた真実と与えられた自由と、奪われた自由
そうか、もしかしたら、私たち娘も、日々父親の訓練に知らない間につきあわされてたのかぁ……。
「とにかく、私は強い、ジェイクも強い、そんな二人から生まれた私たちの子供も当然強い」
「そうか、妹たちが、学園の生徒たちどころか教師に比べても強いような気がしてたけど、気のせいじゃなかったのか。でもって、私も強いのかぁ。冒険者として十分やっていけるって話でいいんだよね?じゃぁ、私、冒険者になってきまー」
首根っこをつかまれました。
「待ちなさいリザ、話はまだ終わっていません。というか、婚約の話をしていたはずですが、なぜ冒険者?」
うぐぐぐぐ。
っていうか、冒険者出したのお母様……。
「とにかく、私とジェイクが北の国で冒険者としてかなりブイブイ言わせてたんです。およそ20年ほど前ですね」
ほら、やっぱり冒険者の話してるのお母様じゃん。
「結婚することになって、ジェイクがこの国の公爵令息だって初めて知らされて、元冒険者だったことは隠すことになりました。で、ずっと隠してたんですが、ちょっと前に見つかっちゃってね」
お母さまがてへぺろと舌を出した。
「伝説の冒険者の娘をぜひ嫁にと、北の国から言われ始めたのが3年ほど前。のらりくらりとかわしていたんだけれど……」
お母さまがはぁーっとため息をついた。
「まさかね、リザ。いくらあなたに非がないとは言え、婚約破棄を3回もされた娘となると、国内では嫁の貰い手が……かなり格下になってしまうのよ。それもかわいそうかと……2回目の婚約破棄をされたあなたを見て、まさかとは思うけれど、2度あることは3度あるともいうしと……。もし、3回目の婚約破棄をされたら、北の国へ娘を嫁がせましょうということに……」
「あー?えー?いや、じゃぁ、婚約破棄されなきゃどうなってたの?」
「四女が嫁いで終わりだったけれど」
お母さまがけろりといった。
「ぬ?」
ちょっと待てよ。
「相手には私か四女かどっちかを1年後に婚約させるって言ったの?向こうもどっちでもいいって感じだったの?」
失礼じゃない?
失礼じゃない?
「なんか、最近魔窟が活性化してるみたいで、北の国では強い血が欲しいみたいで、本当にどっちでもいいから頼むって切実みたいで」
お母様、どっちでもいいって言われて嫁ぐ私の身を考えてほしい……。
「なんか、四大侯っていうのが北の国にはあるんだけど、その侯家から王が排出されるのね。それがね、なぜか時期王は、リザを嫁にもらった侯家の者がなるって話にまで発展していて」
は?
「つまり、リザを捕まえた侯家の世継ぎが北の国の次の王様になれるのよ。でね」
こんこんと話の途中でノックの音が。
「奥様、隣国より使者が到着いたしました」
「あら、婚約破棄パーティー……いえ、卒業パーティーの日付は伝えてありましたが、早いですわね」
お母様、婚約破棄パーティーってはっきり言い間違えましたね!
くっ。
そりゃ、卒業おめでとうな感じでないことは確かなパーティーですけど!
それも、在学中の3年間ずっとな!
1年の時も2年のときも、卒業生で主役のはずの今年も!
「ちょ、お母様隣国の使者って、私、結局、誰と婚約することに……」
お母様がニコリと笑った。
「だから、四大侯のうちの誰かよ。好きに選べばいいから」
好きに選べばいいって……。
一見、自由が与えられたようだけど……。
私が選んだ人が、王になるってことはだよ?
「誰を選んでも王妃コースになるってことじゃない?いやぁーーーっ!お母様、せっかく私、王族から逃げられると思ったのに、思ったのに、無理ぃ、無理ぃ」
冒険者になるんだい。
魔窟つぶして回るんだい。
魔討伐しまくるんだい。
魔法を好きなだけぶっ放しても怒られたくないんだい。
メイスでごすごす殴って、槍でぶすぶすぶっ挿して、剣でずばずば切り刻みたいんだいっ。