うへへへと笑う公爵令嬢に、違和感を感じなくなってきたら危険
「だが、女が武器を持つことや冒険者になることを否定はしない。いや、むしろ共に戦えれば楽しいだろうなとは思う。最後の最後は守るが」
ってか、分からん。
さっきから何を言っているんでしょう。
「だから、男だと思って武器を渡したわけじゃない。女のギーメに武器を渡しただけだ」
だから、何が言いたいんだ?
「ミスターリルって言ったの、エックじゃん……」
「だから、ミスターリルじゃなくて、ミスリルだって言っただろ?あー、もう、とにかくだ」
がーっと、エックが頭をかいた。
「武器なしじゃ不便だろ、いいから使え」
剣を押し付けられた。
ドラゴンの核……食べられない。
いらない。
えーん。こんな食べられないものいらない。
ぽいっと。
「馬鹿か!武器なしでどうする気だ!」
「武器なら剣が」
「お前の持ってたやつな、初心者用の鉄剣なら、それ」
と、足元を刺されると、なんか、バラバラの鉄片が……!
「しかし、よくそんなへなちょこで、ドラゴンの首切れたな?感心する」
あー、あー、そうか。ドラゴンだったもんなぁ。そりゃ剣もダメになるか……。
また、買おう。
でも、北の国でもギルドのお姉さん、お店紹介してくれるかな。1割引きになるといいな。
「おっと、ボスもやっつけたし、そろそろ魔窟が消滅するな」
ぼややーんと、ぼやけるように景色がにじんできた。
書いた文字の上にインクをたらしたように、景色がゆれていき、歪んで薄まる。
そして、魔窟だった景色が綺麗に消えると、なぜか魔窟の入り口だった場所に戻っているのだ。どれだけ魔窟の中を移動している感覚があっても、魔窟が消滅すると、入口の場所。
ただ、いつもと違うのは、魔窟の入り口だった場所には何もなくなった分けではなく、入口をふさいでいたドアだけが残っていた。
ああああああ、本当に、無くなっちゃった。
スライムの核がぁ!
私の、核がぁ!取れたての、新鮮な核!
色違いはもっとオイシイって聞いてるのに、食べられなかった。
うう。駄目だ、落ち込んではいられない。別の魔窟に行こう!
そして、今度こそ……。
核食べる……。
ふらふらと歩きだした私の腕をエックがつかんだ。
なんだよ、もう。
「忘れものだ。ったく、何かたくなに受け取ろうとしない?」
グイッとミスリルの剣を押し付けられた。
「いらない」
「はぁ?だから、なんで。お前にはお詫びを……いやお礼か。何かしないと俺の気が済まないんだ」
なんで?
馬鹿っていったことを詫びるつもりか?
だけど、もうどうでもいい。
ドラゴン倒しても美味しい核が出ないってことが分かっただけでもよかったよ……。本当に私は馬鹿だった。
大きな魔の物からは、大きいくてオイシイ核が出るなんて信じてたんだから。
……遠い目。
「おい、ギーメどうした、何でそんな目をしている。大丈夫か?さっきまでの元気はどうした?」
エックが私の目のすぐ前で、手をひらひらと振っている。
もう、だから、ほっといて。ショックから立ち直るのに少し時間がかかってるだけだから。
ドスンと、大きな衝撃音がして地面が揺れた。
「な、なんだ?」
エックがぎょっとして神経を張り詰めるのが分かった。
「後ろ!」
エックの後ろに、巨大なスライムが出現している!
「スライム!」
さっきのドラゴンと遜色ない大きさだ。
スライムなら核が食べられるはず!そうだろ?なぁ、そうだろ?
うへへ、へへへ。
ピクリとも動かないスライム。
こんなにデカいうえに、動かないなら核を傷つけずにやっつけるなんて、楽勝だよね?
さて。巨大スライム……。
べ、別に、魔の物の種類考えるのがめんどくさくて、大きくすりゃー別の種族とばかりに、巨大スライムにしたわけじゃ……
な、ないんだからね!
(´◉◞౪◟◉)
あ、察し……




