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災強令嬢の魔窟グルメ  作者: ハチャメチャとまと


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たらさないって、たらさないの。だから、私、そんなはしたないことしませんって!

 って、でも他の人はしないってどういうこと?

 青年が呪文を唱え始める。

「円豪の岩弾」

 ちょ、それ、私が盗賊たちの上に落とした巨大な岩が現れる呪文!

 いや、肉が潰れる!どういうこと?

 私が儀式に用いた輪切り目玉を並べた円を覆うようなサイズの巨大岩が現れた。

 ああ、私が出したものより二回りくらい小さい。でも、たぶん、学園の同級生たちはあのサイズの円豪の岩弾は出せない。

「着地」

 ドシーンと岩を落とすんじゃなくて、着地?

 そっと、儀式ステージの上に置かれた。

 いや、目玉が潰された―!

 って、愛着湧いてないよっ。

「業火、瞬時に対象物を灼熱の炎で包みこめ」

 青年が次の呪文を唱えると、ごぉっとものすごい熱が、巨大岩を包み込む。

 岩の下の下敷きになった目玉に火がついたのが見えたが、一瞬で消し炭になり、煙も出なる間も無かったようだ。

 岩の方は流石に真っ赤になっているが、姿は残っている。熱が引くことなく、熱そうだ。

「ちょっと、大きくしすぎたかな。もう少し抑えた物をイメージしたんだけど……」

 青年が頭を小さくかいた。

「……イメージより、魔法が大きい?」

「ああ、魔法のコントロールは得意な方じゃなくて……さ、でも準備はできたよ」

 準備?

「ほら、こうすると、薪を集めて火を起こさなくてもすぐに肉を焼いて食べられるよ」

 青年が肉を赤みが引いた岩の上に広げて置いた。

 するとジュ―っと音を立てて、肉が色を変える。

「塩と胡椒しかないけれど」

「胡椒?え?金持ちですね、ニックさん」

 公爵家の我が家では当たり前のように使っていたけれど。胡椒は高級品。

 学園の食堂メニューでは、ほとんど使われてなかったはずだ。

 貴族の金持ちがかよく学園の食堂ですら、思うように使えない高級品。だけれど、ときどきは使われる胡椒。

「金持ち?えーっと、まぁ、確かに実家はそこそこの金持ちだけど、胡椒は別に……自分で取ればただだからね」

「自分で取れば、ただ?」

 胡椒が?

 胡椒なのに?

 胡椒だよね?今さら、小姓とか言わないよね?

 ニックさんが、ポケットから砂のような色の指の先ほどの塊を出した。

 色が薄紫なら、核みたいだよね。

 それを、指先でぐっと潰して、粉にして肉に振りかけると、木の棒の先で焼けた肉を刺して私に差し出した。

「はい、どうぞ。とれたてだったらもっと胡椒の香りも高くて格別だけれど、まだ日数たってないから市場で売られているものよりはおいしいよ」

 ガブリ。

 モグモグ。

「あはははは」

 木の棒を受け取ることもせず、そのまま、目の前に現れた肉にかぶりつくと、ニックさんが大笑いした。

「本当に、よほどお腹が空いていたんだね」

 ニックさんが次の肉を木の棒の先にさして私に差し出す。

 ガブリ。

 モッキュモッキュ。

「あははっははははっ」

 ガブリ。

 モッキュモッキュ。

「あーははは、ははははははっ」

 ガブリ。

 モキュモキュゴックン。

「あ、ははは、はは、いや、もう、何、すごい、かわいい」

 ニックさんがお腹を抱えて大笑いしながらも、素早い動きで次々に私の前に肉を差し出してくれる。

 私、目の前に、肉あれば、そりゃ……食べるわな。会話などできる暇はないです。

 何がそんなにおかしいのかとか、あと、すんごく聞きたいことがあるんだけど、今はそれどころじゃない。

「いやぁ、こんなに幸せな顔して焼いただけの肉を食べてくれるなんて、見てるだけでこっちもあははは、楽しくなるねはははは」

 焼いただけ?

 何をいってんですか!

 胡椒もかけてくれたじゃないですか!

 市場で売られているものよりおいしいって言ったのニックさんですよ。

 マジうめーんですが。

 チョーうめーんですが。

 なんか、よだれが止まらない、そのよだれが潤滑油のような役割をして、肉がするする喉を通るんです。

 ええ、よだれ、ぽたぽたたらすなんてはしたないことはしてません。

 肉と一緒に飲み込んでますから!


リザよ、よだれは潤滑油ではないぞな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人はカニ食べてるときにこんなふうになります [気になる点] >貴族の金持ちが★かよう★学園の食堂ですら、思うように使えない高級品 [一言] うん! 「目玉焼き〜!」 ってオチではなかっ…
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