なぜ、ウォーターカッターにしたか、問い詰められる案件に気が付いていない
ガーデンパーティーを思い出す。
木を燃やして、その火で肉をあぶる。
「うりゃぁー!ウォーターカッター!」
ズバーンと音を立てて、倒れる大木。
「ウォーターカッター、スパパパパーンバージョン発動!」
次々と輪切りになる大木。
輪切りになった木を、集めて積み上げる。
いや違うな。
丸く円状に木を配置する。その中央に、ウサギを置く。
周りの木を全部燃やせば、中央に置いたウサギは、四方八方から焼かれるから、早く火が通るんじゃないかな?
私、天才!
さて、あとは魔法、魔法。ふふふふふーん。
木に業火……じゃないな、えーっと、ファイアーボールもだめで、あ、そうそう、着火、着火魔法なんてのがあった気がする。
周りに置いた木に、順に着火魔法を施す。
うーん、小さいファイアーボールみたいな、火種っていうんだっけ?が、ぽこんと乗る。
きっと、その火種から木に火がついて燃えて、そんでウサギが焼けるんだよね。
わくわく。
もくもく。
わくわく。
もくもく。
「げふっ、げほ、げほげほっ」
な、何?
大量の煙が、もくもくと上がり始めた。煙たい、煙たい。
煙幕?
誰かが私の食事を奪おうと、煙幕でもたいたの?
ウサギ、私のウサギが危ないっ!
敵はどこなの?!
煙でよく見えない視界。薄目を開いて必死に様子を探る。
あれ?
煙、木から出てない?
ウサギの周りの、輪切りにした木から出てますよね?
「はっ、もしかして、私、物を知らないから、間違えて、もくもくの木とかを使ってしまったのでは?」
もくもくの木……そんなものが世の中にあったなんて。勉強になった。
いや、火を消そう。煙たい。
「お水ばしゃー、」
ばしゃーっと、お水が出てきて火が消えた。
煙も出なくなった。ウサギの周りの輪切りの木の中心部、火種を置いたところとその周りが真っ黒になっている。
「大丈夫?こちらから煙が見えたようだけれど?何があったの?」
へ?
振り返ると、そこには一人の青年の姿があった。
「ご、ご、ごきげんよう」
にこりとわらって、カテーシー、スカートをつまみ上げて礼をするあれをしそうになって、スカート履いてないことを思い出す。
っていうか、今の私は初心者冒険者の少年!ごきげんようっておかしいだろ!
「ごきげんよう」
目の前の青年は、私のおかしな発言にも、何も言わずに流暢な発音で返事をしてくれた。
って、おかしいよね。
この場に絶対不釣り合いだよね。
目の前の青年、冒険者に見えない。魔窟の近くの森の中にいるような人物に全然見えない。
白い肌に、つやのある金色の髪の毛。後ろで一つに束ねた髪は、腰あたりまで伸びている。
整った顔立ちに、感情がよく分からない、笑みを浮かべている。
一目で上流階級の人間。貴族って思わせるようなその姿に、ここがどこだったかということをすっかり忘れて、王宮のシャンデリア輝く広間の幻影さえ見え、思わず慌てて挨拶をしてしまったほどだ。
改めてよく見れば、ちょっと高価そうではあるけれども、特別というわけではなさそうな金属の肩当胸当てを装備している。腰には私の初心者用のものとは違う、銘が入ってそうな剣も。
冒険者……だよね。
そういえば、お父様は公爵令息だったくせに修業とかいって冒険者になったらしいから、目の前の人もそういう可能性?
「実は貴族ですか?」
私の質問に、目の前の青年は笑みを崩さずに少し首を傾げた。
柔らかなつやつやの前髪がさらりと揺れる。
「君こそ、ごきげんようなんて、貴族みたいだったよ」
ぎくぅ。
まずい、やばい。汗。
むしろ貴族なんじゃね?そういうところ貴族っぽいよねって話をすればするだけ、私の方が貴族ばれしちゃう危険性。ごまかさないとと焦っていると、青年がふふっと笑った。
「ふふふ、でも覚えておくといいよ。男の子は、ごきげんようと言った後、右手を胸に、左手を背中に、こうして礼をとるんだよ」
あー、そうか。カテーシーしそうになったの見てたのか。
っていうか、なんだこいつ。すげー優雅に完璧に礼をしたぞ。この動き、マナーの先生も減点できないかんっぺきな動きじゃない?
ご覧いただきありがとうございます。
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ところで、Twitterでこの頃問題になっていた
★1つは嫌がらせなのか問題。
私は、★1つも全然嫌がらせだと思ったことないです。
むしろ、完結してから改めて評価する。今は★1つを「いいね」のつもりで入れておくっていう、声援だと思っています。
って、思ってたんだけど、ブクマ代わりに★1付けとくっていうのもあるそうですね。
世の中色々だぁと思いました。
そして、リザ……に、嫌がらせをする方法はもう、分かりますね。
目の前でオイシイモノ自分だけ食べればいいんです。
……ただし、命の保証は致しかねます。
リザ「わ、私は惨殺者じゃないもの!!!」
……。
だれが、信じるだろうか。