もったいない、もったいない、もったいない……もったい……な……い
「あ……えーっと……」
ぽたぽたと、なにかが地面に落ちているようだ。
「あー、よだれたらしてるー」
誰かが何か言ってる。
きっと私のことではない。
公爵令嬢が人前でみっともなく涎をたらすなんて聞いたことありませんもの。
「どうぞ」
ぽんっと少女が私の口の中に核を入れてくれた。
「!!!!!!」
んんん、んーーーーっ。
スライムの核も美味しかったけれど、ネジュミーの核はこれはまた……。フルーティーではなく、スッキリとしたさっぱりとした清涼感のある甘さ!
「本当に美味しそうに食べますね。色違いのとれたてはもっとおいしいんですよ。頑張ってとってね」
色違い!
そうだ、そういえばそう言っていた。
しゃがむ。
手を伸ばす。
ネジュミーのしっぽをつかむ。
両手に6匹。
「うわ、何、今の動き!」
「よだれマンすげー」
まて、誰ですか、よだれマンって!
「色付き!でてこーい!」
地面に、叩きつけるっ!
だっしゃーっ。
ん?
変な音がした。
手にはしっぽだけ残ってる。
ネジュミーの姿はない。あたりが濡れてる。
「うわー、まるで液体のように木っ端みじん……」
「核も残ってない」
へ?
しっぽの付け根、付け根、付け根……、さらさらとしっぽが形を失い手からこぼれていく。
「核、なんで?え?あれ?」
少女がニコニコ笑っている。
「力いっぱいぶつければいいわけじゃないのよ。もう少し力を押さえた方がいいわね」
はい、わかりました!
しゃがむ。
手を伸ばす。
ネジュミーのしっぽを捕まえる。
「おい、こんどは13匹も捕まえたぞ」
「よだれマン、ただもんじゃないな」
だから、誰ですか!よだれマンって!
そして、力を押さえて、押さえるんだ。
押さえて、地面に……。
「うおおーーーっ!核をよこしやがれぇぇぇ!」
どしゅーっ。
……。
ん?
あれ?
力を押さえ……ようと思いましたよ?
き、気持ちが抑えられなかっただけで……。
その、気持ちがね……。
少女がニコリと笑った。
「あなたはにはここは合わないようだわ」
うわーん。
知ってる。知ってた。
なんか、たぶん、無理って。
次は、ウサラビーだよ。
「いらっしゃい。ウサラビーは倒したことがある?」
また少女に話しかけられる。
はい。駆逐したことなら何度も。
……ううう。業火な魔法で、跡形もなく……。
核もまるごと跡形も……。
うわーん。
なんてもったいないことを私は今までしてきてしまったんでしょう。きっと、天罰が下るんですわ!
お母様も言っていましたもの。
美味しいは正義!美味しいを阻むものは馬に蹴られて死んでしまえ!と言っていましたもの。
……でも、お母様、私疑問なんですけど。
馬に蹴られて死ぬ人ってどこにいるんでしょう?
誰も死にませんよね?お父様なんて、馬に蹴られても喜びそうなんですけど?
あとね、お母様……。魔窟はつぶすもの!ってお母様の教えなんですけど。
……こんな美味しいものが取れるなんて教えてくれなかったじゃないですか!
うん。なんとなく、知らなかったような気もするけど……。お母様……。とれたて、最高です。帰ったら教えてあげます。
……あ、誰も収穫できないかもしれないけど……。
「ウサラビーは、こうして耳をひっつかんで」
うんうん、そこまではできる。
その後、蹴るの?
……無理そうだよ。
その後、殴るの?
……無理そうだよ。
その後、剣で切るの?
……で、できるかな?




