北の国に入国したからには、することは一つですわ!レッツゴーなのです
「確か、私と婚約をなさった候家の方が、次期国王になるというお話でしたわね?」
使者の4人がハッと顔を引き締める。
「は、はい。それは」
「ですが、その、リザ様のお気持ちは最優先させていただいて」
「そ、そうです。無理に押し付けるようなことは」
「気に入っていただけるよう、誠心誠意」
焦ったように言葉を続ける4人。
そうか。一応、私に申し訳ないなぁっていう気持ちはあるわけだ。
でも、そんなに申し訳ないって思う必要ないですよ。
にこりと笑う。
「候家の皆様は、北の国を出ることができないと伺いました。ここはもう、北の国ですわね」
ハッとして、使者の4人が青ざめた。
「あ、いや、あの、決してリザ様をこちらまで迎えに来なかったのは、ないがしろにしているわけではなく……」
「お、王都で、その、盛大にお迎えの準備を、その……」
ああ、なるほど。気が付かなかったけれど、確かに、ここまで来ても良かったんだ。
「誰一人来てない……のですわねぇ」
どうでもよすぎて気が付かなった。
けれど、これで、候家の、私の婚約者候補の4人が4人とも私の顔を知らない状態でスタートなんだ。
ちょっと私に有利すぎない?
使者たちが真っ青になる。
「では、今度はご本人が直接私に会いに来てくださいます?私が北の国にいる期間は3年です。どなたが私を捕まえに来てくださるか、楽しみにしておりますわ」
この3年というのは話し合って決めたことだ。
いくらなんでも一生逃げ回るわけにはいかない。北の国も、ずっと次期王が決まらないまま何十年も時間をかけるわけにはいかないということで納得してくれた。
つ、ま、り、私ってば、たったの3年逃げられれば、自由の身よ?
「は、はい、もちろん。必ず本人が」
「そう、その言葉を聞けて良かったわ。配下に連れてくるようにと命ずるような方とはお会いしたくありませんもの」
だって、そうでしょ?ずるいよね?
私は一人なのに、無効は無数の配下がいて、私を捕まえようとするなんて、ずるいよね?
さて。これで、伝えることは伝えたかな。
「それでは、ごきげんよう、皆さま」
にこりと笑って、大地を蹴る。
びゅーん。
「え?リザ様!」
「どちらへ?」
「おい、リザ様を追え!」
「いや待て、リザ様は若君に直接迎えに来るようにと」
「そういうことか!すぐに戻ってご当主様に報告を」
「王都で準備を整えている場合ではない、すぐにリザ様をお迎えに」
なんか焦った声が聞こえる。って、のんびり相手の出方をうかがってる場合じゃないのよ。
森の中を駆け抜け、気配を探り、周りに追ってがいないのを確認してから、かつらをぽーい。
ぐっふっふ。
天才な私は、実はかつらをかぶっていたのでーす。
街に準備に出て初めにしたことは、髪の毛をバッサリ切ること。んでもって、元の髪の毛に近いかつらを買って、かぶってました。
それからドレスを脱ぎ捨てる。
ぽーいっと。
ドレスの下から出てきた服装は、どこにでもあるようなシャツ、どこにでもあるようなズボン姿。
むっふ。
そうです。
私ってば、天才。こんなこと思いつくなんて、他にいないんじゃないかしら?
女性の私が、男の恰好をするのよ!
もう、これで、絶対に見つからないわよね!
しかもよ、しかも!
忘れずにひっつかんできた荷物の中から、冒険者としての装備を取り出す。
ちゃんと、買いそろえました!
ギルドへ冒険者登録に行ったときに、親切な受付のお姉さんが「初心者セットの販売を行っておりますが、お求めになりますか」って教えてくれたのだ。「こちらのカードを持って行けば、提携の武器屋で1割引きで購入できます。私には3パーセントが入ります。お互いにウマウマなので、ぜひ」
と、1割引き券までくれたの。
お姉さんってば本当に親切。
3パーセントが何なのかはよくわかんなかったけど。
いつもご覧いただきありがとうございます。
ギルドのお姉さん……インセンティブもらってるのね……そう……遠い目
さて、別のところでも色々こう、つぶやいているんですけど、名前が覚えられません。
国の名前が、いつまでも北の国って言ってるのも、住んでた国の名前が謎なのも、他の西の国やなにやらの名前が無いのも、考えるのもめんどくさいし、覚えておくのも難しいからだったりします。
だから、北の国は、「カイドー」とか、西の国は「カンサーイ」とかそんな感じに決めようかとも思ったんですが、やめました。
……今後国の名前がどうしても必要になったら、決めます。
っていうか、北の国っていう言い方も、リザの住んでいた場所から方角を現しただけなんで、北の国の中の人が北の国っていう認識あるのかな?とちょっと心配になったけど、日本の中での出身地を言うときに「北国出身です」とか言うから、大丈夫なのかな?
むしろ、日本って、北国と南国は言いやすいよね。
あー、ところで、この間はじめてツイッターでスペース(知ってる?)を使って北国や日本海側の豪雪地方の作家さんとお話をしたんですが……
「雪国で雪は食べない」
……マジですか?
雪が普段降らない地域の人間の8割以上は、子どものころ、雪がつもると、食べてたと思うんですが。
雪国では雪は食べない……マジですか?!
っていう、ちょっとしたカルチャーショックを受けていた。
というわけで、国の名前は、まだ、ない。




