異能開花 その3
この小説を想像よりも多くの人が読んでくださっていてうれしいです。
これからも駄文が続くと思いますがなにとぞよろしくお願いします。
祝詞の内容はで粗目です。
もっと良いものが思いついた方、ご連絡お待ちしております。
聞間真千佳はフランス人の父を持つ。
それは彼女の自慢の一つである。
真千佳の父の名前はPaul d'Urfeだ。
ではなぜマチカ・デェルフェでないか?
理由は彼女の父が日本文化大好き人間だからである。ポールが言うには日本旅行でてんぷらを食べて、ここに永住することを誓ったらしい。苗字も日本風がいいということで母方の苗字の聞間を名乗っている。ちなみに仕事先で名刺を出す時はどや顔で相手に渡すらしい。
そんな彼の血は真千佳にも流れており、色素の薄い髪や瞳を持っている。
これも彼女の自慢の一つだ。
そんな彼女はわくわくしていた。
理由は彼女の前に案内人の巫女が歩いているからだ。神楽殿に入る段になって、突然音もなく彼女が現れた時は歓喜の悲鳴を上げそうになった。担任の殺気のような視線を感じて慌てて口を結んだが。
案内人の巫女はそこいらの神社の正月にいるバイト巫女と異なり、白の小袖に緋色の袴、黒々とした長くまっすぐな髪を1本に束ね、白の和紙が巻かれているという服装と奥ゆかしい雰囲気が真千佳には本物を感じさせた。
真千佳は好奇心でヘーゼルアイを輝かせながら思った。
(パパなら「C'est le vrai Miko‼」ってさけぶやろな)
彼女自身もこの尊厳な場で罰が当たりそうだがスキップしそうだ。その気持ちを表すように太陽に輝く彼女のポニーテールが揺れる。
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真千佳の真後ろを歩く鞠子は楽しそうに揺れているポニーテールをみてひやひやしていた。
このままだとスキップどころか小躍りまでしそうだと。
清代鞠子はとても仲のいい家族と暮らしている。
彼女の家は昔からある大きな家をリフォームした二世帯住宅。そこに彼女の母方の祖父母と父、母、そして9個下の弟の6人で暮らしている。皆几帳面で明るい性格、そして平和主義である。
彼女の祖父は畑仕事が好きでガーデニングを趣味としている。この前も大きな春キャベツが8玉とれて、食事の7割がキャベツ色に染まった。祖母は旅行が好きで、お気に入りの国はニュージーランド。父も母も同じ地元の会社の正社員。弟は9歳とまだ反抗期もなく、よくリビングで難しそうな顔をしながらワークと格闘している。
そんな彼女にはmyルールがある。
例えばトマトは絶対に食べない。例えば朝起きたら最初にベッドメイキングをする。例えばどんなに忙しくても1日に1回は自分の部屋を大掃除する。例えば勉強をする際、どんなに無駄でも省けない手順を持つ。例えば今使ってない家電はコンセントを抜き、所定の位置にプラグを置く等々。
彼女はこのルールを他人には強要もすすめもしないが絶対に譲らない。変化を嫌い、平和主義な努力家。それが彼女である。
そんな彼女はこんな 異様な場所では滅法弱い。
巫女がおもむろに止まり、襖を開きながら初めて口を開いた。
「こちらのお部屋でお待ちくださいませ。おひとり様ずつお呼びさせていただきます」
まるで真綿のように柔らかなのに機械音のようにも聞こえる不思議な声だった。
怖すぎる。
鞠子には人間の声には聞こえなくて、泣きそうになった。 もともと長い廊下を何度も曲がって、廊下に仕切りとなる杉戸を何度も開け、まるで迷路で迷子になりそうだと不安だったのだ。そして追い打ちのようにこの巫女、さっきの声もそうだがまったく目が合わないし笑わない。それに年齢不詳だ。15歳の乙女のようにも見えるし、30歳の大人の女性にも見える。
鞠子は思った。
(まるで能面みたい、巫女さんってこんなもんなん~?泣きそう~!)
その巫女の目を覗き込もうとする愚者・真千佳のカーディガンを鞠子は慌てて引っ張った。
開けられたふすまの部屋は畳の上に等間隔に置かれた紫の座布団以外何もなかった。
彼女は震える手を握りしめながら、早々に座った真千佳の隣の座布団に正座した。すると喋りたそうなキラキラの顔を隣から向けられたが無視を決め込んだ。悪魔や閻魔よりも怖い担任にこれ以上どやされたくない。それに今は受験期だ。先生から見放させるような真似は避けたい。
そこから鞠子は早く自分の名前が呼ばれることを願ったのである。
横のおしゃべりが声を発する前に。