42話 サプライズ
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執仕ベルside
1期生の九阪かかえ、塔道あきり、3期生の振上シロネのオフコラボは大盛況で幕を閉じ、ファンの間で幼馴染ーズというグループ名が付けられた。
チャンネル登録数は10万人突破した後も勢いは衰えず既に11万人を超えており、同じように九坂かかえと塔道あきりのチャンネル登録数も伸びている。
その影響は外部だけでなく、内部にも広がりを見せていた。
「という訳で、私たちもそろそろコラボをしたいという訳ですが」
フェン『今のところ、色違いポ〇モン並に難しそうよね』
チロ『もしくははぐ〇メタル?』
ミルマール『あながち間違いとは言い切れないから、困っちゃうわ』
「ですね。やんわりと誘ってもダメなのは既に分かり切っていること。だからイケイケで攻め攻めなお誘いをしなくてはなりません」
なのでこうして私たちは再び作戦会議をしている訳です。
はて、可笑しいですね。私の発言のあと、静かになる会議通話。皆さん急に黙ってどうしたんでしょう。
フェン『イケイケで攻め攻め……?』
チロ『フェンそこはツッコんじゃだめだよ』
ミルマール『ベルは偶に言葉が古いわよね』
「…………皆さんやる気あります?」
『『『あります!』』』
「まったく……仕方のない人たちですね』
急に人の発言に対してイチャモンを付けるなんて、弛んでいますね。
あれから私たち2期生も大型コラボを行い、前よりも仲が深まりました。
以前より軽口を言い合ったり、呼び方も変わったりと仲の良さも深まり、チャンネル登録数数も伸ばし、順風満帆と言っても良いでしょう。
フェン『早くコラボしたいわね。唯一出来ていないのがシロネだけで、そのせいで偶に杞憂マロも飛んでくるし』
フェンちゃんの言う通り、私たちがシロネさんとコラボしていないのは不仲の所為だからと邪推して、杞憂に駆られてマシュマロで心配するコメントを送ってくる人が居ります。
この様に杞憂民と呼ばれる方々が発生するのは、良くあることなので仕方がない事ですが、コラボをすれば解消できる些細な事なのでさっさと解決してしまいたい、そんな気持ちもありますが、何より私たちがシロネさんとコラボをしたいという気持ちが強くてこの様に集まっている次第なのです。
チロ『やっぱりかかえ先輩のように、それらしい理由を付けた誘い方をしないとダメなんだよね、きっと』
「そうなりますね。なので、その口実を如何にして作るかがカギになってきます」
ミルマール『流石に同じ方法は使えないわよね。ほんとあっという間にコラボを取り付けたのには驚いたわ』
「そうなんですよねミルさん。その手があった!ってなりましたよ、ほんとかかえ先輩の早業には脱帽です」
今思い出しても、してやられた感があってガックシとなりそうですが、ここでめげていても仕方のないことですね。
かといって、かれこれ何十回目になるかも分からない、いいえ盛りました。5回目になるシロネさんとコラボしようの会ですが、これといった成果がありませんでした。
しかし今日は違いました。
チロ『あっ!それならこんなのはどうかな。あのね――――――』
チロちゃんから出た案に驚きましたが、確かな手ごたえを感じた私たちは早速準備に取り掛かるのでした。
乙倉湍side
かかえちゃんたちとのコラボあと、ファンの人たちから、またやって欲しいという声をよく目にするようになった。
VTuberといえば、ソロ活動も良いが、推しが他のVTuberと絡んで生まれる一瞬のエモさや面白さは何にも代えられ無い、という事は分かっているけど僕自身がその様に思われるのはなんともムズ痒い。
痒くもない背中や腕がゾワゾワした感覚になるよね。
「でも嬉しくて顔がニヤケてしまう湍たんなのであった」
「……ねえ、なんでお母さんがここに居るの?」
耳元で聞こえる今世で一番聞いた声。
いつの間にか横に居たマイマザー。気配すらなかったけど、忍者か何かかな?
「ノックしてって言ってるよね」
「したけど反応がなかったんですぅーーー」
「そんな拗ねた様に言ってもかわ……かわいい……だと……」
自分の母親ながら綺麗な顔立ちの所為で20代後半と言われても通用するから、普通に似合ってしまう。街中を歩けば姉妹と間違われることなんて日常茶飯。
背丈も低すぎず高すぎずプロポーションも良しで、なぜこの要素が僕には受け継がれなかったのか。いや、心は男のままだから受け継がれても全然嬉しくないけどね?でも、背丈が小さいからもうちょっと大きくなりたかったという僕の想いとは裏腹に、成長することを拒み続ける身体。
一瞬遠い目を仕掛けたけど、意識を戻して問いかける。
「それで何しに来たの?」
用もなく来ることはないは……いや、過去に愛娘を抱きしめに来た、恋しくなって、ほっぺスリスリしたくなったから、膝枕してあげたくなったからとか、そんな理由でやって来る人だった。
まさか今回もそんな感じ?
「確かに、抱きしめてほっぺスリスリしたあと膝枕しながら頭なでなでしたいけど」
「僕の心の声を読むのやめて?」
「今は、シロネたんのお祝いに来たのよ」
「オイワイ?」
頭の中が?で埋め尽くされる。
#お祝いとは?、ツイートよし。きっと偉い人が教えてくれるに違いない。
「こらこら、脳内ハッシュタグツイートしないの」
「だからなんで分かるの?」
ウチのお母さん、もしかしてエスパーなのでは?
「でもお祝いされることなんて……あっ」
湍たんと呼ばないで、シロネたんと呼んだってことはVTuberとして。
という事は、もしかして―――
「10万人突破のお祝い?」
「イグザクトリー。とっておきのプレゼントを持ってやって来たわ!」
「とっておき…………ゴクリッ」
お母さんが『とっておき』と付けた時は、大体が高額なプレゼントを渡される。
以前『とっておき』を貰ったのは高校卒業の時で、24インチの液晶タブレットだった。20万ちょっとの品物をポンと渡された僕の気持ちを想像してみて欲しい。
今でも大事に使わせてもらっているけど、貰った時は驚きすぎて放心してしまったのを覚えている。
ドキドキしていると、お母さんは部屋を出るとすぐに戻ってきた。なんと両手に抱える程大きな箱を持ってやってきた。綺麗に包装されており、何かは分からない。
「うんしょっと、ちょっと重たいわね」
足元に下ろされた箱からは、確かに少し重たそうな音が聞こえた。
厚みのある板の様な形をしているけど、一体何が飛び出てくるのかな。また高価なモノなんてことないよね?(フラグ
「はい、開けてみて♪」
「うっうん」
ラッピングを綺麗に剥がすと、段ボールが現れる。
こっこれは、自作パソコンを販売している大手メーカーのロゴ!?
「おっおおおお、おかっおかあしゃん!」
「ふふふ、どうしたの?」
「こっこれ、こっこっコっこりぇ!!!」
まっままままま待って、本当に待って。
『とっておき』+『パソコン』=『超高価なパソコン』の図式が直ぐに成りたったんですけお!
もう僕の心臓が大きく振動を刻んでいて体中が震えているんじゃないかと思う程だ。お母さんは目線で、さあ早く開けてみて、と訴えている。
促されるまま、震える手で包装紙を剝がし終え段ボールの蓋を開けると、白色のボディーが現れ、それを手で引っこ抜くと側面がガラス張りのロボっぽいフォルムをした物が出て来た。
「かっかっこいい…………」
それはタワー型のデスクトップパソコン。
自作系の多くは黒色で箱型である。しかし、これは正面の頭部は傾斜になっており、縦型のファンみたいになっており、全体的に傾斜などが付いており、見た目からゲーミングパソコンっぽい。
「折角だから、繋げてみて」
「うっうん」
スペックを見るべく、とりあえず机の近くに置いて電源やモニターを手早く繋げていく。起動すると、パソコンの一部が輝きを放つ。
「ふぉわああああ!」
その様子だけでもテンションが上がる。逸る気持ちのまま、立ち上がったパソコンの画面からスペックを表示。
「ミ〝ャ〝ア〝!?」
そこに映っているのはハイエンドに近いスペックが並んでおり、グラフィックボードなら上から2番目で、それだけで10万近くする。
たぶん、全体で50万程するんじゃないかな……?
「おっおおおおおおおあかあああしゃん、こっこりぇ、ほっほほほほんとうにもらってもいいの?」
「もちろんよ。配信でオンラインゲームが出来ないシロネたんへのお祝いなんだから」
「なっなぜそれを」
これは誰にも言ったことが無い事。
最近のオンラインのパソコンゲームはグラフィックが良い。しかし良過ぎるあまり、現状のパソコンだと配信しながらゲームをするとカクつくのだ。
だから、ある程度お金が溜まった今、何を買おうか悩んでいた。
もちろん、お母さんにも、誰にも相談はしていない。
「だって、そのパソコン自体は湍ちゃんが中学校に入学した時に私が買ってあげた物だからね。丁度困っているんじゃないかと思ったの」
「……そうだったね」
ちなみに僕が買おうか悩んでいたのは、予算20万程のデスクトップパソコン。
その倍ある物が手元にある。
「こんなに良い物じゃなくても良かったのに……」
嬉しさもあるが、良過ぎる物を貰ってしまい申し訳なくなってしまう。
「湍ちゃんが自分で買おうと思っているのは分かっていたわ。カタログとか見てたの知ってるし」
なんてこったい。まさかそこからバレるとは。
「でもね、母親としてはもっと甘えて欲しかったの。だから、ね?」
ほらほら他に言う事があるでしょ、とお母さんが目で訴えてくる。
そうだった。まず一番初めに言わなければいけない言葉があった。
「ありがとうお母さん。大好きだよ」
これは高いプレゼントをくれたからじゃない。
こんなコミュ障でチンチクリンな僕を愛してくれる人への感謝の言葉。
「私も大好きよ湍たん!そぉーーーれぇ!」
「ミャ!?」
お母さんは僕を抱き抱えてベッドへダイブ。
その後、無茶苦茶ナデナデされるのであった。
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