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36話 閑話8 湍たんをVデビューさせるまで

今回はお母さん視点のお話となります。

 私には可愛い可愛い、それこそ目に入れても痛くない娘が居る。

 臆病で人付き合いが下手だけど、甘えん坊でとっても優しい子。


 どうやら最近はVTuberというものにハマっているみたい。愛しの娘が好きな物は私も共有したいから見始めたけど、結構面白いのね。

 私の湍たん程ではないけど可愛いキャラやカッコいいキャラが画面越しに動き、喋り、ゲームをする。


 更に見ていくと、面白いと言われる子達にある程度の共通点が見えてくる。

 それはある種の人間性。プラスな表現をするならば個性的な人。


「私の湍たんもVTuberデビューしたら人気が出そうね……」


 あの可愛らしい声を独占したい気持ちと、日本中、いや世界中に知らしめたいという気持ちが背比べをし始める。


「とりあえず、先に相談とかに乗れるようになっていた方が良いわよね」


 もしあの子がVTuberになりたいと言った時の為にやってみても良いかもしれない。頼れる母親として大きい背中を見せてあげなきゃ。 


「そうと決まれば行動あるのみね♪」


 昔稼いだお金を切り崩して、私は準備を始めた。




 最近の流行りや湍たんの好みなどを取り入れたVTuberとしての皮と呼ばれるキャラクターが出来上がった。制作費は思っていたよりも桁が1つ程少なかったのは大きな誤算。

 最近ではあまり着飾らせてくれなくなったけど、沢山かわいらしい服を買ってあげられるわね!


 VTuberをやるにあたり、しっかりと学んできた。

 先生はもちろん湍たん。今どんなVが流行っていて伸びているのか興奮気味に話してくれる。ホント可愛い。

 もちろん、自分でも活動する方向性を勉強して決めた。


 ついに第2の私であるVTuberが完成した。

 名前は九津々(くつつ)(かい)

 母性の象徴である海を冠した名前の青髪ツインテの少女。ブラの様な群青色の服に上着の役割を果たしていないスケスケの半袖。長袖セーターを腰に巻き、その下には太めのベルトに黒に近い青の短パンとストッキング。

 まるでギャルの様な見た目をした女の子。

 性格は気さくで明るくノリがよく、たまに軽く相手を煽る様な言動をする所謂メスガキの様な女の子。しかし、本当は面倒見が良くバブみがあるという設定だ。


 そして今日、九津々海(わたし)がデビューする日。

 T〇itterでは、九津々海のイラストレーターさん、所謂ママと呼ばれる方から宣伝を行ってもらい、色んなVTuberの先輩方に絡みに行ったりした。

 その御かげで個人勢としては珍しく、初配信の待機が1,000人。

 さてと、リスナーの期待を超えて行けるように頑張ろうかしら。


 きっとモニターの向こうで見ていてくれるであろう娘の為にも。



『《九津々海》みんなヤッホーーー☆《初配信》』

1057人が視聴中


コメント:ついに始まる!

コメント:きちゃー!

コメント:wktk

コメント:ママはカカートンさんだろ

コメント:ビジュアルくっそこのみ

コメント:分かる


「やっほーーー!皆の衆初めまして。余は九津々海でーーーす!可愛い余を応援してね♪」


コメント:キャラが濃い子が来たw

コメント:この見た目で余キャラとかマジかよ、ファンになりました

コメント:皆の衆www


「皆の衆って言うのは余のファンリスナーの事ね」


コメント:既にリスナー全員を自分のファン呼ばわり

コメント:こいつは大物になりそう

コメント:ん~~~このメスガキ臭

コメント:分からせなきゃ・・・


「うわーーーいっぱいコメントが来てる!すごーいすごーい。それじゃあ余の事をもっと知ってもらう為にプロフィールから紹介していこうかな」


 いつもよりもハイトーンで元気な娘を演じる。

 反応は様々だけど、あまりマイナスに捉えられていない様子で掴みは狙い通り。


「九津々海、年齢は142歳で海からやって来た女の子だよ♪ 知的好奇心旺盛で色んな事に興味があって海から飛び出て来たんだ。でも、地上の皆の衆はなんだか元気がない人も多いみたいだから、そんな皆の衆を癒して上げれたらいいなって思っているよ♪」


コメント:まさかの母性枠

コメント:ママァ・・・

コメント:そうか、俺疲れてるんだ

コメント:生意気系と思いきや癒し枠!?

コメント:なんていうギャップ


「という事で早速、募集していたマシュマロを読んで行こうと思いまーーーす♪」


『愚痴マロもOKという事で送らせてもらいます。

 最近、残業が多くて疲れています。なのに行きたくもない上司から飲み会にも誘われて貴重な時間を使われて辛いです』


「だって。この皆の衆ちゃんはとっても頑張り屋さんなんだね」


コメント:うっ・・・

コメント:俺の事かな?

コメント:残業・・・上司・・・飲み会・・・ウッ

コメント:カエラセテカエラセテカエラセテ


「あらら、なんだか似たような皆の衆も居るみたいだね。みんないつもお仕事がんばれて偉い偉い。がんばり過ぎて体を壊さないようにしてね?」


コメント:こんなこと言われたの初めて

コメント:がんばりゅ!

コメント:ママぁ・・・・・・


「あはは♪ 年齢は高いけど、人間でいったら余はまだ子供だよぉ? でも、ヨシヨシしてあげるね。ヨシヨーシ」


コメント:なんだろう、心が落ち着く・・・

コメント:バブみがしゅごい・・・

コメント:海ママァ!

コメント:実は俺、海ママから生まれたんだ

コメント:むしろ今生まれたわ

コメント:皆の衆になりました


「ここに来てくれただけで、もう皆の衆は皆の衆だよ♪ 辛いことがあったらマシュマロで送ってくれてもいいし、余の配信に来て癒されてくれたら嬉しいな」


コメント:癒し代投げさせて

コメント:なんでスパチャできないの、バグ?

コメント:海ママぁ

コメント:早くスパチャ解禁できるように成って欲しい

クラハセ:今後も応援していきます!


「わーーーい、応援してくれてありがとう! これからも配信頑張ってやっていくから、皆の衆も付いて来てね♪」


 コメントに対応していると、気になるアカウント名が見えた。

 クラハセ、奇しくも娘の乙倉(おつくら)(はやせ)のモジりに似た名前。もしかして?

 私は予想を胸に秘めながら、初配信を終えた。




 そして、その日の夜。


「ねえねえお母さん今日ね、とってもかわいいVTuberがデビューしたんだよ!」


 嬉しそうに報告する愛娘の姿。

 期待通りの反応で頬が緩む。


「そうなの? どんな子なのか教えて」

「見た目はギャルの少女っぽいんだけどね―――――」


 これからの未来を予想しながら、可愛らしくアレコレ語る姿を堪能した。

 





 さらに月日は流れ。

 私のVTuberとしての活動は予想以上に楽しく、個人勢としては順調に成果を出しており、この間チャンネル登録者数30万人を突破して記念枠を行った。

 その際に、湍たんがイラストで稼いだお金でスパチャするのだと意気込んでおり、その姿に密かに悶えてた。

 実際に投げられた赤スパチャで『この日の為にイラストで稼いできました!』というコメントが来たときは…………危うく発狂しかけたわ。


 余りのいじらしさと可愛らしさに、溢れ出る愛を叫びそうになったのを我慢した自分を褒めてあげたい。

 もう湍たんはお嫁には出しません。むしろ私が結婚します。(真顔


 なんて余談はこれぐらいにして……ついにこの時がやって来た。

 Vワールド3期生募集。

 もしかしてと思い、こっそりと寝静まった湍たんの部屋に侵入。

 パソコンを覗いてみれば動画がデスクトップに鎮座している。


「湍ちゃん、ちょっと借りるわね」


 小声で語り掛けるが、寝ている湍たんから返事はない。

 悪いと思いつつも、私は自室に動画データのコピーを持ち帰り中身を拝見した。

 

 内容は、湍たんが恥ずかしそうに自己紹介をしてゲームを行う動画だった。

 恥ずかしがっているだけなのに、庇護欲を誘う。まさに生まれ持った才能に、自分の娘ながら末恐ろしい。

 次は有名なゲーム、マ〇オカートをプレイし始めた。プレイしながら「VTuberになったら沢山のリスナーさんとやりたい」と零したところでギュッと胸を締め付けられる。

 待っててね湍たん、お母さんが叶えてあげるからね!

 動画のクオリティーも良いから、これなら合格できそうだわ。


 こうして湍たんはVTuberとしての道を歩むことになった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 余談ってことはお母さんは娘とけっこn…(殴)
[一言] いつも楽しく読ませて頂いてます この小説きっかけにVTuberを見るようになってはまりました(笑) 責任とって、これからも楽しい続きを宜しくお願いします
[良い点] てえてえがすぎる… [一言] いつもありがとうございます、生きる糧です
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