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忌血  作者: 宇佐見 林檎 (リンゴ)
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ゆめ?……夢?

むこうのほうにちょこんとすわっているこがいる。しろい、きれいなかみのこども。ひざをギュっとかかえて、なきながらすわってる。()()はそのこにちかづいた。ちかくでみればみるほどきれい。"ととのったかおだち"っていうのはこういうこのことをいうのかな?

「ねーねー、どうしたの?」

ぼくはともだちになりたいとおもってそのこにはなしかけた。

「ちかづかないで!」

はっとしたようにかおをあげてぼくをみる。やっぱり、ないてる。ないてるとはおもったけど…かおがみえなかったんだよね。

「なにか、かなしいことがあったの?」

そのこはブンブンとくびをよこにふった。

「で、でも、きみはオオトモけのこ、なんでしょ?」

「ちがうよー?ぼくはきみじゃなくて、カナタっていうの!それにねー!ぼく、ナツキけのこなんだよ!」

そのこはキュッとかたまっちゃった。おこられる、とでもおもったのかな?だってぼくもおこられそうになったらキュッてするもん。

「ぼくはおこらないよ!」

そういうと、そのこはまたキュッとしちゃった。

「ねー、だいじょうぶだよ?」

キュッとしている()をうえからそっとにぎった。

「もう、こわくないよ!」

そのこの()からぽろぽろとなみだがおちてる。あ、ぼく、きづいちゃったかも!

「こころが、いたかったの?ぼくがいるからだいじょうぶ!いたいの、いたいの、とんでけー!」

それでもまだないてる。だから、ニコーっとわらってみた!

「ありがとう、ボク、もういたくないよ…」

ヘロヘロしてるけど、そのこもわらった!

「よかった、わらった!」

ぼくがいったら、そのこはやっときづいたみたいで、まっかっかになってた。

「ねーねー、なんていうの?」

「ボクは…セツ。セツだよ」

「じゃあ、セッちゃん!セッちゃんだね!」

ふたりで、ニコニコわらいあいごっこしたんだ!


「カーナタ」

おかあさんがいう。おかあさんはまっくろなかみをしてて、すごいげんきいっぱい。めがまっかなの。

「カーナタ」

おかあさんはぼくのいもうと、か、おとうとをうんだんだって。ふんばってたからアセでびちょびちょ。

「ほら、カナタ」

おかあさんがぼくをよぶんだけど、ちょっと、こわい。

「カナタ、大丈夫。トオンって言うんだよ。ちっちゃくて、ふにゃふにゃ。だっこ、してみる?」

そういわれてみたおかあさんのうでのなか。ほんとにちっちゃくて、ふにゃふにゃ。おさるさんみたい。

「こ、こわいの…」

おかあさんはちょっとおどろいてるけど、ニコッとする。

「大丈夫。壊れないよ?」

ふにゃふにゃなのに?こわれないの?でも、やっぱりちょっとこわい。

「こわいの…」

ブンブンくびをふる。こわくて、こわくてなきそうなの。

「もー…カナタ、意気地無しね?仕方ない、えーい!」

おかあさんがえーい!ってぼくのうでのなかにいれた。ふにゃふにゃ。ちっちゃくて、こわい。でも、あったかくて…こころがほわほわする。ぼく、すごくうれしい。

「カナタ、泣いてるの?よしよーし、その子は、カナタの…だから、大事にしてね?」

ぽろぽろなみだがおちるけど、

「うんっ!」

っていった。


「おにーちゃん!あそぼ!」

「いーよ」

「あ!二人とも、ちょっと待って、はい、これ」

おかあさんの()にはきらきらひかるとがったみどりいろのいしがある。

「なあに?これー。おにーちゃん、ふたつあるね?わけっこだね!」

「そうだね、でもおかあさん、これどうするの?」

「これはねー、耳につけるんだよー」

おかあさんがニコッとわらう。けど、どうやって?ぽーちのなかにいれてもちあるくわけにもいかないでしょ?

「見ててー?」

そういって、おかあさんがりょうてをとじてしまう。

「それから…ほい!」

おかあさんの()からでてきたのは、さっきのいしにきんぞくがついたものだった。

「おにーちゃん!おかーさん!トーンしってるよー!これねー、きんぞくっていうんだよー!」

「そうだよ、トーン、よくできましたー!」

「おかあさん、トーがよくできても、ここからどーするの?」

「まあまあ、そう急かさないでよ。ほら、ふたりとも、背中合わせにしてー?」

せなかあわせにしておかあさんのほうにむいたみみにひとつずつつける。

「なんかこしょばい…?」

「おかーさん、これ、とってよー…」

「でも、それ、おかあさんのだーいじなものなの。とっちゃダメだし、なくしてもダメだよー?」

「わかった」

「トーンもわかった!」

「じゃあ、約束。指切りげんまん、だからね?」

「ん」

「うん!」

ぼく、ちょっとはずかしかったから。なんか、こそばゆくて。トーとか、おかあさんをちゃんとみれなかったきがする。

「トー」

「なあに?おにーちゃん!」

おっきなわらいがなんかね、こわい…なんていえないけど。おにいちゃんはこわいの、っていえないけど。ぼくはね、なんか…ちがう。

あのね、トー。ぼくは、おふろにはいったり、ねようとしたりしたときにね、()がまっかになるんだ。あたまがかゆくなったときもあるの。トー。ぼくはね…

この『しあわせ』が、こわれちゃいそうでこわいの。

トーがわらうたびにね、そのかおがこわれちゃいそうで。かなしくてゆがんだかおがわかる。そうなりそうなんだよ。ちがうかもね。

トーが、ぼくがおぼえていることからきえちゃうのかも。

かがみみたいに、パリンって。

こわい。ねるまえに、からだがふるえるの。おふろにはいってても。おふろのかがみに、まっかな()をしたぼくがうつったことがあったの。ぶるぶる、ふるえる。それからずっと、ぼくがぜんぶこわしちゃいそうで。こわい。

ねえ、トー。おにいちゃん、たよっても、いいかな?

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