代理署名は果たしてばれないものなのだろうか。
「よ、よろしくおねがいします」
普通に自己紹介がイケメンだった。否しかし生徒会長をアレ扱いするところを見ると、仲がいいのか、それとも付き合いが長いのか。
一番最初に出会ったのが碧仁先輩だったからというのもあるが、生徒会役員は全員変人なのではないだろうかという、いらぬ心配をしていた。そんなことはない、と思いたい。残念ながら残り三人も、癖が更に強そうな見た目の人がいる。
「相楽と言ったな、詳細を説明するのは全部終わってからにさせてほしいんだが、とにかくこの書類すべてに署名が必要なんだ。相良には、碧仁の名前を代わりに書いてほしい」
「で、俺が麗ちゃんの名前を代わりに書くと」
「その方がいいとお前が言ったんだろう」
「……それ筆跡でばれません?」
「それについてはとうの昔に諦めている」
眼鏡先輩きっぱり言い切りやがった。
「というか、碧仁の署名に関しては筆跡がどうとかそんなこと気にするやついないから大丈夫だ」「そうそう」と、よくわからないことも言われたが、どういう意味なのかはさっぱりわからない。
「それより麗ちゃんだよねぇ」と、碧仁先輩が苦虫を潰したような顔をしていた。この人こんな顔できるのか。どんなときでものほほんとしてそうなのに。
「俺の名前は漢字でもひらがなでもカタカナでも好きなように書いておいてくれたらいいよ。とにかく全部の書類にに名前が入っていればそれでいいからね。それから、困ったことがあったら、みっちゃんにお願いしてね。残り二人もそろそろ限界だし、俺にはぜっっっったいに話しかけないでね、本当に駄目だからね……」
ここまできて本当に初めて真面目、というか剣呑な顔をされる。……こんなときでも美人は美人なんだな、等と検討違いなことを俺は考えていたが、出会って数刻でも大真面目に話をされていることはわかる。何がダメなのかはやっぱりわからないのだが。
「あー、やりたくない……」
「気持ちはわかるが、この様子だとあと五時間は起きないぞ」
「わかってるよ、みっちゃん。そもそも自分で言い出したことだし」
「さっちゃんのことよろしくね~」
と言って、碧仁先輩も自分が署名をするための場所を用意し始める。