転校します。
どうしてこんな山奥に学校を建てようと思ったのか。
入るのも出ていくのも手間だろうに、その学校は深い山の中に存在していた。俺だって用事がないならこんなところまで来たりしない。周辺が観光地な訳でもなく、あるのは一面の山。緑豊かな、と言えば聞こえは良いが、つまりそれは周辺から文明的なものが削がれているのと同義だ。
そんな隔離された男子校、その上全寮制である。俗世と物理的距離を置くのが本当に精神衛生にいいのかどうかを実験でもしているのか、といった環境だ。
私立皇学園。
この特殊な立地と制度のおかげで、巷ではBL王道学園等とも呼ばれているらしい。
……らしい、というのは伝聞だからである。
それも、主にオタクな姉の。
両親が海外に赴任することになり、国内に残ることを選んだ結果、母は自炊能力が皆無な俺を慮って全寮制の学校を推してくれた。話を聞いた姉は、独断と偏見で勝手に学校を決めてくれやがった。それも自分の趣味で。
そんなわけで、今俺はあまりにも豪奢な私立高校の目の前にいるわけなのだけれど、とりあえず校門から建物の入り口が百メートル走が直線でできる程度に遠いことについて、だれか説明をしてくれないか。