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親愛なるジキル  作者: 如月ノノノ
7/29

悪魔の存在

告知通り少しシリアスです

重い扉が開く音で目が覚めた。

ゆっくりと開くドアは不気味な不協和音を立てている。

ドアの向こうには'秋さん'がいた。

いや、正確には私にはまだわからない。

そこにいる人が誰かわからない。

片方は私に微笑みかけてくれるだろうが、もう片方は私が見る最後の顔になる可能性が高い。

私は私が今置かれている不安定な状態を再確認した。

少し浮かれすぎていたかもしれない。

身体の体温が下がって行く。

'彼'は一歩足を踏み出し、ゆっくりと近づいてきた。

秋さんなら声をかけてほしい。

今すぐ大丈夫と言ってほしい。

コツコツとゆっくりと悪魔が足音と共に近づいてきているのか。

お願い、声をかけて。




「ごめん、待たせたね」

私が待ち焦がれた言葉だった。

強張っていた身体はその言葉だけで解けていった。

涙が出そうだったが、そう何回もこの人の前で泣くわけにもいかない。

怖がってはいたがこっちにだって意地はある。

ベッドに座って俯いて私に手を差し伸べてくれた。

「遅いです」

震えが止まっていない手で秋さんの手を取った。



私と秋さんはそれから数日間何も起きずに過ごした。

式に入れ替わっているのも数時間あったらしいが、誘拐した私など忘れているように出かけたりしていて私は入れ替わっている事自体知らないまま戻ったらすぐに迎えに来てくれる秋さんを待っていた。

必ず迎えに来てくれると思っていた。

事実すぐに私を連れ出しに来てくれる。

こうして一週間が過ぎようとしていた。

私はこの歪な関係をどうにかしようとはしていたが考えれば考えるほど私に出来ることは無かった。

何か転機が起きるまで神様に祈りながら生活して行く以外無いらしい。

そして、私を悩ましていたのはそれだけではない。

私にも説明できない想いが少しずつ侵食していく実感があった。

言葉にする事は出来ないが初めてあった時からほんの少しでもあった事は否定できない。

だが、話す時間の長さと緊張から救ってくれる秋さんを悪く思う事は出来なかった。


そして、一週間が経とうとしていた時ここに来てから2回目の命の危機に遭遇した。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


太陽がほとんど顔を出す前の冬の朝に目が覚めた。

暖房が効いてない。

秋さんには珍しくつけ忘れたらしい。

まだ起きてないのかもしれない。

起こしに行くのも面白いかもしれない。

そんなことを考えていたら、部屋のドアが開いた。

「おはよう」

いつも通りの挨拶をした。

「...おはよう」

少し間があった気がした。

しかし、いつもの感じでニコニコしている。

だが、何かが引っかかっていた。

根拠なんてないが、見過ごせない何かが。

「今日は朝早いですね」

「そうかな?たまにはね」

心臓の鼓動が速い。

身体も違和感を感知しているらしい。

部屋の出口から動かない秋さんは表情などはいつもの調子だ。

でも、私には何故かわかる。

だが、確信が持てない。

なら...

「突然ですけど秋さんは気になってる女の人とかいるんですか?」

かなり唐突な質問だが秋さんにならこれぐらいいきなりでも効き目がある。

「いないよ、そんな人は」

照れている。

いや、照れていない。

'コレ'は秋さんじゃない。

私の違和感と確信がそう言っている。

癖まで再現は出来ないらしい。

いつもだったら真っ先に頭を掻いているだろう。

疑いが確信になった時に身体が震え始めた。

ここからは私の一挙手一投足が私の命のに関わっている。

慎重に、でも悟られないようにしなければ。

「先にリビングに行っててもらえますか?」

「わかった」

完璧に近い模倣をしている'式'を先に部屋から出させた。

私は足音を立てないように後ろを向き部屋から出ようとしている式に最終兵器を使った。

「!!!」

スタンガンを当てられた式は痙攣しながら崩れ落ちた。

こうしていなければ私はすぐにでも殺されていただろう。

スタンガンを持つ手が震えている。

歯の根が噛み合わない。

立ち往生してる暇はない。

タイムリミットはもうすぐに来る。

部屋の入り口で倒れている式を跨いで走り出した。

家から出る事は出来ない。

やはりあの部屋しかない。

何度も足がもつれそうになりながら走った。

いつの間にか泣いていたが今回は許してほしい。

あのまま平和に暮らせるなんて少しでも思った私が馬鹿だった。

いつかはこんなことになるのは想像できてたはずなのに平和ボケしていた。

私は地下の監禁部屋に着いた。

ここを選んだ理由は私の部屋から離れているという事だけだった。

ドアを急いで閉め、ベッドに転がり込んだ。

ガタガタと震えている。

もう1、2分は経った頃だろう。

いつ奴が来てもおかしくない。

この部屋から始まりこの部屋で終わるのか。

皮肉だ。

でもこの部屋にいる私を連れ出してくれる人はいつも同じ人だった。

淡い希望を抱いてドアが開くのを恐れていた。

ギィという音をたててドアが開いた。

ゆっくりとゆっくりと開いて行く。

見るのが怖かったがそこにいる人を見ないわけにはいかない。


そこにはドアにもたれかかって息も絶え絶えで立っている'彼'がいた。

スタンガンはそれなりに効果があるらしいがそれもここまでらしい。

不意を打たなければもう効かないだろう。

この部屋にいる時は私はいつも'彼'を待っていて'彼'が来るのを恐れている。

今回は...



「僕は.....君に何かしてしまったのか....?」

私にはわかる、'彼'は秋さんだ。

意識を飛ばすのは効果があったらしい。

安心のあまり勢いで抱きつきそうになったが、秋さんの今の体調じゃやめたほうが良さそうだ。

「ごめん.....」

暗い部屋でお互いの顔もはっきりは見えないが秋さんは泣いているような気がした。

どこまでもかわいそうだけど優しい人だな。

「何もしてませんよ、考えすぎです」

「でも....」

「だいたい私が間違えるわけないじゃないですか、別人なんですから」

本心から出た言葉だ。

あれだけ違う人間なのだから同じ顔をしていてもすぐわかる。

「.....」

「私はあなたの顔を好きになったわけじゃないんですから」

「....??」

一泡吹かせようと思って勢いで口走ったが今となっては自分へのダメージがかなり大きい。

顔が熱く心臓がバクバクいっている。

暗い部屋じゃなければある意味死んでいた。

「えっ...???さっきなんて言ったの?」

スタンガンの威力で意識が朦朧としているらしい。

もう2度と言ってやるもんか。

書いててこっぱずかしい台詞が多いですが気合で書いてます。

なんかハルちゃん落ちるの早くないですか?

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