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親愛なるジキル  作者: 如月ノノノ
3/29

2人の誘拐犯

投稿頻度は下げずに頑張りたいです

は???

「傷は浅いけど痛そう...今手当てするね」

私は唖然として目を丸くしていた。

痛そうって...これあなたが切ったんですが?

ほんの数分前まで殺気だらけだった人が自分で傷つけた相手を手当てする。

こんな茶番をしてこの人は何のメリットがあるんだろうか。

この茶番の後にまた私を絶望させるんだろう。

「ちょっとしみるけど少しだけ我慢してね」

「は、はい...」

私が1人で考え込んでいる間にも男の人は救急箱からテキパキと必要な物を取り出し傷口の消毒をしようとしている。


なんか改めて近くで見てみると、この人かっこいいな...

って違う違う!!

この人は殺人鬼で誘拐犯、完全に犯罪者だ。

騙されるな、どう考えたって異常者。

「これで大丈夫かな...女の子の顔を狙うなんてひどいな...」

私が脳内会議を繰り広げている間に手当てがすっかり終わっていたようだ。

確かに傷が残ったら嫌だなぁ...

っておいおい!!

これあなたがやったんですけど!!


「他に痛いとことかない?」

心底心配そうな顔で聞いてきた。

「大丈夫で...す」

「そっか...よかった...」

胸を撫で下ろしたようにため息をつきながら薄く微笑んできた。


.....残念なイケメンだ。

殺人癖さえなければ相当モテるであろう。


また思考がズレてしまっていた。

今はこの茶番の意味を聞かなければ...

「...これはどうゆう事ですか...?」

「手当ての事?」

無言で頷いた。

「...驚くと思うんだけど」

神妙な顔つきになって話し始めた。

今思えば数分前に比べて格段に表情が豊かだ。

いったいなんでこんな手の込んだ...

「僕は二重人格なんだ」

「えっ」

「いきなりこんな事言われても信じられないと思うけど...」

当たり前だ。

誰が自分を誘拐した男が二重人格だとすんなり信じられる?

「じゃ、じゃあ私を誘拐したのは...」

「うーん、僕じゃないって言うと語弊があるけど僕の意思じゃない」

「そんな事信じられるわけ...」

「確かにすぐ信じられないよねー...」

手で頭を掻きながら男の人は何か悩んでいる。

「信じてもらえないのは仕方ないかな...でもこれだけは信じて欲しい」

男の人は唖然としている私の目を真っ直ぐに見た。

「君には死んでほしくない。君を助けたい。」


ますます意味がわからない。

100歩譲って二重人格だとしてこの人はなぜ私を逃がしてくれないんだろう。

「じゃあ...逃がしてください」

「それは出来ない」

「ど、どうして...」

「今は僕に意識がある。僕らはお互いが意識を共有しているわけじゃないんだ。」

まだ全然意味がわからない。

「うーん、噛み砕くと僕に意識があるときはあいつはほとんど意識がない状態なんだ」

「ならなおさら...」

「でもあいつは危機感に敏感で僕が危害を加えられた時とか僕が警察に捕まるような事をしようと思うと無理やり現れる。」

殺人鬼はかなり執念深いらしい。

「僕は今までに逃がそうとした事は何回もある。

だけど、逃げようとした子は...」

唇をぐっと噛み、拳が震えている。

己の無力さを呪っているみたいだ。

「僕を殺したり気絶させようとした子もいた。だけどそれも無理らしい...」

ぱっと見は屈強という感じじゃないがさっきのナイフの事を考えると相当腕が立つのかもしれない。

「じゃ、じゃあ私はどうすれば...」

このままあの人が殺したくなる時まで飼われるのだろうか。

「君は僕が絶対に外に出す。だけど今は待って欲しい」

この人はかなり真剣に考えているらしい。

しかし、本当に信じていいものなのか?

でも信じなければただ殺されるのを待ち恐怖し続けるだけだ。

絶望しかなかったさっきよりはマシだ。

「...あなたの事」

「ん?」

「あなたの事と二重人格の事、詳しく教えてください...」

男の人は緊張が少し溶けた私を見て嬉しかったらしい。

にっこりと笑った。

本当に表情豊かな人だな、見習いたいぐらいだ。

不意に私がこの人と話せる理由が浮かんだ。

私が人とコミュニケーションが取れないのは人の裏表を恐れていたからだ。

でも、この人は表と裏が完全に解離している。

表も裏もその人格だけで完結している。

同じ体を使う別人なんだ。

物語の中核にきて楽しくなってきました

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