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あの時に戻れたら









あの時に戻れたら


あの人と上手くいってたのに






なーんて夢でした。

ないない、なかったよ。

うん、ないない。




戻ったら戻っただけまた新しい選択肢が生まれるだけのことでした。

めでたしめでたしなんて死ぬ直前にしかわかんないし、なんなら死ぬ直前でもわかんないのかも。








どうがんばっても無理だった。

好きなのはサイなのに、私はどうやってもサイと結ばれない。

時を遡ることのできる私だけど無理でした。

出来ることと出来ないことがあるってこういうことなのね、きっと。




5歳、私たちの世界は私たちだけで出来ていて、他の友達なんていないそんな日常だった。



10歳、最初の転機。

うちの両親が離婚、私は爵位の低いお母様の所に引き取られた。

一度目はここでサイとさよなら。遠く離れた辺境から知ったのは学院で新しい友達やガールフレンドに囲まれたサイのこと。私のことなど気にもならないみたい。



15歳、二度目の転機。

10歳に一度戻って離婚を回避、サイと親しい関係のまま社交界に出られるようになった。

だけどダメ。

サイはモテモテで私は格好のイジメの対象に。こんなにあからさまになるとは思ってもみなかったわ。



18歳、三度目の転機。

社交界デビューの日に戻ってサイとはある程度の距離を取った。まるで私も一からサイを好きになった子のように。

でもやっぱりダメ。

女慣れしてないサイは言い寄ってきた子が気になるみたいで私に相談をしてきた。その時のショックったらなかったわ。



18歳の時は諦めてそのまま時を進んでみた。

でもやっぱりダメ。

耐えられなくて20歳で戻っちゃった。




結局諦めた私はまたまた10歳に。

せめて離婚回避だけはしようと思った結果、見事に離婚は回避。

そこから私はサイのことも回避。

年頃になってきた風を装って自然に離れた。

そこで仲良くなったのはリンとルーシーとジャック。リンとルーシーは双子の女の子。

おさげとおかっぱだからわかるけど顔はそっくり。ジャックはたまたま隣の席になってから仲良くなった。


サイがいない私の世界はそれはそれで快適なものだった。

それでもやっぱり、たまに目の端にうつればすぐにサイだと気づいてしまう。

未練たらしいったらない。

こんなことなら5歳に戻ってしまえばよかった。

でも今更やり直すのも嫌だ。リンやルーシーやジャックに出会える保証もない。




そんなこんなで15歳。

やっとまた社交界に出られるようになった。

うきうきとはしゃぐのも無理はない。だって私はお酒が好きだから。

ジャックに誘われているからパートナーにも事欠かない。

ふふふ、と浮かれたように歩いていた放課後、予期せぬことが起こった。




「ねぇ、シャーロット、今度のダンスパーティ良かったら僕と行ってくれないかな…?」




放課後の廊下で出会い頭、なのか待ち伏せだったのか…。

久々、いや数年ぶりに話すサイはまるで昨日も一昨日もずっと仲のいいままだったかのように話しかけてきた。


「…え?いや…うそでしょ…」

「嘘じゃないよ、君と行きたいなと思って楽しみにしてたんだから。」


ぽかん、とする私の頭に浮かんだのは警告だった。

(待て、待つのよ、ここでまたあの15歳の時のようになるに決まっているわ!わな、そうこれはきっと罠だわ…!)

そもそもジャックが先約なのだ、破るわけにはいかない。


「ごめんなさい、私ほかの人と約束してるの。」


惜しい気もした。

でも、今回のパターンは経験済みなのだ。おいそれと同じ轍を踏むわけにもいかない。

返事を聞いて俯いたサイの表情は垂れてきた前髪のせいで見ることは出来ない。

不穏な空気に気まずさがいっぱいだった。


「…それ、誰?」


ぽつりと零して顔をあげる。

(あれ、怒ってる?なんで?久々の会話だよね?)

明らかに怒っている。

かと思ったのもつかの間、彼は私の手を握り頬を染めた。


(…え?)

「行かないで…」


ぽつりと呟かれた発言に私は度肝を抜かれた。

(あれ…え…?)

切なそうな彼の視線がかち合う。

(え、もしかして嫉妬?嫉妬してくれてるの…?サイが…?)

思わず頬が緩む。

不安そうな彼を宥めたくて私は彼の手をきゅっと握り返した。











そう、それが間違いでした。

はいはい、やりましたよ、ええ、結局あの後浮かれてしまった私はジャックの誘いを断りサイとパーティ行きましたよ。

いつか見たあの光景と同じことになりましたけどね!!

少し違ったとするならヤバイと思った時点で離れようとした私のことをサイが離さなくて火に油となり以前より過酷なイジメを受けたことですかね。

あとジャックからの視線ね、うん、地味に辛いというか辛い時に友達から見放されるともう生きる気力が…。

サイはサイで結局またなんかほかの子が気になるみたいだし…。



というわけでね。

戻らせて、いただきました!

もうね、ダメだな!って痛感したよ。

え、今何回目?もう何回目だよホント。

4回目?不吉にしか思えないわ。

トータル何歳だろう。いやでも戻れるからって戻っちゃうのは弱さだよね。でもよりよい人生を生きたいのよ、ごめんね!

ろくな魔力ないのにホントこれだけは得意だから始末が悪い。



それでまぁ、今回はサイに誘われる日に戻りました。

手を握ってきたサイにはっきりと「サイとは行けない、先約があるから」と告げてそそくさと帰りましたよ。

後ろからめっちゃ視線感じたけどね!サイのことが好きだけどね!行っちゃったらダメになるからね…。




泣く泣く行ったパーティはそりゃもう楽しかったですよ。ジャックは踊りの名手だし、好きな曲はバンバンかかるし、会場は以前と同じ魔法でめっちゃ幻想的で、それでこれは今回初めて見たけど終盤は室内に花火が上がった。もちろん幻影だけどね。

暗くなった会場で見る花火はそれはもう綺麗で、踊ることを忘れてみんなは空に釘付け。

隣に並んでいたジャックがそっと繋いできた手がやけに青春クサく思えて切なかった。


「来年も、一緒に花火見たいね。」


そう言った彼に私は小さく笑って頷くしか出来なかった。



(なんで私はサイとこうしていられないんだろう)

神様は意地悪だなぁ、なんて。花火が弾けてはみんなの顔が明るくなった。私たちから少し離れた所にサイの姿を見つけて、私は心がきゅっと詰まるのを感じた。






そこから一年間、サイは話しかけてくることはなかった。もちろん私からも話しかけることはない。

相変わらず、双子とジャックと過ごす日々は楽しくて、私はサイのことを考えるのを止めることにも慣れてきていた。



サイと上手くいきたくて戻ってきた人生だった。でもサイとは決して相容れない人生なのだと思っていた。

事態が変わったのはそんな矢先のことだった。











「婚約…?」


普段話すことのない父から書斎に呼び出され何かと思えば縁談を持ってきた、ということらしい。

父は厳格な人間だった。

いや厳格過ぎて家庭をかえりみない典型的な仕事人間だった。

そんな父が持ってきたというのだ、それはもはや決定事項と言っていい。



(年老いたお爺さんとかだと嫌だな…)



ぼんやりとしすぎて思考が飛んでしまった。

父から言われたのだ、私に拒否権はない。

むしろ決定したから私に告げたのだろう。計画人間でもある父のことだ、話自体はおそらくずっと前からあったはず。


ランプに灯された火がゆらりと揺れる。

まぁ…貴族のはしくれなのだもの、いつかはと思っていた。むしろ、遅いくらいかもしれない。

実際リンとルーシーにも婚約者がいる。

この前のパーティで紹介されたが同じ歳の頃の青年たちだった。


(せめてリンとルーシーのお相手くらいの方だといいなぁ…)



視界がゆらぐ。



(父が縁談を考えていたのなら私の戻った人生は全ていらなかったのね…拒否権がないのだもの…なんだ、良かった。結局どうしたってここに行き着くんじゃない…)



人生とはままならないのだと痛感した日だった。









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