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マキリの魔女  作者: 雁飼稔
わたしたちは魔女だもの
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わたしたちは魔女だもの①

 果てのない砂漠を一台の車両が走っている。

 それはあまりにも巨大で、見上げるにも苦労するような高さと小さな小屋がまるまる収まるほどの幅があった。

 車両と言うには無理があるものが、その足元の無限軌道が軽快に動いている以上これは車両なのだろう。

 見るものによっては小さな山か塔が動いているかのように錯覚させるそれが、盛大な砂煙を上げて走っている。

 行く道には一面の砂漠以外に見るものはなく、遥か彼方に見えるオアシスは照りつける太陽の見せる幻だろうか。


 しばらく軽快に走っていた車両が段々と速度を落とし、ついには停車した。

 巻き上げられた砂煙が辺りを黒く覆う。


「ほら姉さま。わたくしの言ったとおりでしょう?」


 砂煙の中から少女の声が聞こえる。

 声の主は年の頃十二,三歳ほどだろう少女だった。

 美しくも愛嬌のあるその顔には年相応の表情を無邪気さを含んでいる。体を包む白のワンピースドレスが少女の活発さと清廉さを表しているようだ。

 透き通るほどに白い肌は照りつける太陽を跳ね返し、その輪郭をぼやけさせている。

 腰まで伸ばされた輝く銀髪がそれを助長していた。

 辺りには車両の巻き上げた砂埃が漂っているがそれをものともしていない。


「そうね。よく見つけたわ」


 後に続いた『姉さま』は先に出てきた妹と瓜二つの外見をしていた。

 しかし黒を基調としたゴシックな衣装が妹との違いを印象付ける。その表情にも無邪気さは無く大人の落ち着きを帯びていた。


『どうしますか、アリアンナ』


 機械的な音声と共に現れたのはなんともいえない奇妙な物体だった。

 小さな黒いドラム缶の上にで目を模したのだろうカメラがせわしなく動いている。

 取ってつけたようなアームとやはり無限軌道の足がついていた。

 そんな、所謂ロボットが、少女たちの後ろに控えている。


「勿論、いつものように」

「えぇ、いつものように」


 足元に転がる『それ』を見て二人の少女がわらう。

 その美しい顔には似つかわしくない酷薄な笑顔だった。

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