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私の羽化する日  作者: 月影 咲良
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朝生姜紅茶生活、始めました。

軽快なラッパの音色に、急速に意識が浮上する。

目を覚ませば辺りは遮光カーテンのせいで薄暗く、スマホの灯りが霞んだ視界の先に見えた。

8時にセットされたアラームは某国民的アニメの主人公の少年が作中で朝を告げるメロディだ。

寝意地の汚い私でも、これだけ爽やかなら気持ちよく目覚められるのではないかという淡い期待の元セットしたのだが、どうにも目覚ましにセットした曲には一律ストレスを感じるようになるらしい。

嫌いになる前にメロディを変えよう。そう心に決めてイライラとしながらアラームを止める。

スマホの画面には昨日貼っておいた付箋の文字。


「朝は生姜紅茶!」


そうだった、今日からやるんだった。

あー...、えぇー。やらなきゃダメー?

......

いや、初日から止めるとかダメでしょ!

よし、起きるぞー、起きるぞー!

えいやぁっ!


ガバッと体を起こす。ついでにカビ防止のために、敷布団を椅子に掛ける。そこまでやってしまえばもう起きるしかない。私は朝のルーティンを無意識にこなしていく。まずトイレにこもり、出すものを出す。

よく便秘なんて話を聞くけど、私は1日に何度も出るので、その気持ちはさっぱりわからないなぁ。


次に体重を量る。


125,4キロ。


うん、異常無し!


....って、いやいやいや、増えてる増えてる!

くっそー、いつかこの数値を私誌上最大として笑い話にしてやる。

そう思い続けて5年たつとかは思い出さない。

朝からテンション下げたくないしねー。


取り敢えず出しっぱなしのカップによく冷えたウーロン茶を並々と注ぎ、ぐっと飲み干す。

ぷはーっ。

目が覚めるわー。


ふとテーブルを見ると、私の席に山盛りのご飯とウインナー6本、目玉焼き2個ののったお皿が鎮座していた。

ちなみにご飯山の盛りは、山盛りと言ったら本当に山盛りだ。

たぶん茶碗の上にひっくり返した茶碗がもう一個被さってるくらいの量はある。

多ッ!

いつもながら感覚ぶっ壊れてるわー。

ちなみにこれを多いと文句を言うと、ものすごい勢いで怒られる。実家恐るべし。

でも今日は言うけどね。


「母さん。」

「食べたら食器洗っといてよー。お母さんもう出るからねー。」

「母さん、私今日から朝ごはんいらないって言ったよね?」

「はぁ?何で。食べないとお昼まで持たないでしょ!」


うっわ、話が昨日に逆戻りしてるし。


「いや、ちょっと試してみたいことがあるからさ。」


昨日と同じ説得をすると、母は大きく1つため息をついた。


「じゃあもう、冷蔵庫に入れときなさいよ!」

「はーい。」


ごめんよ母さん。朝の忙しい中でちゃんとご飯作ってくれるのには、すっごく感謝してる。

でもここで食べたら私2度と生姜紅茶生活をチャレンジしないと思うんだよね。

明日やるの明日は絶対来ないっていう、おデブの法則そのままにね。




さあ、気をとりなおして紅茶を淹れようか。


使う茶葉は、今年の新茶....とかではなく、50パック298円のお徳用ティーバッグ。紅茶好きとしては色々なお茶を使いたいところだけど、生姜を入れた時点で全てが生姜味になることが解ったので諦めた。

沸かしたてのお湯を温めたポットに注いで、静かにティーバッグを滑り込ませる。

手作りのポットカバーを被せて、温度を保ちつつ抽出を待つ。

このポットカバー、中学の頃に適当に作ったわりには使い勝手良くて、未だに使っている。私ってば天才かもしれない。


十分抽出した紅茶をカップに注いで、冷凍生姜を必要分だけポキッと折って入れる。

この冷凍生姜は前回生姜生活を試していたとき、会社の最古株のパートのおばちゃんに、休憩時間に世間話ついでに教えてもらった方法だ。

すりおろした生姜をジッパー付のビニル袋に入れ、できる限り平たく伸ばして冷凍庫で凍らせるだけ。

いるときに必要分だけポキッと折って使えるし、生姜の傷みに怯えなくていい。しかも、使いたいときにすぐに使えるのが素晴らしい。


そして、仕上げにはちみつを美味しいしと感じるまでたらす。

これはケチケチしない。

なぜなら、美味しくなければ続けられないからだ。

そして、意外とそんなに入れないので、カロリーとかは気にしない事にする。

これは本当に意外だったのだが、実は生姜紅茶生活をしていくと蜂蜜より生姜を入れる量の方がだんだんとエスカレートしていく。

いやー、あの刺激が忘れられなくて。

ハァハァ。



仕事に行くまでには、まだいくらか時間がある。

私は出来立ての紅茶をゆっくりとすすった。


はぁ、美味しい。

これ一杯で昼まで食べられないと思うと貴重だ。とてもがぶ飲みなんてできない。


私が優雅に生姜紅茶を飲んでいると、バタバタと出勤した母と入れ違いに瑠璃が起きてきた。


「あれ、母さんもう行ったの?」

「うん。」

「ふーん....」


瑠璃はバリバリと頭をかきながらテーブルにつくと、例のおかずと普通に盛られたご飯を食べ始めた。

なんで瑠璃だけ普通盛りなんだ。不公平だ。


しかし。


ウインナー美味しそうだな。

冷蔵庫を開ければわたしのがあるんだよね。


....はっ、いかんいかん。つい食べちゃいそうになった。

しかも、べつにお腹が空いているからとかではなく、ただ手の届くところに食べ物があるというだけで。

これは良くないな。よし、まだ早いけど会社に行こう。



私は食器をちゃちゃっと洗うと、職場の制服の下にきるTシャツとパンツに履き替えて10分もたたずに家を飛び出した。


化粧?そんなものしない。

だって仕事するだけだよ?

する意味がわからない。


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