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私の羽化する日  作者: 月影 咲良
19/61

入院

 近くの総合病院にたどり着くと、他に待ちの患者もおらず、直ぐに診て貰えることになった。


 担当の先生は40歳くらいの気の弱そうな人で、専門は皮膚科だそうだ。しきりに「今日は専門医がいなくて....」と断りつつも、レントゲンなどの検査をしてくれる。

 深夜にもかかわらず、話の感じでは当直でもなさそうな技士さんを呼び出すくだりでは、小市民魂が爆発しそうだった。

 体調なんて崩して、ごめんなさい!

 睡眠妨害して、ごめんなさい!



 検査後程なくしてあらわれた先生の見立てでは、おそらく盲腸ではないか?と言うことだった。

「う~ん、専門外なので....あした内科のの先生に診てもらいましょうね。」

 と、眉毛を八の字に下げながら言う。

 断言できないのは分かるけど、あんまり自信無さそうに言われると心配になるからやめて....。

 取り敢えず痛み止の点滴を打ってもらって即日入院することになった。




 初めての入院体験に、私は遠足に行く子供のようにテンションがあがった。

 3人部屋の端のベッドに、これまた初車イスで送り届けられ横になるが、なかなか寝付く事ができない。

 ただし、寝られない理由は気持ちが昂っていたからではなく、単純に暑くて寝付けなかっただけなのだが。

 横になっているだけなのに、じっとりと汗ばむ熱気。

 これ、私がデブだから暑いとかじゃないよね?

 確実に暑いよね?

 ちょっと、クーラー!

 病院って常に空調管理してるんじゃないの!?

 途中顔を出した看護師さんが汗だくの私を見て、「夜は空調が切れるんです。皆さん自分で扇風機を持ってこられてますよ。」と教えてくれた。

 まさかのセルフにびっくりした。

 そんな....っ!

 そんなんで良いのか!?患者さんよけい体調崩すんじゃない?!

 クーラーくらいつけろよ!

 つけて!お願いします!!つーけーてー!!

 私は心の中で叫んだ。



 私は尋常じゃなく太りはじめてからというもの、すっかり暑さが苦手になってしまった。汗が爽やかじゃないうえに、ワキガなのも相まってとにかく臭い。

 しかし、他人はこの臭さを「太っているせい」と言うのだ。

「くっせぇ!やっぱりデブだから臭いな!やせろよ。一緒に仕事したくないわ。」と。

 だが!私は声を大にして言おう!

 臭いのは太っているからじゃない!

 ワキガだからしかたがないんです!!

 痩せたって臭いんです!!

 ....あれ、涙で前が見えない。




 次の日、朝早くに内科の先生が来た。

「あのね、これは盲腸じゃないから!盲腸は位置が違うから!あなたの場合、子宮の方だから!」

 いきなり半笑いで怒られた。

 ええっ?私一言も自分から「盲腸かも?」なんて言ってないのに、私のせいにされてる!

 むきーっ!昨日の当直医、そこになおれーっ!



 理不尽な文句に、脳内で「殿中でござる!」とかやりながらも口には出せず、その後 私は婦人科に転科して3日入院することになった。

 痛みは次の日の朝にはほとんど引いてしまっていたが、検査を諸々と様子を見るためらしい。



 全く期待していなかった病院食は、驚くほどご飯がたっぷり出た。

 え、こんなに食べて良いの?

 お菓子は食べないから良いのかな??

 退院した後がこわい!

 全く動いてないし、体重が凄いことになるのでは....。

 でもお残しなんて出来ない。ああ、白米最高!


 しかし、これだけ食べたらせめて何かしらカロリーを消費したいところだ。そうかと言って、入院しているてまえ....と言うのもあるが、だいぶ治まったとはいえ痛みの残滓がある。腹筋運動をここでするわけにはいかないし、ダンスなんてもっての外だ。

 しかたない、きちんと治ってから再開しよう。

 私は気持ちを切り替えて、3日間の入院ライフを大好きな小説の読破に寝転んだまま費やしたのだった。




 退院してみると、なんと体重が減っていた!

 さすが病院、健康的な食事量だったのね。

 疑ってすみませんでした。

 しかし退院してみると無性にジャンクフードが恋しくなって、帰った後にコンビニに行ってたっぷり買って食べてしまった。

 ダンスと腹筋はまだ腹に違和感があって、また痛くなったら....と思うと恐くて、すぐには再開しようと思えなかった。




 1週間後、病院に検査の結果を聴きに行った。

 どうにも子宮の一部が腫れていたので痛んでいたようだが、腫れた原因は不明らしい。

 ちなみに子宮筋腫もあることがわかった。

 ふむふむ。


 あと、痩せなさいと言われた。

 痩せなさい、で痩せられたら今頃太ってません。とは、思ったが大人なので口にはしなかった。

 健康診断で毎回言われるんだよねー。

 私がのほほんと曖昧な返事をしていたら、血液検査の結果を見せられた。

「脂肪肝だね。」


 ......え!?





 その後、私は脂肪肝が何か分からないながらも良くない事態だと気付いてあわてた。

 よほど悲壮な顔をしていたのだろう、先生が「まだそんなに深刻になる数値じゃないから。」と言って慰めてくれた。


 そっかー、まだ大丈夫なんだー。

 って、ダメダメ!先生、甘やかさないでください!

 私はそう言われると完全に安心しきっちゃうんです!危険!油断危険!!



 私は1か月後の予約を取って病院をあとにした。





 ああ、ついに太っていることで病気になってしまった。

 今まで、こんなに太っていて さぞや色々な数値がおかしいだろうと思いきや、検査をすると健康的な数値のでるデブである事にちょっと自信があったのに。

 ....もう、何だかんだと言い訳してる場合じゃない。

 先生は、食事に気を付けて運動したら治ると言った。

 きっと、今ならまだ間に合う。

 私は脂肪肝をネットで調べた。

 すぐにどうこう という事ではないようだ。

 だが、このまま何も変えなければ確実にろくでもない未来が待っている気がした。


 よし!食事に気を付けるぞ!

 私は決意し、取り敢えず目下の昼食から改善することにした。

 家に帰る途中のコンビニに寄って何か買って帰ることにする。



 ピロリロリーン♪

 いらっしゃいませー。



 あっ!新作の明太子味のポテチだ!

 明太子味は瑠璃が好きなんだよねー。

 瑠璃の影響ですっかり私も明太子味でたらチェックするようになったんだよねー。

 ゲットゲット♪

 あっ、チョコバナナのクレープじゃーん!

 この組み合わせははずせないよね!

 ゲットゲット~!

 あ、と、はぁ~。

 お昼は何を....おおぉ!?

 天丼だーーーーー!

 うおお旨そう!たまらん!!

 ゲットゲットー!

 さあ、レジに持っていって....

 あっ、でも肉ッ気も欲しいよね。

 すみませーん、チキン竜田も一つお願いしまーす☆




 って、何やってんの私!

 バカバカーーーーー!!!

 なぜいつもこうなる!?


 でも買っちゃったものは仕方がないので、取り敢えずいただきます。


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