表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の羽化する日  作者: 月影 咲良
15/61

順調

 私はうかれていた。

 てきとうダンスが定着している気がする。

 朝お湯を沸かすときも、鼻歌を歌いながら腰を回す。もはや意識しなくても回せる。スゴいな、私!

 体重は相変わらず減ってはいない。

 それが少し....いや、正直だいぶ不満だったりもするが、いつか腰が括れて筋肉がついたら減ると信じている。

 というか、信じるしかない。

 信じろ!




 てきとうダンスを始めてから かれこれ1月半たった頃、私はムラムラと欲が出てきた。

 もっと振り付けの幅を広げたいなぁ。


 私が今、特に興味があるのがベリーダンスだ。

 あれだけ腰を振れば、さすがの私の腹肉も倒せるのではなかろうか、と思う。

 私はネットで調べたり本屋で探したりして、ベリーダンスの雰囲気を掴もうと画策していた。

 しかし検索能力の低いのもあって、思ったような収穫は得られなかった。



 そんなある日のことだ。半年前に退職したパートの人からお茶のお誘いを受けた。

 その人は本間 路子さんといって、けっこう長く勤めたパートさんだった。本間さんは、仲良しのパートの吉田さんが体調を崩して辞めるのと同時に自分も体が辛いと辞めていったのだが、私が異動してきた当初に冥王に怪光線で焼ききられそうになっていたところをフォローしてくれた気の良い人だった。

 私はしばらくぶりに会えるのが嬉しくて、一も二もなくOKした。

 お昼の中抜けに会おうと言うことになったので、近くのケーキやさんで待ち合わせる。


 ああ、久しぶりだなぁ!元気にしてるかな?

 吉田さんは体調よくなったかな?

 本間さんが辞めてから起こった面白事件についても話したいなぁ。


 私はその日、休憩時間になるとすぐに用事があるからと言って会社を飛び出した。

 途中、いつものように冥王が私の休憩時間を「正社員だから」というだけの理由で食い物にしようとしてきたが、急いでる!時間がヤバイ!アピールをして回避した。戻ったとき口から放射火炎を出してくるかもしれないが、正当な休憩時間だ、かまうものか。



 そのケーキ屋さんは大きな通りから少し細い路地に入ったところにあった。狭いが、イングリッシュガーデンを意識した緑豊かな庭が憩いを与える。

 店内に入ると、庭に向けて開かれたガラス張りのテラスに本間さんと吉田さんがいて、手を振ってくれた。。

「本間さん、吉田さん!お久しぶりです。

 元気にされてました?」

 私が小走りに席に行くと、二人ともにこにこと笑って再開をよろこんでくれる。

 皆揃ったので、店員さんを呼んでオーダーする。

 3人共ケーキセットを頼み、飲み物は私だけ紅茶を頼み、2人はコーヒーを頼んだ。


 そこからはお互いの近況を一通り話す。

 どうも吉田さんは本格的に体調を崩していたようで、しばらく病院がよいをしていたそうだ。その間、本間さんが足しげく通い、吉田さんを励ましていたらしい。最近は良くなってきたそうで、こうして出掛けられるようになったのだそうだ。

「そっかー、大変だったんですねぇ。でも良くなってきたって聞いて安心しましたよ。」

 私が笑いかけると、吉田さんも嬉しそうに笑い返してくれた。

「路子さんはすごいのよ。毎日パワフルにやってくるもんだから、落ち込む暇も無かったわ。」

「あら、元気になってきたんだから、これからはもっと色々楽しむのよ!ちゃんと付いてこなきゃだめよー。」

 本間さんがオチャメに言いうと、吉田さんは「いやー、程ほどでお願いしないと。」と言いつつ、まんざらでもなさそうだ。元気そうなことで何より。


「そう言えば、本間さんは昔から蕎麦打ちしたり畑をしたりでものすごく色々やっとられますよね。」

 私が思い出しながら言うと、吉田さんが「本当、本当!」と相槌をうってくれる。

「今この人ね、娘さんがベリーダンスの教室やってるからって、自分も始めたのよ。去年のお祭りでも踊ったのよー。」

「!」

 なに....、今ベリーダンスって言った....?!

 私はあまりにも都合の良い話に思わず本間さんをみた。

 本間さんは、年輩の自分がベリーダンスをやっている事に私が驚いたと思ったようで、照れながらその時の動画を見せてくれた。

 動画には、半年前まではお腹の肉に困ってダイエットしていると言っていた本間さんとは思えないほどの括れの女性が切れのよいダンスを披露していた。

 ステキ....!私もやりたい!!

 胸が高鳴った。

 私はもっと詳しく知るべく本間さんに質問をぶつけてみた。

 すると、なんと本間さんはちょっと意外そうな顔をしたが、「興味があるのなら、次のレッスンに体験で行ってみる?」と誘ってくれたのだ!

 私は全力で約束を取り付た。

 やった!これでベリーダンスモドキがグレードアップするよ!私の腰、括れちゃうかも!?


 この頃の私は、恐いくらいに順調だ。

 職場に戻ったとき、冥王が

「正社員なのに店の事をほっぽり投げて!私も仕事投げてやろうか!?」

 といつも投げているくせに言ってきたのにも、

「今日は用事があるからって朝から言ってたじゃないですか。休憩時間中なので、もう一人の社員に対応してもらってくさいよ。私にだって外せない予定は有るんですから。」

 と淀みなく言い返せたくらい順調だった。


 このまま上手くいくんじゃないか?

 ちょっと本気でそう思っても良い気がしてきていた。



やっとダイエットできはじめたかな?

いつまでたっても痩せてくれないので、気がつけば10話越えていました。

でもそう簡単にはいかないのがダイエット。

もうちょっと迷走します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ