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私の羽化する日  作者: 月影 咲良
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瑠璃から見た姉

私の名前は佐川 瑠璃。

職業は無い。

晴れた日は庭の畑を耕し、雨の日はネットからあらゆる情報を集めて世の中を精査している。

常に最善、最良の行動をおこせるように。


私には2つ年上の姉がいる。

この姉、私と同じくコミュニケーション障害をこじらせているわりには外面が意外といい。

ただし頭が悪くて何でもすぐに忘れる上に気分屋のため、何かを成し遂げる事ができない。

だが本人のプライドは山より高いので、私がいくら助言を与えても聞く耳を持たない。

困ったものだ。



先日、姉の部屋を覗いたら山のようにダイエットの本があった。

中には糖質制限などもあって、呆れてしまった。

何度も私が助言を与えてやっているというのに、またこんなくだらない本に手を出して。

そう言えば最近朝ご飯を食べていないようだ。

体調を崩せば、家族である私にも類が及ぶのだから、きちんと道をただしてやらねばなるまい。

私が、朝お茶を飲んでいる姉に私のダイエット法である、3食きちんと減らして食べて痩せるというのをこんこんと説明してやると、短絡的な姉は何を思ったのかご飯をガツガツと食べ始めた。

3食適量に食べると言っているのに、なぜ3杯も食べるのか。頭悪すぎるだろう。



姉は本当にダイエットと言うものに目がない。

この間も家族でダイエット特集のテレビ番組を観ていたら、なかなか面白いダイエット法であったので、その有用せいについて語ってやったら「私もやってみるかな」と言い始めた。

私は今までの姉の行動から考えて、彼女にこのダイエットを成し遂げるほどの能力は無いと判断した。

愚かな姉に、間違いを指摘してやらねば。

「あのねぇ。この方法はものすごく我慢がひつようなの。この人はちゃんと行動に移せる人だったからよかったんだよ。姉さんは口ばっかりだから無理だね。私みたいに、決めたことを守りきる精神力がないとね。」

私が現実を教えてやると、姉はそのテレビのコーナーが終わるまで一言も喋らなくなり、その後無言で自室に戻っていった。

せっかく私が善意で教えてあげてるのに、姉は愚かにもすぐに不機嫌になる。

心根の汚い人間だが、家族なので我慢して暮らしていかなければならない。

本当に、困ったものだ。



そんなある日、深夜の2時頃に台所の方でギシギシと音がしたので目が覚めた。

こんな夜中に何だろう。

私は不振に思いつつトイレがてらに台所を覗くと、姉が何やら奇っ怪な動きをしていた。

なにあれ?雨乞いの儀式か??

姉は不自然にくるくるクネクネ体をよじらせたり、地面にいきなり突っ伏したり、かと思えば全身をブルブルと震えさせたりしている。

不気味だ....。


これはアレだろうか。姉の部屋にあったダンスをしてダイエットするという本のやつだろうか。


こんな怪しい踊りだったかな....?


しかし。あれほど運動は、一生涯続けられないのだったらリバウンドするので根本的な解決にならないと教えてやったのに、またそんなことを始めて....。

本当に懲りないんだから。ちゃんと私に自分の非を認めて頭を下げてお願いすれば、家族のよしみでサポートくらいしてあげるのに。

取り敢えず間違ってる事を教えてやるか。


私は台所に入ろうとして....やめた。

プライドの高い姉の事だ。雨ご....踊りを見られたとあっては羞恥心から己の非を認めるとは思えない。私だったら恥ずかしくて死ぬ。


私は、みなぎる脂肪を波打たせ、恍惚の表情で踊る姉を一人残し、そっと部屋に戻った。

床が抜けませんように、と祈りながら。

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