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私の羽化する日  作者: 月影 咲良
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真似っこ

家に帰った私は、部屋に上がるとおもむろに片付けと掃除を始めた。

頭の中には如月の声が残っていた。


「秋乃はねぇ~、帰ったら鞄の中身を全部出して、ひっくり返してコロコロかけるんですよー。」


中身を出して、コロコロコロコロ....


「てゆぅかぁー、秋乃は綺麗好きだからぁー、家に帰ったらすぐに掃除機かけるんですよー」


真夜中だから、掃除機はまずいな....。本を積んで寄せて....ウェットティッシュで床を拭いておくか。

両手に持って雑巾がけの要領で拭いていくと、もっさりと埃や髪の毛などが採れた。

うっ、汚ったない....


「秋乃ねー、ベッドメイキングいっつもちゃんとやってるんですよー」


うっ、シーツがザラってした!コロコロコロコロ....


私は掃除をしながら、帰る前に休憩室で如月たちの会話に「うんうん、だよねー!」などとあいずちを打ちつつ、内心全くもって汚ならしく自堕落な生活を送っていた自分にヒヤヒヤしていたのを思いだす。

まさか彼女たちも私がこんな魔窟にすんでいるとは思うまい。

たぶん知られたら、汚物を見るような目で見られるだろう。恐い、恐すぎる。


常々思うのだが、世界は女子高生を中心に回っているんじゃないだろうか。

女子高生が可愛いと言えば、醜いぬいぐるみも可愛くなり、女子高生が「だっさーい」と言えばイケメン(長谷川)の乗り回す高級車もダサイ気ことになる。新車だったのにね。

そんな女子高生に「佐川さん、ないわー」とか言われたら、立ち直れない....




ふう。とりあえずこんなもんかな?


一通り気の済むまで掃除と片付けをして辺りを見回すと、何だか部屋が少し明るくなって見えた。


「てゆぅかぁー、秋乃綺麗好きだからぁー」


小さく声に出して言ってみる。

うん。違和感がない。

ああ、綺麗な部屋って久しぶり!気持ちいい!


ふと、買ってきて床に放置していたコンビニスイーツと駄菓子を見る。

もう夜中の1時だ。


....


少し考えたあと、私はスイーツを冷蔵庫にしまい、その日はさっさと寝ることにした。

理由は自分でもよく分からない。

強いて言うなら、いつも私を支配している「べつに食べたい訳じゃないけど、いつも食べてるから、本当は食べたいはずだ。いや、むしろ食べなければならない!」という呪詛のような声が、その日はとても小さく感じたのだった。




次の日の朝、目覚めると部屋が綺麗だった。

まず、床が見えているのがすごい。

いや、私の部屋は汚部屋と言う程ではないので、もともと床はちらほら見えていた。

だが今、6割くらいが見えている。すばらしい。


よし、今日は掃除をするぞ!


半年ぶりに決意すると、私は重い腰を上げた。

まず本を売るべく本塚に手をかける。


本塚....それは比較的新しい本が積み重なったエリアの事だ。

私は昔から本が大好きで、大人になったら読みたい本はぜーんぶ集めて、壁いちめんを本棚で埋め尽くしたいという可愛らしい夢があった。そして今、本棚が22個あるのだが、そこで問題が発生した。本棚の重みに、2階にある私の部屋の床が耐えられないかもしれないのだ。

私は本まみれ生活を渋々諦め、本棚を増やすのを止めた。

しかし、本は読みたい。お気に入りの本を売るのも嫌だ。そして気づいたら....床にたくさんの本塚ができていた....。


本塚があるところは掃除もできないので埃はたまる一方だし、本塚の奥にある本棚の本は取れない。

タンスのなかにも本が進出しており、服は外にある『とりあえず籠』の周辺に山積みになっている。


私は本塚からあんまり面白くなかった本を拾って大きなトートバッグに詰め込んでいく。

これも、これも、これも......

ふと手に取ったバイブルをめくる。

これはあまり参考にならなかったな。

ポイ。

あっ、またバイブルだ。うーん、これもいまいちだったな。

ポイ。

あっ、これもかー。

......


って、この山全部か!


目の前の本の山を確認すると、バイブルがいつのまにか30冊以上になっていた。

いつのまに。

というか、こんなに読んで、それなりに感銘を受けたはずなのに何故にまだ痩せられない?

はぁ....


ため息をつきながらバイブル塚の本を数冊残して拾い上げ、誇りをはたいてトートにつめていく。

トートはあっという間に本でパンパンになった。


私はさらに大きな紙袋も用意してドンドンつめていく。

合間でうっかり中身を読んだりしながらも、結局その日は大きな袋に4杯分もの本を売りに出した。



本を売って家に帰ると、さらに快適な部屋が待っていた。


床が広い!


私はごろーんと寝ころがる。

布団以外に寝ころがるスペースがあるなんて!


私は床に転がりながら思う存分堪能した。

素敵女子!

私いま、ちょっと素敵女子みたい!!


ちょっとは如月に近付いたかな?

何か嬉しくなってきた。もっと如月の真似をしたら、もっと私に欠けている素敵女子成分を取り入れられるかもしれない。

如月、あとは何してるって言ってたかな?

たしか....


「それから秋乃ねー、お風呂上がりは毎日マッサージしてるよー」


あー、マッサージか。女子っぽいな。

でもマッサージって嫌いなんだよねー。

だって全く面白くないんだもん。

マッサージをしたら小顔効果が....って言うけど、マッサージしたくらいでどうこうなるほどの肉量じゃないからなぁ。正直、手間のわりに全ッ然!効果がわかんない。から、やりたくない。

それよりも運動とかの方が良いんじゃない?

効果ありそうで!

よしよし、運動にしよう。

素敵女子といえば....ヨガ?

あー....、でもこれもなぁー。

ホントにこれで痩せるのー?って思う。

だってほとんど動いてないじゃない?

何かなー。あんまり楽しそうじゃないし....

やっぱり、部屋で運動と言えば筋トレ....?

いやー、やりたくないわー。ものスッゴいやりたくないわー。

続けたことあるけど、効果もあったけど、ストレスも半端なかった!!

もっとこう、楽しくて続けられる何かってないかなぁ。


そんな都合の良い事を考えながら残したバイブルをパラパラと捲って眺めていたが、私はあるバイブルではたと手を止めた。


あった!


それはダンスでダイエットをするというものだった。

いちおうDVDもついており私も数回やったが、同じことの繰り返しにすぐに飽きてしまったのだ。

でも、ダンス....踊れたら楽しいだろうな。

今でもそういう気持ちはある。

そうだ。だからもう一度これを試して....

でもなぁ、すぐにまた飽きそうだなぁ。

だってコレ、4曲しか入ってないんだもん。

もっとシリーズ出してくれれば良いのに。

できれば私の知ってる曲でこう、テンションの上がるような....。


あ。


私は唐突に閃いた!


そうだ、自分の持ってる曲で踊れば良いじゃない!


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