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出逢い、そして
振り返ると、一人の女性が俺を追いかけてきた。
「すみません、この書類…御宅の部長さんに届けて頂きたくて…お願いします。」
ん?
この子見たことないな…
「あぁ。届けておきます。」
俺は書類を受け取った。
するとその子は、笑顔でお願いします、と言った。
ここの金融機関では珍しいタイプの子だった。
金融機関なのに茶髪だし、耳にはピアス。
化粧は濃くないが、ハーフなのか?と思うほどのはっきりとした顔立ちだった。
笑顔がすごく可愛い子だな、と思った。
やっぱり女は愛嬌だよな。うん。
そう思いながら、またそそくさと職場に戻った。
その日は久しぶりに仕事を早く終わらせて、家に帰った。
恵子と、二人の娘と、晩飯を食べた。
そして夜は久しぶりに恵子を抱いた。
俺はこの時はまだ、幸せを噛み締めていた。
平凡な幸せ。
ただ、平凡な幸せ。
ちょっとずつ変化が起きたのは、昨年の冬からだった。