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出逢い。
「工藤ちゃーん!悪いけどこの書類さ、いつものとこに届けて来てー!」
…おいおい。こっちだって忙しいのに。
俺はこの部署に来てから管理職に昇格した。
管理職っていうのは残業代は出ないし、部下の尻拭いしなきゃならないし、結構大変だった。
「今、いってきますわ。部長、今日は俺早く帰りますからね?」
部長は分かった分かった、と俺の背中を押した。
向かう先は、職場の系列の金融機関。
ここ最近足を運ぶ事が増えた。
なんだかお硬いイメージで、未だに慣れない場所だった。
前の部署では現場で仕事をする機会が多かったから、余計そう思うのか…。
「いらっしゃいませ。」
金融機関の窓口の女性は、特に苦手だった。
愛想がないと言うか…なんというか…
真面目で地味で、華やかさがないというか…
「あの、この書類届けに来たんだけど。」
窓口の女性は、はい、とだけ言い書類を受け取り会釈した。
…もうちょっとさー、ニコッとしてご苦労様ですとか言えないかな。…うん。まぁいいか。
早々に退散しようとした時だった。
「あっ!待って下さい!」