死後の世界
ここはどこだろう。
私は自殺したはず。
天国か地獄にしても何もない。
真っ白ながらんどうにただ1人。
とりあえず散策しよう。
__________あれ?
何か落ちている……
拾ってみると、自分の携帯だった。
どうしてこんなところに?
画面を付けると、ありえないことが映し出されていた。
8月18日×曜日PM1:59
え?時間逆戻りしてる。あ、そうか。ここは多分、人間界じゃないんだ。時刻がおかしくても何も変ではない。
1人で納得する。
次の瞬間、私はますます驚いた。
「お目覚めですか?」
心臓が飛び出そうだった。さっきまで誰もいなかったはずなのに、顔を上げて目に入ったのは人の姿だったからだ。
私が呆気に取られて口をパクパクさせていると、私と同じくらいの年に見える彼はクスッと笑い、口を開いた。
「ようこそおいでくださいました、ハミク様。ここは死後の世界……ではないのですが、まあ死後の世界ということにしておきましょう」
やっと喋れるようになり、私は死んだのか、あなたは誰だ、どうして私を知っているのかと訪ねる。
「フフ、そんなに焦らなくてもいいのですよ。時間はまだたっぷりありますから。_____そうですね、順番に言いますと、あなたはまだ死んではいません。私は、神様の使いの者です。神様があなたを生かすか、死なせるかを私に任せ、あなたの世話をするように頼まれたのです。神様は忙しいですからね」
「いきなり過ぎて訳が分かりません……」
あなたは自殺をしたのですが、お友達が通報なさって、今ハミク様は病院のベッドで昏睡状態です。頑張ればあなたを生かすこともできますし、放っておけば今夜死亡する……これから相談し、あなたに生きるか死ぬかをお選びいただくのです。もし生きるのならば先ほど携帯に表示されていた時刻、つまり詩織様にメールを送る前に戻れます。死ぬのであれば今夜8時までここで過ごしていただきます。生きるにしても死ぬにしても、決めるのは8時までです。生きるのであれば、お早めに決めてくださいね、間に合わないと否が応でも死んでしまいますので……
ということだった。
今わかったが、彼は話が長い。丁寧過ぎても困る。
「とりあえず、堅苦しいから敬語無しにしてくれないかな。年、同じくらいだよね?あ、えっと……」
「敬語をやめることはできませんが、少し緩めましょうか。僕は将です。年は人間でいうとおよそ17歳になります」
敬語に特に変化は無かったが"ワタクシ"から"僕"になっていたのと、スーツの上着を脱いだことで雰囲気が柔らかくなって幾分か話しやすくなった。
「…………人間でいうと?」