変化と確信
はぁ、はぁ、はぁ……
何度拭っても、汗は滴れてくる。
ドンッ
人とぶつかってしまった。私は早口で謝り、止まらずに走り続ける。
ハミクの家に、急がないと。
ハミクからメールが届いてから、2分が経過していた。
自殺と決まった訳ではなくても、やっぱりいろいろ考えてしまう。
ハミクは、半年前に彼氏に振られた。辛そうにしていたが、大丈夫と言って、いつもと変わらない日々を過ごしていた。
今思えば、日を重ねるごとにハミクの笑顔が見れなくなっていたのかもしれない。そして、何かを隠しているようだった。
変わったことと言えば、鈴木湧と頻繁に話すようになっていたことくらいか。
湧は、頭脳明晰、容姿端麗、スポーツ万能で、おまけに優しいという、どこかの漫画で見るような完璧人間だった。
湧が女子にモテるのは当然で、男女問わずの人気者だった。
ハミクも人気者で、ハミクと湧がしばしば話すようになっても、誰も咎めることはしなかった。むしろ、恋愛ネタが大好きな女子は、付き合っているという噂で盛り上がっていた。ハミク本人は、聞かれても、ただただ受け流していた。
私は湧を好きにはなれなかった。明確な理由はなく、感覚でだ。
理由もなく人を嫌いになるのはいけないと分かっている。しかし、初めて見たときから、ずっとこの思いは消えなかった。
湧の笑顔には裏がある。
そう、確信している。
八月十八日
午後2時6分