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第一帖 月冴ゆる宵の鼓動  作者: 水城杏楠
終章  馴れぬる花の あとの夕暮
33/38

『思ひ立つ 鳥はふる巣も たのむらむ 馴れぬる花の あとの夕暮』

(桜が散って春が終わると知って飛び立とうとする鶯は古巣があるから良いだろう。花に馴れてしまった私は、散った跡の夕暮れをどう過ごしたらよいのだろうか)


『倭は 国のまほろば たたなづく 青垣 山籠(やまこも)れる 倭しうるはし』



 チラチラと、視界のどこかで紅いものが点滅していた。

 何か、わからない。

 いや……わかっている。

 ただそれを知ってしまいたくないだけで。

 燃えている。

 そうだ。燃えている。

 けれどならば、何故燃えている?

(考えたくない……)

 すべてが灰になる。そうして無にすることしかできないのに。

(俺が希望だなんて嘘だ。誰ひとり救えやしない)

 それなのに、死ね……ない。

 自分が癒されるたび、誰かが傷ついていくというのに。

(だからもう、ヤ……メ……テ……)

 辞めてしまえばいい。すべてを。

 遠い昔。

 幸せな刻は、静かに終わったのだ。

 それを告げる、音さえなく。

『―――人間なんだから。ちゃんと生きてるんだから』

 そんなことを言うのは……誰だ―――。

 暗闇にぼんやりと浮かぶ影。その形が変わる……声までも。

『無常なものはね……でも綺麗なんだよ』

『だからわたしを、月夜見尊(つくよみのみこと)の媛だなんて呼ばないで』

『名を、ください……わたしだけの名を』

 鵠媛(くくいひめ)

(俺だけが、呼ぶ……)

 この名、を。

 それなのに―――。

『……ごめんなさい。わたしはわたしの身勝手で、君を生かすの。でも今度は、わたしが、君を探しに行くから……きっと』

 嘘つきだな。

 お前は探しになんて、来てくれなかった。

 どんなに待っても、待ち続けても、常世で眠るだけの姫君だったのに……。


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