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眠りの勇者

 死亡、行方不明者は軽く見ても三桁。

 重傷者や軽傷者も数えるなら、四桁はいくようだ。

「……割と少ない、ですね」

 それらの数字を聞いたジンはそう評した。

 シルスベールは食糧輸出国だ。土地の半分以上を農業に使っているこの国には、当然ながらそれらを売り買いする商人たちが集まっている。商人に雇われている傭兵などを含めればもっとだ。

 魔獣が現れたことによって少しは商人の数も減っていただろうが、それでも数千人近くがいたはずだ。

 更にいえば、この街に住んでいたであろう人たちも合わせれば数万人はいたはずだ。

 一万近くの魔人たちの襲撃という偽の情報で兵士たちもいなくなった上に、ヴァージリアは突如として現れ怪物たちを作り出した。

 完全な不意打ちであり、兵士たちもろくに残っていないので避難誘導はジンの仲間たちしか行っていないはずである。街中に怪物たちは放たれたので、正直万単位で被害が出ているだろうとジンは思っていた。

 もちろん、被害が少ないことはいいことだ。それ自体は喜ばしいことなのだが、違和感はどうしても付きまとってくる。

「魔王ニーズルベガは止めに来たと言っていましたね。魔人側で誰かが怪物たちを倒していた? でもそんな人がいたなんて報告は受けてませんし……」

 少しジンは考え、首を振って考えるのを止める。いくら考えても仕方ないし、ニーズルベガはまた来ると言っていた。魔人関係のことはその時に聞けばいいだろう。

 そう思い、ジンは歩き出す。辺りからは酒を飲んで酔っ払っている人たちの騒ぎ声が聞こえてきていた。

 怪物たちを掃討し終え、人々は生を実感し喜んでいた。

 たった十数人、しかもそのうちの数人が大量の怪物たちを倒し、街を救ってくれた。

 他人が聞いても信じられそうにないが、実際に助けられた人たちはジンたちに感謝の言葉を次々とかけてきた。

 そのままどんちゃん騒ぎの宴会となっているのだが、ジンの仲間たちが好き勝手している隙にジンは宴会から抜け出してきていた。

 元々そういう場が好きでないのもあるが、少しばかり話したいことがあったのだ。

 周りに視線を向けて男を探す。探し人はあっさりと見つかった。

 ソロは瓦礫の山の上に座り、酒ビンの入った袋を左手に持ち、右手には巨大な刃を持っていた。刀身にはまるで何かを差し込むような穴が空いている。

 そう、ちょうどロングソードの刃が綺麗に収まりそうな穴が。

「……条件指定」

 ソロに近寄り、ジンは前振りもなくそう言った。ソロの反応を見ずにジンは続ける。

「剣の名は『アマテラス』。その力は光を操ること。わかりやすく絶大な力を持つその剣は、勇気を持ちし者にしか振るえない。……そういう風に、私が設定しました」

「…………」

「王都の上空で貴方がアマテラスを使い、そほ後に貴方に触れて気づきました。貴方はアマテラスを振るう資格を持ってなく、アマテラスの刀身にその巨大すぎる刀身を被せることで無理やり使っていた。違いますか」

「…………」

 反応を返さないソロの背後に立ち、ジンは軽く腕を振り剣を作り上げる。

 それをソロに向けながらジンは問う。

「答えてください。貴方も、私と同じ場所にいるんですか?」

 ジンの問いかけにソロは答えない。無視しているのかと思い軽く剣の面で叩くと、その体がゆらりと揺れる。

「……すー」

「……すー?」

 安らかな呼吸音、寝息を聞き取ったジンはソロの正面へと回りこむ。

 そこには幸せそうな寝顔のソロがいて、ジンはなんとも言えない表情になってしまう。

「……なーんで、私が真面目な話をしようとすると皆こんな感じなんでしょうか」

 昔に起きた出来事を思い出しながら、ジンは大きな溜め息をついた。

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