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守りの剣

「…………」

 怪物たちをソロが消し飛ばしていると、剣に変化があった。

 カタカタ、と剣が揺れる。まるでどこかに飛び立とうとするかのように、莫大な力が加わった。

 それを無理やり押さえつけ、ソロは剣を振るう。怪物たちを吹き飛ばしながら、彼は思う。

 まだ手放すわけにはいかない、と。



 小さな体が、あっさりと宙に浮いた。

 クルクルと空中で何度か回転し、地面へと落ちた。

「ヤ……ヤイバ、ヤイバ!」

 ピクリともヤイバの体は動かない。頭からは血が流れ出し、すぐに治療をしないと死ぬ可能性がある。

「ぐっ……う、ああ……」

 腕を伸ばし、体を動かし、無理やり怪物の口から逃げ出そうとする。だが怪物はそれを許さないかの如く噛む力を強める。

 激痛で意識が持って行かれそうになる。手先が冷たくなり、体に力が入らなくなる。

 それでも諦めず、諦めたくなく、ユウキは足掻く。

 そこへ。

『ちょっと無茶がすぎるんじゃないかしら?』

「え……?」

 女性の声が聞こえてきた。女性の声は呆れたような、逆に感心したような感情がこもった声でユウキに話しかけてくる。

『家族愛は結構だけど、そんながむしゃらにやったところで何も変わらないわよ?』

「……誰、ですか……?」

『神様。……に近い存在かしらね』

「……?」

 声の主は見当たらない。というより、そもそもどこから声をかけられているのか、本当に声が聞こえているのかも怪しかった。

「……神様なら」

『?』

「神様なら、ヤイバを、ヤイバを助けて……」

『あ、それは無理ね』

「っ!? な、なんで……」

『単純に、干渉し過ぎね。貴方の場合は過干渉に当たるから、貴方の家族を救うこともできないのよ』

 女性の言葉の意味は分からない。分からないが、ヤイバがこのままでは助からないことだけは理解できた。

 どうにか説得してヤイバだけでも助けてもらえないかと思った時、女性がこんなことを言った。

『まあでも、その子が助かる方法ならあるわよ』

「本当ですか!?」

『ええ。……貴女が戦いなさい』

「……え」

『貴女が戦うのよ、ユウキ・カレッタ。貴女が戦って、弟を助けなさい』

 パチン、と指を鳴らすような音が聞こえた瞬間、ユウキに噛みついていた怪物の口が大きく開く。ユウキの体が浮き上がり、その体が自由になる。

 血は流れているし、激痛で動けるわけない……とユウキは思っていたのだが、いつの間にかユウキの傷口は消え、痛みはなくなっていた。

 何が起きたのかユウキが理解する間も無く、怪物が唸りを上げる。そしてユウキの足元には、ユウキに持てと言わんばかりに剣が落ちていた。

「ヤイバ! 起きてヤイバ!」

 呼びかけてみるが、やはり反応はない。ヤイバを抱えて逃げる、というのを一瞬思い浮かべたが、怪物から逃げられる気がせずに首を振る。

 剣を拾い上げ、怪物と相対する。

「……大丈夫よヤイバ」

 湧き上がってくる感情を押し潰すために、ユウキは呟く。

「お姉ちゃんが、守るから」

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