表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/79

語られない伝説・No.23

 気がついたら、ベットで寝ていた。窓からは月明かりが差し込み、今が夜であることを教えてくれた。

「……え、……え?」

 前後の記憶が曖昧で、ナスタは困惑してしまう。

 わけが分からないが、とにかく寝る前のことを思い出してみようとする。だが、ナスタにはジャックに休めと言われた後の記憶がない。

 ベンチでしばらく座っていたことは分かる。だがその後の記憶がすっぽり抜け落ちている。

 だが、誰がやったかは想像できる。

「……ラーシャさんだろうなぁ。あの人は本当にもう」

 ジャックが寝ている間、ラーシャは結構好き勝手やっていたのだ。傍迷惑な行為ではあるのだが、なんだかんだで得するので文句を言いにくいのだ。

 今回のもどうせラーシャがやったのだろう、とナスタは推測する。勝手に眠らされたのはアレだが、疲れているナスタを休ませようという意図があるのだと考えれば怒る気もしない。

「多分狙ってやってるんだろうなぁあの人。頭良さそうだし」

 見習いたくはないと思いながらベットから出る。寝巻き姿に着替えさせられているが、あまり深くは考えないようにする。

 壁に掛けられた時計を見ると、今は深夜の二時のようだ。ジャックと会話をしたのが昼頃なことを考えると、半日ほど眠っていたらしい。

「眠くないし、どうしようかな」

 寝なければ昼夜逆転現象が起きてしまいそうだが、今の今まで寝ていたのにすぐに寝直すのは難しい。……何よりお腹が空いた。

 夜食を食べるのって健康に悪くないのかと思いつつも、ナスタは食べ物を探しに部屋を出る。

 食堂に行けば食べ物くらいあるだろうと思い向かうのだが、ここで一つ問題が発生する。

「……あ、私料理できない……」

 食堂にあるのは当たり前だが食材、野菜や肉などだけだ。小麦粉などもあるかもしれないが、ナスタには使い道がさっぱりわからない。

 一般家庭の女性ならある程度は知っているかもしれないが、彼女は王女である。料理を教えてもらうなんてことはなかったし、ラルバディアからここまで来る時も携帯食料を食べていたので料理をする機会もなかった。知ることなんてできるはずもなく。

「……帰ろう。なんで料理もできないくせに食堂行こうとしたんだろ」

 そう呟き、部屋へ戻ろうとした時にナスタは気づく。

「……匂いがする」

 何かを煮ているような、そんな匂いが食堂から漂ってくる。空腹のナスタは匂いにつられてフラフラと食堂へと歩き出す。

「あん? 誰かの気配がすると思ったらナスタか」

「ジャックさん?」

 食堂にはジャックがいて、何かを鍋で煮ていた。明かりは付いておらず、火のみが光源となっていた。

「何してんだこんな時間に」

「あー……その、目が覚めてしまって……」

「腹が減って?」

「う……」

 顔を赤くして顔を逸らすナスタ。ジャックは面倒そうな顔をしながら鍋を指先でトントンと叩く。

「余り物で作ったスープだけど、いるか?」

「……いただきます」

「ほいほい。……の前にっと」

 ジャックは火に手を向け、そのまま火の中へと手を突っ込んだ。ナスタが驚きの声を上げる間も無くジャックは手を引き抜きながら呟く。

「出ろ、炎の剣」

 そして出てきたのは、火の中に隠れてたにしては大きすぎる赤色の剣。それは炎を纏い、部屋の中を照らし出した。

 ナスタが驚いて口をパクパクとさせているのに気づくと、ジャックはナスタに対して言う。

「……釣られた魚みたいだな」

「魚じゃありません! ってそんなことより、なんですか今の? 魔法は使えないって言ってましたよね?」

「あー……分からん」

 皿を出し、そこにスープを注ぎながらジャックは答える。

「気づいたのは昼頃だな。ちょっと事故があって子供が瓦礫に埋もれかけてな。咄嗟に剣を振って吹き飛ばそうとしたけど剣をすっぽかして、やらかしたと思いつつも無我夢中で剣を振ったら、いつの間にか変な剣が手にあった」

 スープをナスタの前に置き、机の上に赤色の剣を置く。炎は、机を燃やすことはなかった。

「不思議に思いつつも適当に何度か試したらまた剣が出てきてな。どれくらい剣の種類があるのか試してたら、こんな時間だ」

「……なんなんですか、その剣?」

「わからんけど、色々な物から取り出せるみたいだな。火からも、水からも、空気や土、さらには太陽の光からも取り出せた。さらに面白いのは、そうやって取り出した剣は、取り出す元となった物を操れることだな。例えば、そこの火の勢いを強めたり、逆に消したりな」

 そう言いながらジャックは赤色の剣に触れる。すると鍋にかかっていた火が勝手に消えた。風が吹いて火が消えた、という感じではなく、突然火が消えたように見えた。

「ま、結構便利そうだし、好きに使ってみるさ」

「危ない力じゃなければいいんですけど……」

 ナスタは出されたスープを飲み、その顔が驚愕に満ちた。

「ジャックさん!」

 夜中にも関わらず大きな声で、ナスタはジャックに言う。

「料理できたんですか!?」

「おそっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ