表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/79

魔人ヴォルフ

「ぬおら!」

「ちぃ!」

 草原で二人の剣が真っ向からぶつかり合う。その時に発生した衝撃が大地を崩し、二人は足場を求めて大きく距離を取る。

「魔装、氷結アイストル!」

 ヴォルフの剣が冷気を纏い、そのまま地面に突き刺す。

 直後、大地を氷が覆い尽くす。氷の刃でも襲ってくるのかとアレンは警戒するが、予想に反して何も起きない。

(ということは、単純に足場を奪っただけか)

「追装、飛刃ラミナ

 ヒュン、とヴォルフが剣を振るうと軌道線上に斬撃が飛ぶ。剣で受け止めると斬撃が当たった場所に氷がまとわりついた。氷が異常なほどの重みを持っていて、剣を上手く振るうことが難しくなった。

 効果ありと思ったヴォルフが薄い笑いを浮かべる。

「――ふんっ!」

 直後、アレンが剣を真っ直ぐ氷の大地に振り下ろした。氷はあっという間に砕かれ、アレンの剣の氷もその時に一緒に砕け散る。

 ヴォルフは舌打ちをしながら再度剣に魔力を込める。

「魔装、雷撃ファルグル!」

 ヴォルフの剣が雷を纏う。そのままヴォルフに向かって突撃しようとするより前、先にアレンが動いた。

界滅デストリア

 剣先から三つの珠が現れた。緑は人界を、黒は魔界を、白は天界を表している。

 それら三つの珠が混ざり合った直後、全てを吹き飛ばしかねない大爆発が起きた。

 その威力は凄まじい、の一言に尽きた。爆発はアレンの正面の方向へと向けられ、アレンの視界は白く染まり、音は消えた。

 草原の一部が消え去り、剣の向けられた先にあった山までもが吹き飛ぶ。

 やがて視界と音が戻り、アレンは少しばかり周りを見回す。

 ヴォルフの姿は、ない。だが今ので倒せた、とも思えなかった。それほどまでに、魔人は強大な存在だった。

 静かに耳を澄ませる。たった一つの変化も見逃さないように、極限まで集中する。

「…………」

 チッ、と。何かが弾けるような小さな音が聞こえた。

「っ!」

「なに!?」

 音のした方、とは真逆の方向へと剣を振るう。不意打ちをしかけたヴォルフの剣をアレンは捉え、力任せに吹き飛ばした。

 ヴォルフは空中で体勢を整え、地面にひらりと着地する。今度はアレンが舌打ちをする番だった。ヴォルフの体には多少の傷こそあれど、致命傷となる傷はなかった。

「……やるじゃないか」

 ヴォルフはポツリとそんなことを呟く。アレンはふんっと鼻で笑う。

「当然だ。お前如きに二度も遅れを取ってたまるか」

「なるほどな。だが……」

 ヴォルフはニヤリと笑い、剣を地面に突き刺した。

「……人間であろうと魔人であろうと、俺が負けるわけにはいかない。民の為に、我ら魔人の未来の為に! ――魔装」

 ヴォルフの体が魔力を纏う。アレンは何が起きても対応できるように警戒していた。


龍脈フォース

 直後、視界がぶれた。


「!?」

 何かしらの魔法ではない。

 ただただ単純に、アレンの体がヴォルフによって吹き飛ばされた。それだけのこと。

(なん……だ? 急に動きが……)

「どうした人間」

 宙に浮いているアレンの目の前に現れたヴォルフが言う。

「この程度の速さでもう追いつけないのか?」

 言葉と共に、剣が振り下ろされた。

 剣はアレンの着ていた鎧を粉々に砕き、アレンの体を地面へと叩き落とした。巨大なクレーターが出来上がり、土煙が舞い上がる。

「がっ、ごぼ……!」

 心臓に衝撃が与えられ、脳を揺さぶられたアレンは立ち上がることができない。これは気合いでどうにかできる問題ではなく、どうしようもないことだった。

「……ここまでだ、人間」

 アレンの近くに降り立ち、ヴォルフは剣を振り上げながらそう言った。アレンはヴォルフの顔を見て、そして笑った。

「なんだ、随分と疲れてるじゃないか」

「……龍脈は大地の、星の力そのものだ。そんなものを取り込んで、体が保つわけない」

「……その程度でジンに勝とうとしていたのか。あいつは、もっと強いぞ」

「だろうな。俺が逆立ちしても勝てないだろう」

 だが、とヴォルフは続ける。

「足どめに徹するなら話は別だ」

 お喋りはそこまでだった。

 ヴォルフの剣が、アレンの体を斬るために振り下ろされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ